以下の記録は、東都航空998便墜落事故の際に回収されたブラックボックスの音声を、トランスクリプトとして書き起こしたものである。
この音声には基本的に管制官Aと機長、副機長の声のみが録音されており、可能な限り注釈をつけているが、説明のつかない音源については無編集のままである。
[再生開始]
19:03:33(機長) あー。航空管制、こちら東998便。トラブル発生、3号エンジンにトラブル発生。排気温度の指示が高いため、当該エンジンの停止、羽田への転進を要求します。
19:03:35(管制官A) 了解。要求通り承認する。
19:03:46(機長) 羽田へレーダー誘導をお願いしたい。
19:04:02(管制官A) 了解、羽田へレーダー誘導する。左、方位112へ旋回せよ。
19:04:05(機長) 東998便、了解。
(爆発音)
19:06:43(機長) 今の音は何だ?
19:09:00(副機長) 分かりません。4号エンジンに火災発生。
19:12:02(副機長) 1号エンジン、サージング。2号エンジン、火災発生。
(客室高度警報発報)
(火災発生警報発報)
19:12:04(機長) なんだ、それ。
19:12:12(機長) なんだよ、それ。
19:12:33(機長) 与圧システムに不具合だ。
19:12:54(機長) メーデー、メーデー、メーデー、こちら998便。エンジンを喪失した、エンジンを喪失した。10000ftまで降下を要求します。与圧システムが機能していない。
19:13:03(管制官A) 東998便、了解。10000ftへ降下せよ。最後の部分が聞き取れない。与圧システムの不具合か?
19:13:40(機長) 客室の与圧が上がっています。数値は。
(二度目の爆発音)
19:14:04(副機長) 機長。
19:14:09(機長) 数値が振り切れている。警報灯が全部赤だ。
19:14:18(機長) なんだ?
(無数の乗客のものと思われる悲鳴と、操縦室のドアを何度もたたく音)
19:14:54(副機長) 血だらけの女性が。顔に何かが貼りついている。食べられている。
19:15:00(機長) 何を言っているんだ、席に戻れ。今すぐに。操縦桿が動かない。油圧系統が死んでいる。燃料が漏れているんだ。
19:15:18(管制管A) 東998便、余裕があれば原因を教えてください。
19:15:24(機長) 東998便、ディセンド。操縦不能、トラブルシュートは無理だ。客室で混乱が起きている。怪我人がいる模様。手配を頼む。
19:15:26(機長) 重大なトラブルが、重なって。なんだ、あれは?
19:15:27(副機長) 分かりません。
19:15:31(機長) メーデーメーデーメーデー、何かが本機に絡みついている。
19:15:40(管制官A) 東998便、もう一度お願いします。落ち着いてください。
19:15:43(機長) ■■(副機長の名前)。
(コックピットのガラスが破砕したと思われる音、二人分の悲鳴)
19:15:48(機長) (荒い呼吸音と、うわ言のような呟き。解読不能)
19:15:55(機長) 黒くて、霧のような、目も口も鼻も真っ黒で。
19:15:58(管制官A) 東998便、状況を教えてください。
19:16:03(機長) 隙間から入ってくる。
(以降、音源不明の鳴き声、機長らのものではない足音、何かが焼ける音が断続的に入る)
19:16:10(機長) 溶かされて、食われて。
19:16:22(機長) 何度も、何度も。入ってくる。這いまわっている。
19:16:30(管制官A) 東998便、聞こえていますか?
19:16:43(機長) 神様。
(絶叫。以降、機長から応答なし、異音と警報音は継続。この時点で998便は主翼、尾翼を完全に喪失し、錐揉み回転で落下していた)
(失速警報発報)
(地上接近警報発報)
19:17:22 シンクレート
19:17:36 プルアップ、プルアップ、プルアップ、プルアップ、プルアップ
(何かが這いずり回るような音)
19:17:46 プルアップ、プルアップ
(衝撃音)
19:17:49 プルアップ、プルアップ
(爆発)
19:18:07 [編集済み]
(衝撃音、爆発)
[通信途絶]
この記録は重大インシデントとして運輸安全委員会にて保管、現在でも調査が継続されているが詳細は不明のままである。
亡くなられた乗客乗員958名のご冥福を祈るとともに、国土交通省は総力を挙げて原因究明に乗り出している。