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最初より嫌悪感が薄れた家で私はお風呂と食事を済ませてぼけーっとテレビを観た。
いつものチャンネルでニュースを見れば、地元のニュースは通山市近郊のニュースで、今さらながらここは北海道じゃないんだなぁと実感した。
普段はテレビをつけてスマホをいじってる時間だけど、スマホは没収されているので時間がゆっくり過ぎていく。
晩ご飯の片付けが終わったお父さんたちから今日はリビングで川の字になって寝ると言われたので、私はパパと美影と一緒にお布団がある二階へと上がった。
不気味に思えた二階には部屋が三つあって、祖父母の部屋の押し入れからお布団を三組引っ張り出した。
よっこらせとお布団を抱えた美影が先に下へ降りて行き、私も続く。
ふと部屋を振り返るとパパがベットの脇にあった小さなテーブルの写真立てを見て、ふっと和らいだ表情を浮かべていた。
三人が一階に戻ると待ち構えていたお父さんとお母さんがパパッとお布団を敷いて、私はこっそりと二階へと戻った。
パパは何を見て微笑んだのか気になったから。
部屋に入って電気をつけて、写真立てを手に取る。
「あー……」
ぎゅっと心臓を掴まれた。
もう死んでしまっている祖父母と私よりも小さな叔父。
そして髪を丸めた私と似ている気がする女の人が幸せそうに家の前で並んで笑ってた。
この人たちはもうこの世にはいないということに複雑な感情を持ったのと同時に、なんとなくパパが母親という人にどういう感情を持っているのかわかってしまった。
女の勘ってやつ。
おのちょを撃退できたのは私が母親に似ていたから。
きっと私よりも声が低めで、パパを須藤くんと呼ぶ……。
あの時のパパはそこに居ないはずの人の声に条件反射のように振り返ったからかなり似ているんだろう。
居ないとわかってるのに驚いて振り返ってしまうほど。
家族が困っていたから、とお父さんは言った。
父は私の成長を見守りたく、そして母親にお願いされたからと言った。
じゃあパパはどうだったんだろう。
母親が困っていたから。
たぶんそう。
これまでパパが彼女を作らなかった理由は母親にあるんじゃないの?
でもさ。母親は父親と結婚して兄と私を生んだ。
パパはどんな気持ちだったんだろ。
そして母親はパパの気持ちに気付いていたんだろうか。
知っていて私を託したのならとんでもなく悪女だと思う。性格が悪すぎる。パパの弱みに付け込んで。
引き受けたパパもパパだと思う。お人よしすぎる。
んでもって確実にお父さんと父はパパの気持ちを知ってる。
特に私に撃退の知恵を授けた父は成功を確信してたし。
お父さんたちはそれぞれ自分が納得できる理由があって私を育ててくれた。
その中でパパの理由ってやつが一番、私が知りたくない理由かもしれない。




