3.一方その頃。
勘違い?ラブコメ、始まります。
ローファンでええんか、この作品(*‘ω‘ *)?
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「――あぁ、そうだ。これはボスからの指令、すなわち種の規範をも超えた絶対である。その人間を殺してはいけない、分かったな?」
ある魔族の男性は、部下にそう伝えると通信を切った。
ダンジョンの最奥にある城の一室で、数多くの監視カメラから送られてくる映像を見上げながら一つ息をつく。すべての魔物の統制を取るこの場所には、最新の軍用機器を使用する魔族たちが集っていた。
その魔族の中でも、リーダーを任されているのが彼――ダクド。
痩身にスーツを身に着け、眼鏡をかけた美男子は踵を返すと片膝をついた。
そして、ある女性に向かってこう声をかける。
「これで、よろしいでしょうか。……ティーナ様」――と。
そこにいたのは、ワタルと居酒屋で会話をしていた彼女の姿。
ティーナは冷酷な眼差しを向けながら、静かに頷いた。
「これでよい。あの人間には今後一切、手を出すな」
感情のこもらない声を発した彼女に、ダグドは深々と頭を垂れる。
何故なら、この城においてティーナの言葉は絶対だから。
そう――。
「承知いたしました。……偉大なる魔王様」
ティーナ・アインズワースは、人類に仇なす魔王に他ならなかった。
先代の魔王の死後、的確な采配で鉄壁の要塞を築いた天才。
そんな彼女のことを敬わない魔の者はいなかった。
「……今宵はもう、私は下がろう。あとは頼むぞ」
「はっ……!」
その証左に、彼女が管制室を去ろうとすると全員が敬礼する。
そしてその背中を見送るのだ。
主の去った先を見ながら、魔の者たちはみな口々にこう語る。
「さすがは魔王様、オーラが違う!!」
「凛とした姿、憧れちゃうわ!!」
「本当に最高!!」
誰もがティーナを褒め称えた。
それほどまでに、彼女の存在感は圧倒的なのだ。
ダグドはそのことを改めて感じ入りながら、ふと思考を巡らせる。
「しかし、あの人間――」
液晶の画面に表示された人間、赤坂ワタルを見据えながら。
「いったい、何者なのだ……?」――と。
魔王が手を出すなと命じる存在。
おそらくは、今後の魔王軍による侵略を左右する重要な要因なのだろう。外見は極めて普通の人間に過ぎないが、あのティーナが直々に命令を下したのだ。
間違いない。
この男は、ただ者ではない……!
「ふっ……面白くなってきたな」
そう考えてダグドはほくそ笑む。
彼の瞼の裏には、輝かしい魔族たちの栄光が映っていた。
◆
「………………」
自室に戻り、ティーナはゆっくりドアを閉める。
鍵をかけたのを何度も確認し、ゆっくりとベッドの傍らまで移動した。
そして――。
「ふわああああああああああああああああああああああああああ!?」
まるで、気の抜けた風船のような声を発するのだった。
彼女は重力に任せるままに、ベッドに突っ伏す。
「危なかったよぉ! もう少しでワタルくんが死んじゃうところだったぁ!!」
面を上げるとティーナの瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。
おそらくは、緊張感から解き放たれた反動によるもの。絶大なカリスマを誇る魔王から、一人の女の子に戻ったティーナは枕を抱き寄せてもんどりうった。
心臓が早鐘のように鳴っている。
あと少し遅ければ、大切なワタルが死んでいたのだから当然だろう。しかしひとまず、今回の一件で魔物が彼を襲うことはなくなった。
それはそれで、安心を担保できるものだ。
でも、問題はここからだった。
「うぅぅ……それにしても、どうしようぅ……!」
ティーナは枕に顔を埋めて、そううめき声を発する。
そう、問題は本当にここから。
「まさか、ワタルくんが冒険者だったなんて……うぅ……」
大切な友人が、まさかまさか、自分と敵対する組織の人間だったのだ。
これはティーナにとって由々しき事態だった。
「どうしよう、どうしよう……!」
そう言いながら、あーでもない、こーでもない、と。
ティーナは必死に策を巡らせるのだった。
そして――。
「……決めたっ!」
――バッ! と立ち上がって、拳を握りしめる。
そうして彼女は、こう誓うのだった。
「私、魔王だってバレないように頑張るもん!」
あくまで自分はワタルの大切な友達、ティーナ。
魔王であること、ダンジョンのラスボスであることをひた隠し、彼に接していこうと。そして、そのためにはいかなる手段も問わない。
そうして――。
「頑張るぞぉ! えい、えい、おーっ!!」
その日から、魔王ティーナの孤軍奮闘は始まったのであった。
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