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アレンと森で最後に会ってから、もう2週間経つけど、アレンは森に来ていない。学園でクラーク殿下もアレンも見かけないから、まだ王宮に居るのかもしれない。

私は、毎日ジンを連れて森で一人で鍛錬を続けていた。


その日の放課後は、一人で図書室で資料を探していた。珍しく他に学生もいない。

私が資料を物色していると、ひとりの教師が図書室に入って来て、私に声を掛けてきた。

「君、ちょっと悪いんだが、ことづけを頼まれてくれないか?」

研究科の古語の教授のトーマス先生だった。いつも温和で学生達から親しまれているおじいちゃん先生だ。

あまり身なりを気にしないのか、いつもボサボサの頭で同じような服を着ている。でも不思議な愛嬌があって、学生に人気の先生。


「はい。いいですよ。どんなご用件ですか?」

「この資料を生徒会室まで届けて欲しいんだ。生徒会から頼まれていたのを忘れてしまっていてね。」


----生徒会室って、魔法科棟だよね。しまった!引き受けるんじゃなかった..。仕方ないか..。


「生徒会室に届ければいいんですね?」

「ああ、誰かいるだろうから、私からだと伝えれば分かる。」

「分かりました。」

「すまないね。頼んだよ。」


----もう!しばらくイレーネ様と顔を会わせたくないのになぁ。いらっしゃらなかったらいいけど..。


私は預かった資料を抱えて、魔法科棟の校舎を駆け足で進んだ。もう遅い時間だったせいか、他の学生とすれ違うことはなかった。


生徒会室のドアの前に立つと、中から話し声が聞こえてきた。イレーネ様だわ..。私はちょっと躊躇してしまう。


「..そうなの!すごくタルトが美味しいらしいの。今度、皆で『エポック』に行ってみましょうよ!..」

「へぇ、いいね!楽しそうだ。」

「せっかくだから、他にもどこか行こうよ。」


----生徒会の皆さんって、皆でお出かけしたりするんだ。仲がいいのね。


楽しそうな会話に気後れしながら、私は扉をノックした。

「どうぞ。」

と言われて、扉をそっと開けると知らない男子学生が出てきた。

「あれ?君は..」

私は出来るだけ扉の陰に隠れるようにしながら、預かった資料を差し出した。

「あの...これ、トーマス先生から預かってきました。」

「ああ、ありがとう。」

男子学生は、ニコッと優しい笑顔でお礼を言う。私が彼にペコリと頭を下げ、急いで部屋を出ようとしたところ、

「キラ?」

と声を掛けられた。

部屋の奥でイレーネ様と会話をしていた学生達の輪の中にアレンの姿があった。


----あら?アレン....学園に戻ってたんだ..。


アレンは何か言いたげな顔をしていたが、私はイレーネ様がこちらを見ていることに気がついて、視線をそらす。もう一度、ペコッと頭を下げ、クルリと踵を返して部屋を出ると、再び駆け足で廊下を通り抜けた。


----アレンは、イレーネ様達とお出かけするのかな..。


モヤモヤして心が嫌な感情で満たされる。

----嫌だ。もうアレンとイレーネ様のことは、考えたくないのに...。


魔法科棟の校舎を出た所で、突然腕を掴まれた。

「キラ、待って!」

アレンだ。


----追いかけて来て欲しくないのに..イレーネ様にまた何て思われるか..。

私はアレンの目を見ることができずに視線を泳がせる。


「ごめん!なかなか森に行けなくて..。」

申し訳なさそうにアレンが言う。

「気にしないで。忙しいんだよね。アレン、無理させちゃっててごめんなさい。私のことは、気にしなくていいから..。」

「無理なんか...」


私は、思いきってアレンの瞳を見あげた。いつもと同じ深い海の青。引き込まれるような錯覚を覚えるほど、私のことを真剣に見つめている。私は精一杯の笑顔で言った。

「あの...私..今度から剣術の練習は、ショーンに相手をしてもらうことにしたから。アレンは自分のお仕事に専念して!」


「はぁっ?!」

アレンの瞳が冷たく光る。


「じゃあね!」


私はそのままアレンに背を向け走り去った。

アレンも、もう追いかけては来なかった。


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