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「行ってこいよー。それにしても中坊の分際で彼氏とか生意気だな」
そう言われると思って今までこっそりバレないようにしてたのにぃ。
これまで私が好きになった男子はことごとくお父さんたちにバレて(美影がすぐに告げ口をする)、晩ご飯の時に品定め会が唐突に始まるのが恒例だった。
お父さんたちの評価は子どもにも容赦なく、ダメだしばっかり。
そんなダメだしを聞かされてると単純な私は洗脳されたように、そうかもと思っちゃうのも恒例。
でもさ、欠点がない人はいないし、それ以上に良いところが多ければそれでいいと思い始めたのは最近、宇津宮くんに出会ったからだった。
と、思い出して私は疑問に思う。
毎回品定め会があるのに今回はなかった。もしかして宇津宮くんはお父さんたちのお眼鏡にかなったというやつか。
恐る恐るお父さんを見れば、頑張って引き攣った笑顔を作っていた。
「中学生だからな。自主性を大切にした結果だ。それに洸姫の両親もまぁ……文句は言えないだろ」
これまでお父さんたちは私に虫がつかないように追い払っていた(すごい迷惑)だけで、中学生になったから自主性に任せた感じなんか。なんだそれ。
ていうことはお父さんを見る限り宇津宮くんは品定め会があればこてんぱんにされる運命だったのかも。
そう思うと大好きだった宇津宮くんが色褪せて見え始めた。
……ダメだダメだ。これは洗脳の反復経験だ。
「お父さん。あっちに行ったらスマホ返してくれるんだよね?」
「両親の許可が下りたらだけどな」
「わかった。行ってくる」
私は車のドアを開けて吹雪になりつつある空を見上げた。
スマホさえあれば遠距離でもきっと宇津宮くんと付き合っていける!
そう強く信じて彼の家に転校すると言いに行ったら、じゃあ別れようとあっさりと言われて、車に戻った私はお父さんたちの悪口三昧の品定め会に慰められたのだった。
空港へ向かう車中は私の失恋話からお父さんとお母さんの話に変わって、少しだけ知っていた二人の始まりの詳しい出来事に私は運命ってあるんだなーと思った。
それと同時にお父さんって昔っから素直じゃない人間だったんだとも思った。
だぁって本当は小学校の頃から絶対にお母さんのこと好きだったはずなのに自分から告白しないとかツンにもほどがある。
お母さんがベタ惚れだったから高校生で付き合い始めたっていうけど、お母さんを見ればお父さんもそれなりだったに違いない。
お父さんとお母さんは幼稚園から高校までずっと同じで、幼馴染とまではいかないけれど良く知っている仲だったそうだ。
小学生の時にお祭りのイベントで二人でお雛様のカップルになって、お母さんの地域ではカップルになった二人は結婚するジンクスがあった。
お母さんはそれをずっと信じていて、高校生で成就したと誇らしげだ。
お父さんは運転しながらたまにお母さんの盛った話に反論するけど、笑っていたから盛りは並み程度だったと思われる。
今までは私の出生を私に知られてはいけなかったみたいだったからあまりお父さんたちの昔話を詳しく話してもらったことがなくて、解禁されて話せることが多くなって車中は楽しかった。
私は確かに宇津宮くんが好きだったけど、お父さんたちのことを聞いていると未来へと繋がる好きってやつは種類が違うような気がして、結局は私と宇津宮くんは別れる運命だったとすんなり納得できた気がする。
じゃあ私の運命の相手はどこで出会えるのかな。
これから住むところにいるのかな。




