そして逃亡する
はぁ…はぁ…はぁ
もうどれくらい走っただろう。
暗闇の中を走りながらフェシリアは思い出していた。とても豪華なパーティーだったと。
豪邸の中にあるシャンデリアはキラキラと輝き屋敷内をこれでもかと照らしていた。
(私の貧相な見た目が丸見えではずかしかったわ)
各地から取り寄せられたご馳走は正直見ただけでよだれが出そうだった。
(一口も食べれなかったけれど)
この日の為に鮮やかに着飾った客人達は口々に祝辞を述べた。
(女性客のほとんどの顔がひきつっていたわ)
いたたまれなかった。何もかもが。
貴族に産まれたからには政略結婚は当然覚悟していた。いたけれど、当日を迎えやはり耐えられなかったのだ。
フェシリアは気付くとトイレに行くふりをして館を抜け出し、街にいる親友アリーの元へ向かう夜道を無心で走っていた。
(お父様、お母様お許しください)
走り続けてヒールはとっくに脱げ、フェシリアの足は血に染まっていた。やけるように足が熱い、息は乱れ、喉もひきちぎれてしまいそうなくらいに痛くなってきた。
もう少し頑張って、私の体。。もう少しだから…
しかし、悲しい事にフェシリアの体はもう限界だった。裸足で走り続けた足はもつれ、フェシリアは前から倒れ込んだ。
(もう、立ち上がれない。。)
倒れ込んだフェシリアに投げかけるように暗闇の前から声が聞こえた。
「追いかけっこは終わりかな。婚約者殿」
朦朧とする意識の中でフェシリアは顔をあげた。
(そんな。。。)
艶やかな金髪に透き通るようなアイスブルーの目、均整の取れた体、どんな娘でも一度はあこがれる王子様を実体化したようなノーフォーク公爵がいつも通りの優雅な笑顔をフェシリアに向けていた。
(世界一美しく、残酷な私の婚約者。。)
フェシリアは立ち上がる事も出来ず目がかすみ真っ暗な闇の中に落ちていった。




