表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/60

五 意図

烈火(フレイム)!』


「「「きゃーー! ライエン様ーー!」」」


(おお、詠唱破棄)


 魔法学校というからには、もちろん魔法に関する授業が多い。

 今日は座学をひととおり終え、簡単な実技の授業なのだが。


 いかんせん、婚約者殿は派手好きである。


 どの属性でも良いので、魔法の弾を小さな的に()てれるかという授業なのだが……。

 燃やしたぞ、この男。

 先生としては、魔力をどのくらい操作できるか見たかっただけだろうに。


(まぁ、この歳で詠唱破棄できるほど魔法を使いこなせるのは……さすが攻略キャラ)


 もちろん、私もできますけどね!?

 一応、修行中のうちは詠唱した方がイメージ通りにいく可能性が高いですから。

 多用はしないように、練習だけしている。


「ーーライエン様っ! さすがです!」


 白持ち、と呼ばれる金の煌びやかな髪が、まるで宝石のようにその者を引き立てる。


「シンシアか」


 そう、とうとうこの時がやってきた。


 シンシア・テセル。


 このゲームのヒロインで、光の魔法を習得した重要人物。


 聞けば、昨日は登校して学校を見た瞬間、倒れたそうだ。

 丸一日、療養していたらしい。


 一応先生が言っていたらしいが、攻略キャラが同じ空間に居るだけで怯えてしまって、全く聞いていなかった。

 いかんいかん、自由を謳歌するために集中せねば。


「リュミネーヴァ様も、そう思いますよね!」

「っえ? えぇ、まぁ……」

「ふんっ」


 何がそんなに気に食わないというのか。

 相変わらず不遜なライエン。


 大方、「このくらいお前も出来るのに白々しい」とでも思っているのだろう。


「あ、そっか。リュミネーヴァ様も、()()()()()お手の物ですもんね。すみません……」


(んんん?)


 しゅん、とうなだれた顔は確かに可愛らしい。

 だが、その言葉にはチクリとした棘を感じる。


(ライエンに対して『すごい』と言ったことを、『このくらい』と評して私に言う必要ある?)


 まるで、私がこれくらい自分も出来るから、すごいことではないと。

 そう言っているかのようでは?


 考え過ぎ?


(原作を知らなすぎて過敏になってるかも)


 忘れよう。他意はない……はず。

 あぁ、婚約者の機嫌が悪そうだ……。


「シンシア、その女に構う必要はないぞ」

「えっ、でも」


 んんん?

 珍しい、ぞんざいに扱われることはあっても、そんな言葉はいわれたことないが……。

 というか、同僚に聞いた話だと最初はヒロインのこと苦手じゃなかったか?


「殿下……」

「行くぞ」


 メーアスがそれとなく取り成そうとするが、相変わらずご機嫌ななめ。

 ……この人、ここまで幼稚ではなかったはずだけど。


「すみません、リュミネーヴァ様。わたしが何かしてしまったのでしょうか……」

「いいえ、シンシア様は気にする必要はありませんわ」


 複雑な男心というやつだろう。

 これ以上構っても、攻略キャラが集まってきてうまく対応できないかもしれない。


(救いなのは、男性と二人きりになるタイミングがないということね)


 魔法の授業は危険が伴うため、基本的に自習もなければ、少人数で行うこともない。

 学年が上がればそういったこともあるだろうが、この学校には魔法に慣れていない平民もいる。

 慎重に行うのも当然だろう。


 そもそも、初めて男性……兄に恐怖を感じた時。

 あれは、二人きりだったからだ。


 記憶、というのは厄介で。

 どんなに安全な存在だとしても、同じシチュエーションに遭遇すると、危険な存在として結び付けてしまうのだ。




ご覧いただきありがとうございます。


少しでも気に入っていただけましたら、ブクマ・★評価で応援いただけますと嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ