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私と玉彦の正武家奇譚『陸』~誕生編~  作者: 清水 律
私と玉彦の正武家奇譚『陸』~誕生編~
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18


 もしかしてオレの他力本願な希望は外れたんだろうか。

 まさか、だよな。

 ぶんぶんと振った頭に須藤の言葉が過る。


『何が起きてもおかしくないからな』


 今回の件を玉様の父さんが解決するために指揮を執るとのことだが、それのどこに問題があるというんだ。

 玉様の父さんなんだから当然玉様よりも頼りになるはずで、須藤が何を危惧していたのかオレには全く理解できない。

 アヤトは死人に口無しとか言っちゃってたけど、流石に死人が出るようなことを玉様の父さんがするはずがない。

 いい年をした地位も名誉もある玉様の父さんが死ぬような危険な場所へ行く許可を出すってことは、ないない。



 安芸津たちとの待ち合わせ場所に少しだけ早く到着したが、彼女たちは既に待っていた。

 二十三時。十分前。五分前以上行動をしたので、彼女たちより遅く到着しても文句は言われなかった。


 零やアヤトはある意味想像通りの姿だったので驚きもしなかったけれど、安芸津とエリカの容姿は想像とは全く違っていた。

 エリカはショートカットの普通の女子高生だし、安芸津は……セミロングの普通のOLさん。

 美少女でもなく美女でも不細工でもない。

 ごくごく普通のそこら辺を歩いているモブ。オレもだけど。


 エリカはともかく、安芸津はちょっと拗らせてる感が服装に現れている。

 黒い革のロングコートに茶色のファー付き。

 これから心霊スポットに行くというのに、ヒールの高いブーツ。これも黒。

 心霊スポットに行く時の鉄則は、何かあった時に走って逃げられる格好なんだが。

 それともアレか。私は強いから逃げる必要なんてないのよ的な。

 きっと小町ちゃんみたいな子がこんな格好をしていたらカッコいいんだろうが、安芸津は普通体型の普通顔なので全く似合っていなかった。


「こんばんは。えーっと、安芸津、とエリカ?」


 女性を前にすると内弁慶になってオレの陰に隠れた零に代わり、街灯の下まで歩み寄ると、安芸津はがくんと横へ直角に首を傾げ、オレを上から下までじっくり見ると、目を薄くした。


「君は私と同類みたいね。後ろの二人は……無能と……なんだろう。一応同類、なのかしら」


「同類って……?」


「稀有な力があるってことよ。良かったわ」


 溜息と共に首を元に戻した安芸津は隣のエリカを見て、大袈裟に再び溜息を吐く。

 そんなに溜息ばっかしてると幸せが逃げて行くんだぞ。


 オレたちが到着してホッとした表情を見せていたエリカだったが、安芸津の溜息のせいで委縮したように背中を丸めた。

 寒いわけじゃない、と思う。


 気まずい雰囲気が漂う中、オレはとりあえず名前を名乗った。

 それから後ろの二人は零とアヤトだと紹介をすれば、安芸津は興味なさげに一瞬目を向けただけだった。


 なんだかな。なんなんだろうな。

 ネットではあれほど盛り上がって話をしていたのに、いざ会っちまうと皆だんまり。

 実際に会うのは初めてだから緊張してるのもあるけど、一番の原因は不機嫌を醸し出す安芸津にあるように思う。


 エリカがオカルトの館で話していた自分が住む村にあるという『倒れずの木戸』はここから歩いて十数分のところにあると言うので、対面してもたいした盛り上がりを見せなかったこともあり、さっさとそこへ行こうということになった。

 行って、見て、感じて、何もなく帰られれば良いが、たぶんきっとそうはならないということを男三人は知っている。

 もし何もなかったなら、日中に確保されて玉様屋敷に連行される必要が無かったからだ。

 しかも今後は五村について他言無用とのお約束付き。


 何となくエリカを先頭に歩き出したが、零はアヤトと並ぶのが嫌らしくオレの右側に、そして昨日からエリカと一緒だった安芸津は彼女に飽きたのかオレの左側を歩く。

 そして問題の怪しいアヤトは最後尾にいた。




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