プロローグ 出会い。
ローファンでコメディ書きたくて書きました。
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――とある居酒屋にて。
「……ったく。本当にお前は使えないな、ワタル」
「すみません、先輩」
「社長の親戚じゃなかったら、絶対雇われないんだからな? 冒険者稼業ってのも、世間では評価が低くても危険と隣り合わせなんだ」
「はい……」
俺こと赤坂ワタルは、先輩社員から説教を喰らっていた。
それというのも、今日のダンジョン内でのミスについてである。
「新人のお前にできるのは精々、素材の回収作業。俺たちが魔物の注意を引き付けている間に、回収ボックスに入れるだけのはずだろ……?」
「………………」
「どうして、そんな簡単な作業でさえもミスするんだよ」
「……ごめんなさい」
俺が大学卒業後、入社したのはダンジョン探索を請け負う企業だった。
突如として世界中にそれが出現して、早数十年。湧き出す魔物の対処に当たる者を冒険者と呼び、探索作業が軍から民営に移されて、すでに十余年が経過していた。
そんな民間企業の一つに、コネで拾ってもらったは良いのだけれど。いかんせん、三ヶ月が経っても俺は今の仕事に慣れられないでいた。
たとえば、さっき先輩が言っていた素材の回収作業。
これは研究機関に魔物から採集される『魔素』を送るため、特殊なボックスに収納する役割だった。これについては特別な資格も必要なく、未経験採用の俺でも可能な唯一の仕事である。しかし、それでさえ俺はボックスの操作を誤った。
「はぁ……。もういいよ、今日は」
「………………」
お陰様で、本日の成果はほぼ無に近い。
反省会と称して先輩に半ば強引に居酒屋へ連行され、延々と説教をされるのも当然という感じだった。しかしながら、俺にできるのは頭を下げるだけ。
そも、この先輩が上司に頭を下げなければもっとヤバかったのだ。
本当に頭が上がらなかった。
「とりあえず、明日はオフだ。もう一度、ボックスの使い方を確認しろよ?」
「わ、分かりました……」
そう言うと、先輩は懐から財布を取り出して会計を済ませる。
「まぁ、最初は大なり小なりミスはするものだ。ただ頼むから、同じようなミスだけは繰り返さないでくれ。あと、今日はこっちが出すから」
「は、はい……」
「それじゃ、俺は帰るよ」
なんだかんだ面倒見の良い先輩は、そう言うと荷物をまとめて去っていった。
俺はそこに至ってようやく面を上げて、深くため息をつく。
「はぁ……。駄目だよなぁ、このままじゃ……」
思い返せば、この人生失敗ばかりだ。
高校と大学の入試から始まり、就職活動を経て今に至る。学業も何もかも平均だったけど、致命的なやらかし癖が足を引っ張っていた。
このままで大丈夫なのか。
そう考えると、やはりため息しか出ない。
「お客様、申し訳ございません」
「ん、はい……?」
そう思って、グラスに残っていたビールを口に含もうとした時だ。
居酒屋の店員が、俺に声をかけてきたのは。
「どうしました?」
「実は席に空きがなくて、おひとり様の相席をお願いしたく……」
「あぁ、そういうことですか。大丈夫ですよ」
そして、話を聞くところ簡単な相談だった。
たしかに休日前の居酒屋には、数多くのサラリーマンが来店している。空いているのは、先ほど先輩が座っていた席だけ。
俺としては、もう少し飲んでいきたい気持ちだったし。
だとすれば相席でも致し方ないだろう。
「ありがとうございます! ――一名様、ご案内します!!」
俺の返答を聞くと、店員は元気よくそう言った。
ひとまず残っているビールをもう一度、喉に流し込もう。そう思った。
「あの、失礼します……」
「ん? あぁ、気にせず――」
その時だ。
「………………へ?」
俺の目の前に、浮世離れした美女が現れたのは。
「す、すみません! えっと、わたし居酒屋さんに慣れてなくて……!」
そう言って、相席相手の女性はひとまず腰を落ち着ける。
腰ほどまである長い金色の髪に、円らな青の瞳。目鼻顔立ちは芸術品のように整っていた。着ている服はとにかくラフで、ティーシャツにジーンズといった感じ。
そして、そのシャツに描かれていたのは――。
「魔法少女マジカル☆マキナ……?」
オタク界隈で、コアな人気を集めている美少女アニメのヒロインだった。
俺が思わずその名前を口にすると、女性は綺麗な眉を小さく動かす。
「え、あの――」
そして、興奮したように身を乗り出して言うのだった。
「も、もしかしてマキナたんのファンですか!?」――と。
先ほどまでの余所余所しさはどこへやら。
彼女は、鼻息荒く俺の手を掴んで目を輝かせる。
これが俺と謎の女性――ティーナ・ラインズワースの出会いだった。
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