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パーティーの翌週、私はいつものように放課後に図書室へ行き、机に本を広げて座って過ごしていた。


そろそろ剣術の鍛錬も再開したいんだけどな。どうしよう。とりあえず、ひとりでできる場所でも探してみよう。


なんて、考え事をしていたら、不意に声を掛けられた。


「あのぅ、キラさん。歴史とかお好きなんですか?」


赤毛の緩いカールの女の子が、私の机の側に立っていた。


----彼女は確か、同じクラスのマリアンヌさん。家は大きな商家で貿易業を営んでいて、平民ながら裕福な家庭の娘だ。


「突然ごめんなさい...。私は、同じクラスのマリアンヌと言います。キラさんがいつも歴史の本を読んでらっしゃるのが気になってて。あの、、私は歴史上の英雄とか偉人とかが大好きなんです。もしかして、キラさんも同じ歴史好きかと思って。」


「そうなの?私は昔の魔道具に興味があって、歴史書を調べるのが好きなの。」

「魔道具..。確かに歴史書や昔の童話などによく出てくるわね。面白そう!」

「童話?マリアンヌさんは、昔の童話もお読みになるの?」

「そうなの!昔の童話や言い伝えには、歴史的な史実が描かれている場合が多いんですよ。あと..宗教の教典なんかも。

だから、私はそういった物も読んでいるの。」

「まあ、そうなの?知らなかったわ。すごい!マリアンヌさんって物知りね。」

「うふふっ。私達、気が合いそうですね!キラさん。」

「そうね!」

「思いきって声をかけてみて良かったわ。キラさん、思ってたよりずっと親しみ易い方だわ。ねえ、お友達になってくれる?私のこと、マリアンヌって呼んで!」

「ええ、もちろん。じゃあ私のこともキラって呼んでね。声を掛けてくれてありがとう。すごく嬉しい..」


私達は、しばらく歴史の話に花を咲かせた。マリアンヌの話は、すごく発想が豊かで面白い。


「そうだわ。キラ。明日、お昼を一緒に食べましょう。別のクラスの友達を紹介したいの。彼女達も歴史が大好きで、歴女仲間なのよ!」

「嬉しいわ。でも、私が一緒でいいの?」

「もちろん!彼女達もきっと喜ぶわ。」


私はマリアンヌの屈託のない人柄と優しさに、心が暖まるような気がした。


「あ、そうだ。キラ、昨日もここに来てたわよね? 私、昨日、懐中時計を落としてしまったみたいなの。どこかで見てたりしないかな?」

「ん〜。見てないな~。」


そう言いながら、私は夢にでてきた場面を思い出す。

マリアンヌが荷物を抱えて、コロンっと何かを落とす場面。


----あそこは、どこだろう?本が沢山あるけど、薄暗い感じの所..。


「昨日、行った場所を全部探してみた?いつもと違う場所に行ったりしてない?」

「う〜ん..。いつもと違う場所...。」


「!! そうだわ。昨日は先生に頼まれて、一緒に資料室に本を運んだんだった!」

「じゃあ、一緒に行ってみましょう。」


そう言って、私はマリアンヌと一緒に資料室へと向かった。資料室は薄暗く、埃っぽい書籍がずらっと並べられていた。書籍の棚の間の通路をひとつずつ確認していくと、懐中時計は資料室の隅の床に落ちていた。


「あった!」

「良かった〜。本当に嬉しい!」

マリアンヌは泣きそうな顔で私に抱きついてきた。

「昨年亡くなったお祖父様にいただいた、大切な懐中時計なの。キラ、ありがとう~。あなたのお陰だわ!」

「そうだったのね。良かったね!」


私達は、明日また会うことを約束して別れた。

初めてできた、学園での友達。

私は、良い関係が築けたらいいなって思いながら、ほっこりした気分で歩いて寮に戻っていた。


研究科棟を出た時、ふと少し離れた所に広がる森に目が止まった。

アカデミーの敷地は広大で、敷地の東側に小さな森があった。少し離れているので、そこまで行く学生はいなさそうだが 、私はずっと気になっていた。


----ちょっと行ってみようかな。

そう思って、私はくるりと寮と反対方向に向かって歩き始めた。

20分ほど歩くと森の入り口にたどり着いた。


----意外ときちんと整備されているみたい。


森に続く小道は、きちんと草が刈られていて歩きやすくなっていた。小道の両脇には、大きな木々が生い茂り少し薄暗い。静寂の中で鳥の囀りや虫の鳴き声がよく響き、どこかから川の流れる音が聞こえていた。

私は、そのまま森の中の小道をずんずん進んでいった。どれくらい歩いただろうか?

小道を左に曲がった所で、突然視界が開けた。


「わあ!素敵..」


そこは、小さな広場になっていて小さな小川が流れていた。水面がキラキラと美しく輝いている。木々の間から差す光が、広場を照らし、神秘的な空間になっていた。

小川に近づき中を覗いてみると、信じられないほど青く澄んでいて、川底がすぐ近くに見えた。


----すごい!こんな場所があったなんて。マーブルの森を思い出すわ。

..そうだ!ここで剣術の鍛錬をしよう。誰も来ないし、ひとりで練習するのにちょうどいい。


私は、さっそく明日から始めようと心に決めて、来た道を戻った。


----今日は本当に良い1日だったな〜。

なんだかこれからの学園生活が楽しみになってきた。

でも、ダメダメ。気を引き締めて、あの夢を回避しなくちゃ。


そう思いながらも、心が沸き立つのを抑えられなかった。




翌日のお昼休み、マリアンヌは友人二人を連れて私をランチに誘いに来た。


ひとりは、子爵家の娘ミア。慎ましく、おっとりした性格で、マイペース。天然な発言が可愛らしい子。

もうひとりは、サーヤ。平民の出身であるが、とても勉強家で誰よりも好奇心が旺盛。裏表がないので、誰とでもすぐに打ち解けられ、クラスの人気者だ。


私達はランチを食べながら、自分達のことを紹介しあいながら、たくさんおしゃべりをし、楽しい時間を過ごした。

皆、凄く楽しくていい人達。


食事の途中、ふと窓の外に目をやると、食堂棟から魔法科棟へ続く通路をアレンとイレーネ様が歩いているのが見えた。

イレーネ様は、とても楽しそうに熱心に何かを話していて、アレンも穏やかな笑顔でイレーネ様の話を聞いている。本当に二人は、ロマンス小説に出てくる美男美女の恋人同士のよう。

先日、アレンと過ごしたパーティーを思い出し、少し複雑な気分になる。


「あら、アレスフォード様とイレーネ様。素敵よね!」

サーヤが私の視線に気づいて、声をかける。

「そういえば、キラはパーティーの時、アレスフォード様と一緒にいなかった?アレスフォード様とお知り合いなの?」


「...ええ、アレスフォード様とは幼馴染で...。親同士が仲が良かったから、小さい時に遊んでもらっていて...。兄のような存在というか...。」

「え~!羨ましいわ。アレスフォード様、素敵だものね~。」

「でも、最近はあんまり会ってなかったから...。ほら、あんまりご迷惑かけられないし..。変な誤解をされたくないし...。」

「ふ〜ん。そうなんだ〜。確かにアレスフォード様とイレーネ様、学園で一番人気のカップルだし、ファンの方々から睨まれるのも嫌よね。」

「やっぱり、、、そう思う?..私、邪魔者だよね...。」


マリアンヌが力強く言う。

「大丈夫よ、キラ!私達は、何があってもあなたの味方!キラのことを悪く言う人がいたら、容赦しないから!」

ミアも同意する。

「そうよ。キラは堂々としていればいいわ。それに、別にキラがアレスフォード様と仲良しでもいいんじゃない?」


「ありがとう。」


私は苦笑いしながらも、本当に嬉しいと思った。

私にとって、女の子同士でこうやって過ごす時間は本当に久しぶりで。学園に来てから初めて声をあげて笑ったような気がする。


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