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僕は、2階の食堂の一室から、窓の外を眺めていた。クラーク殿下専用の食堂の小部屋の窓からは、研究科棟と食堂棟との間の中庭がよく見える。


キラが友人たちと4人で中庭のベンチに腰掛け、楽しそうにおしゃべりしている。ここのところ、ずっと彼女達と一緒に過ごしているようだ。

久しぶりに見るキラの弾けるような笑顔。


----良かった。友達ができたみたいだ。


そう思う一方、


----昔はキラのあの笑顔の隣にいたのは、僕だったのに..


ちょっと彼女達に嫉妬してしまう。

いや、正直かなり悔しい。

パーティーの日以降、僕は全然キラに直接会えないままだ。

彼女はどうやら、魔法科の学生がいる場所には近づかないようにしているようだ。


「キラ嬢、友達ができたみたいだな。」

クラークが、窓の外を見ながら声を掛けてきた。

「ああ...」

「なんだよ、機嫌が悪いな。」

「.....」

「お前、ずいぶんキラ嬢に避けられているみたいだものな。」

「.....」


「お前達が許嫁同士ってことも、彼女は黙ってて欲しいっていってるんだろう?..まあ、その方が賢いだろうな。ただでさえ彼女注目されているのに、お前が相手じゃあ、敵を増やす一方だ。」

「...分かってるよ...」

「まあ、何か誤解もあるみたいだけどな。」


僕はニヤニヤと笑っているクラークを睨み付ける。


そうなのだ。女子学生達が、なんとか言うロマンス小説になぞらえて、僕とイレーネ嬢の仲を噂していることは知っている。いちいち面倒くさいし、勝手にそう思わせておいた方が、すり寄ってくる女が少なくなるから、放置しておいた。

それが、早々にキラの耳に入るとは...想定外だったな。全く..。


イレーネ嬢は、控えめでよく働くし、媚を売ってくるような女性でもない。悪い子ではないとは思う。いつも好意的で、よい友人だとは思っている。だから、邪険に扱うこともできず...。

結局、噂がそのまま本当のことのように流されていて..。


イレーネ嬢は、学生達に聖女様とか呼ばれる人気者で、彼女のことを崇拝している学生も多い。そういう奴等が、キラを敵視する可能性も無視できないし。

キラの奴も何故かイレーネ嬢に気を使っていて...。

本当に腹が立つ!


「そういえば、キラ嬢、時々、剣術クラブを覗いているらしいぞ。誰か想う人が剣術クラブにいるんじゃないかって、男子達の間で噂になっているらしい。」


「はっ?!」


「実際、彼女、可愛いからな。好意からでも悪意からでも、彼女に近づきたい男は多いだろう。最近は随分クラスの中でも彼女、受け入れられてきてるみたいだし。」


----はあっ。そうか..、そうだよな。キラは敬遠されがちな存在ではあるけど、実際、かなり可愛い。キラの人柄を知れば 彼女に想いを寄せる男が近づいてくることは、十分にあり得る。うっかりしていた..。

これは近いうちにキラにまた会っておかないといけないな。

もっと、ちゃんと捕まえておかないと...。


全く、あいつ、どれだけ自分が注目されているのか、全く自覚してないよな..。


...そして、僕のことをまだ怖がっている。

学園でキラに再会した時の彼女の反応は、彼女に初めて会った時と同じだった。僕のことを恐れている。

僕の、何が、キラを恐れさせるのか?


キラに嫌われている訳ではないと思う。むしろ好意を持ってくれている。キラと一緒に過ごした5年間は、僕達二人にとって大切な時間であったことは、間違いないだろう。


では、何故?

彼女の不可解な行動の数々..。彼女の抱えている秘密...。

いつか僕に話してくれるのを待とうと思っていたけど...。それでは駄目だ。


もっと、彼女を追い詰め、暴いて、彼女の全部を僕の前に引っ張り出さなければ..。そうでないと、キラを捕まえておくことはできない。


「アレン、どうした? お前、急に..なんか、楽しそうだな?」


僕は、どうやら無意識に笑っていたらしい。

キラは、僕の臆病な黒ウサギは、本当に手強い。

どうやってキラを追い込んでいこうかって、考えたら楽しくなってきた。


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