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1.報告するべきか、否か。

というわけで、第一章です(*‘ω‘ *)

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「んー……?」



 俺は会社の真っ暗なオフィスで、今日の出来事を思い返していた。

 あからさまに様子のおかしかったゴブリン。何者かと連絡を取っていたかと思えば、やられたフリをして立ち去っていった。

 そもそも喋れたのか、という驚きもあったけど。

 帰社してからというもの、俺はこの一件への疑問で作業が進んでいなかった。



「いや、忘れよう。それよりも……」



 だけど、いつまでも脱線しているわけにはいかない。

 だって明日は、やっと――。



「ティーナに、会える……!」



 あの日以来、ようやく彼女に会えるのだから。

 そう思って俺は、停滞し続けていた作業へと手を付けるのだった。

 冒険者企業に勤める社員としての仕事は、ただダンジョンを探索するだけではない。帰社してからは取引先への情報共有、それらの報告書をまとめる必要があった。


 もっとも、いつもなら退勤が最後になるほどの量はない。

 ただ、今日が異常なのだった。



「えっと、とりあえず人語を話すゴブリンの報告をまとめるか」



 言葉を話すゴブリン。

 さらには、通信機器を用いた連絡手段。

 極めつけは俺のことを見逃した、という謎の行動。



「………………」



 ――どうまとめりゃ良いんだよ。


 俺の手は、そこでピタリと止まってしまった。

 すべてがすべて、人類にとって重要すぎる未知の情報だ。それこそ、まともに報告したところで研究機関の人間が信じてくれるとは思えないほどの。

 加えて報告者が新卒の社員となったら、なおさらだった。



「はぁ……。どうすっかな」



 そんなわけで、正直に書くかさえ悩んでいた。

 その時だ。



「あぁ、まだ残ってたの? 赤坂君」

「え? あ、宮部部長」



 俺に声をかけてくる女性があったのは。



「最近、ずいぶんと仕事熱心だけど。どうしたのかしら?」



 その人の名前は、宮部コトネさん。

 俺の直属の上司であり、出世頭とされている先輩だ。栗色の髪を肩口で揃えて、眼鏡の奥に見える眼差しはやや鋭い。一言で表せば、クールな大人の女性。

 事実、スーツ姿でも分かる艶やかな雰囲気は息を呑んでしまうほどだった。



「……あぁ、いや。少しだけ、心境に変化がありまして」

「うふふ。それは、とても良いことね」



 俺が少し緊張しながら答えると、宮部さんは嬉しそうに目を細める。

 そして、ふと思い出したようにこう言うのだった。



「そういえば、今日は不思議なことがあったんですって?」



 というのも、先ほどから悩んでいる報告書の内容について。

 彼女は首を傾げてパソコンを覗き込むと、興味深そうにそれを見ていた。



「不思議なこと、というか。もしかしたら、俺の勘違いかも……」

「うーん。でも、そうと決めつけるには早いわよ」

「え、そうですか……?」



 そして、まるで夢みたいな内容を肯定するように言う。

 俺は驚いて、少しだけ声を詰まらせた。すると宮部さんは、小さく笑って――。



「……そう、ね。だったら、こうしましょう」



 俺に、こう提案してくるのだ。




「明日、一緒に研究機関に報告に行きましょう」――と。





 それは、新入社員である俺にとってはあり得ない大役だった。



 


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