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六 ふたり

「それでは、ペアを組んでくださーーい」


「「はぁ」」


 高らかな先生の声が、かなしい。


 魔力を感じる練習をするため、ペアを組んで手を取り合う。

 そういう流れなのだが。


(周りが私達を組ませようと必死でつらい)


 本人たちは全くもって誰とでもいいのだが、外堀を埋められた。

 まぁ、確かに委縮するか……。


「……そんなに、俺がイヤなのか」

「え?」


 珍しい。

 ふだん、よけいな話はしないのに。


「そういう訳ではーー」

「はっ、どうだかな。」

「どうして、そう思われるのです?」


 むしろ女遊びしておいて良く言えたな? という気持ちは飲み込んでおいた。


「お前は……、底が知れない」

「ーー!」


 それは、その通りだ。

 なにせ、普通であれば第一王子を相手に婚約など、喜びに溢れるか、次期王妃の重圧に呑まれるか。


 どんな感情であれ、言葉や態度から見え隠れするものだ。


 しかし、私はこの世界を知っていて。

 おまけに、前世の記憶も手伝って男性に苦手意識をもっている。


 婚約破棄、万歳。

 女遊び、どうぞどうぞ。


 それでいて、役割はきちんとこなす。


 未来を知る私からすれば当然なのだが、なにも知らないライエンからすれば、疑心暗鬼になるのも無理はない。


(この人は、なにをそんなに怯えているのかしら)


 ただでさえ男性とは必要以上に緊張するというのに。

 それ以外にも身構えることができるのは、正直遠慮したい。




「? 騒がしいな」

「あら、本当に」


 ペア決めに難航しているはずの生徒たちが、教室の入り口を見ながら騒いでいる。

 先生が、「静かにしなさーーい!」と叫ぶ姿がかわいそうだ。


「ーーあいつは!?」

「え?」


 あいつって、どいつよ。


 生徒……というか、主に女生徒の声が教えてくれた。


「えーー、まさかユールティアス様もいらっしゃるなんて」

「国王にご挨拶してらしたのは聞いていたけれど……」

「やだーー、このクラスで良かった」


 ユールティアス……、誰よ。

 いや、どこかで……?

 婚約者殿は知っている風だったけど。


「はいはい、皆しずかに!」


 頼れるお姉さん、な印象の先生だが今は形無しだ。


「えーー、皆さんご存知かもしれませんが、ご挨拶いただきましょう」


「!」


 そう言われて先生の横に並んだのは、白持ちと呼ばれる、蒼銀の髪を持つ美形の生徒。


 婚約者殿が遊び慣れたやんちゃイケメンであれば、こちらは正統派のイケメン男子。

 切れ長の眼をしたクールな顔つきながら、どこかやわらかな印象もある。

 

 ビジュアル的にどう考えても攻略キャラな気はするのだが、見覚えは、ない。


(二周目以降のキャラ……?)


 だったら情報不足なのは仕方ない。


「皆さま、初めまして。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ユールティアス・ゾ・フォルティス・セラフィニと申します。この学び舎ではどうぞ、気兼ねなく接してください」


 ふむ、良い声だ。

 黄色い声が飛び交う中、ひとつ聞き逃せない情報があった。


(待てよ、……セラフィニ?)


「昨日エレデア国王にお招きいただいていたのですが、その際。……特別にご配慮いただき、今回こちらへ留学させていただけることになりました」


 女生徒からの国王への賛辞が響く。

 

「大陸随一とも言われるこちらの技術も学び。次期、魔皇帝として精進してまいります。どうぞ、よろしく」


 次期、魔皇帝?


 魔、皇帝。


 皇帝。


 ……。


 ……もしかして、未来のラスボスですか?


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