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星ふる夜のおまじない

作者: たかなし すがめ

まだよんでいないひとには、ないしょにしてください。

ぼくはきいちゃんと2人で暮らしています。

きいちゃんは魔法使いです。

ぼくが転んで泣いていたら

「ちちんぷいぷい、いたいのいたいのとんでいけー」

と呪文を唱えていたいのをお空になげてくれます。


「いたいのはどこにいくんだろ?」

って聞くときいちゃんは「ないしょ」としか答えてくれません。

でもぼく知ってるんです。

幼稚園で先生が遠くのお山に飛んでいけーってしてるの見ちゃったから。

きっとお山です。どこの山?んー、たぶんあっち?

だけどきいちゃんが「ないしょ」っていうから、ぼくもないしょにしています。


夜中にきいちゃんが窓から空を見ていました。

「今日はお星さまがふるんだよ」

そういって、得意げにきいちゃんは笑いました。

「お星さまはふらないよ」

ぼくもきいちゃんのとなりから空を見ました。

おっきくて丸いお月さまと空いっぱいに散らばったお星さまが見えました。

「ほら!そこ!!」

きいちゃんが指さした方をぼくも見たけど、何も変わりはありません。

「こんどはあっち!!」

きいちゃんがもう一度指さした方を見たけど、やっぱり何も変わりはありません。

「お星さま、ふってないよ」

「お星さま、はやいからなぁ」

もう少しするとたくさんふるはずなんだけど、ときいちゃんは困った顔で時計と空を見比べました。

「そうだ!」

突然パンッと手を叩いて、きいちゃんは台所に行きました。

戻ってきたきいちゃんの手には水が入ったコップが一つ。

「お星さまがふってきたら、つかまえるから!」

「お星さま、つかまえてどうするの?」

「願いごとするんだよ。ふってきたお星さまが消える前に願いごとすると叶うんだって」

「ふーん」

きいちゃんと空を見上げました。

「そこだ!」

きいちゃんが空に向かって手を伸ばして、すばやくコップに手でふたをします。何かがコップの中でカランと音を立てました。

「見て見て!つかまえたよ!」

きいちゃんが嬉しそうにぼくにコップを見せてくれました。

ちっちゃくてとげとげしてるような丸っこいような黄色いのがコロンとコップの底に転がっていました。

「これなに?」

「お星さまだよ!」

得意げにきいちゃんが笑って、ぼくの前にコップをおきました。

「さあ、願いごとしてごらん。あ、3回唱えてね」

「3回?」

「そう同じのを3回」

「なんで?」

「なんで?はて?」

きいちゃんは口元に手を当てて首をかしげて少し考えてから答えました。

「ないしょ」

「ふーん」

でもぼく知ってるんです。

こういうときのきいちゃんの「ないしょ」は、きいちゃんも知らないときです。

だけどきいちゃんが「ないしょ」っていうから、ぼくもないしょにしています。


「お願いごときまった?」

きいちゃんが聞いてきました。そんな急に聞かれても何も思いつきません。

「きいちゃん、先でいいよ。ぼくないもん」

「そっか。じゃあ」

きいちゃんはぼくにもお星さまがふるのが見えますようにと願いました。

「お星さまはふらないと思うよ」

「まあ待ちたまえ。願いが叶うには少し時間がかかるのです」

きいちゃんと空を見上げました。

どれくらいそうしていたでしょうか。

ふいにスッと光が空を横切りました。1つ2つと何度も横切っては消えていきます。

「ほんとにふった」

興奮してとび跳ねるぼくを見て、きいちゃんは微笑んでいるだけです。

「ねがいごと!ねがいごといわないと!えーっと、えーと」

本当にお星さまがふるとは思わなかったし、お願いごとが叶うとも思っていなかったので、ぼくは大慌てでお願いごとを唱えました。


でもぼく知ってるんです。

きいちゃんがつかまえたお星さま、こんぺいとうだったって。

次の日に見たおやつのふくろに「こんぺいとう」って書いてあったし、それに見ちゃったんです、あの夜。きいちゃんのコップにふたをした方の手から、コロンとこんぺいとうが落ちてくるの。

だけどきいちゃんが嬉しそうだから、ぼくもないしょにしています。


あとがきからよむひとには、ないしょです。


さて、よんでくれて、ありがとうございます。


星ふる夜のおまじない。願いごとは何だっでしょう?

答えをぼくは知っています。

だけどきいちゃんが「ないしょ」っていうから、ぼくもないしょにしています。


それでは、また会う日まで、ごきげんよう

ばいばい

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― 新着の感想 ―
[一言] とっても可愛らしい! 何がって? それは内緒!
2021/12/16 01:18 退会済み
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