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勝手すぎる幼なじみにうってつけの一撃  作者: 山下くりぷうぴ
第四章~「ハッピーエンド」、~
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第四話 マッキーのがんばり物語:急

「はっ!」


 わたしは目を覚ましました。


 …………!

 …………。


「ああうー……ふぇ!?」


 ……ここは……?

 と言おうとしました。

 ただの反射にすぎない、意味のない独り言を軽い気持ちで口にしたつもりでした。


 しかし、喋れませんでした。

 ああう、なんて可愛い言葉未満が漏れただけでした。

 だから「ふぇ」と驚きました。


 話せない……?

 もしや。


 急いでわたしは自分の手を目の前に、視角の内側にまで持っていきました。


 視えたのは、まるでロールパンのようにパンパンのふっくらした可愛い手のひら。


 確信しました。

 わたし、赤ん坊に戻っています。


 ええ、よく見れば部屋の内装にも懐かしさを感じます。

 物心はなくても記憶にはありますからね。


 しかし、死に戻りのコードでしたが、まさか赤ん坊まで戻るとは。

 17年も戻りましたか。

 結構長いですね。


 わたしとしては、リングがチーターになり破滅するのを阻止できればいいので、この17年という歳月は戻りすぎの気がするのですが……。


 ……いえ、そのための戦いはもう始まっている。

 この時点で始まっている。


 そういうことでしょうか、コードがここまで戻した意図は。

 なら、やってやりますよ!


 ……。

 何を?

 こんな赤ん坊の状態で何ができると言うんでしょうか。

 焦っても仕方ないことではありますが、状況が状況だけに何もせずにいるのが非常にもどかしいです。

 あと17年、やはり待てません。


 だんだんイライラしてきました。

 イライラしてきたのでモノ当たるしかありません。


 クソ! っと一発、壁を殴りました。


 ドンっ!


 へ?


 すごい音がしました。

 とても赤ん坊が壁を殴った時に鳴るような音ではありません。

 まるで17歳の……。


「な、なに……? 今の音……?」


 隣の部屋にいた若かりし母がこちらまで様子を見に来ました。

 当然でしょう。

 赤ん坊しかいないはずの部屋から、まるで17歳の女の子が壁を殴りつけた時のような音と衝撃がしたのです。


 それはつまり……。

 とある仮説が脳裏をよぎります。


「……気のせいかしら」


 一方の母はそんな呑気なことを言ってはしばらく熊のようにのそのそ歩き回って、わたしの頭を一度撫でてから部屋を出て行きました。


 さて、一人になったところで先ほど脳裏をよぎった仮説を検証しますか。


 とはいえ対象は壁ではなく、今度は近くにあったぬいぐるみ。

 ぬいぐるみと言えど、本来、普通の赤ん坊では握り潰すなんてことは不可能。

 ですが……。


 ぐいっ! ぎゅぎゅぅ~。


 手の力を入れると、ぬいぐるみは大きくひしゃげ、押し寄せられた綿が今にもはちきれそうでした。


 そして、この持った感覚でわかります。

 つい先日までの感覚と、まったく同じだと。

 17歳のわたしと全く同じ力を持っていると。


 ということで確信しました。

 わたしはこの死に戻りで、記憶だけでなく、『パワー』も引き継いでいます。


 正確には身体能力全般でした。

 走る速さもジャンプ力もすべてです。

 この0歳の体に、17歳の身体能力が宿っていました。


 さらに不思議なのは、見た目は0歳のものと変わらないということ。


 つまり、この筋肉量で17歳相当の体力があるのです。

 これがどれだけ恐ろしいことなのか……。

 それを5歳の時のあるエピソードでわたしは痛感しました。




 その日、5歳のわたしはリングのために花かんむりを作っていました。

 するとそこにやって来たのは、そうイダーサくんです。


「お、なんだこれ! ヘイパスヘイパス」


 いつか見た光景です。

 イダーサくんはわたしの花かんむりを奪ってヘイパスヘイパスしています。


「うわーん、返してよっ!」


 わたしは精一杯の抵抗でイダーサくんを押しました。

 意味はないと思いながら。

 だってしょうがないじゃないですか。

 『意味がない』と思うのも。

 だって、いくら17歳の体力があるとはいえ、相手は15歳の少年。

 むこうも立派に大人並みの体力はあるはずです。

 普通に考えれば死に戻りしたとて押しても意味はないはずです。


 ですが、その目論見は甘かったのです。


 どんっ!


「ん? ……なっ!?」


 バキィ!! ビュウウウウン!! ドッカァアアン!!


 この轟音はなんの音でしょうか。

 正解はイダーサくんが草原の果てまで吹っ飛ぶ音でした。


「うわあああ~~! イダーサくぅぅうん!!」


 取り巻きの少年たちが吹っ飛ばされたイダーサくんを探しに行きました。


「なんだあの女のパワー!!」


 そんな取り巻きの声が聞こえましたが、わたしも激しく同感です。


 5歳のわたしにどうしてこんなパワーが……。

 しかし、それは考えてみれば当然でした。


 わたしは成長したのです。

 普通の赤ん坊が子どもになるのと同じように。


 どうやら、0歳の筋肉量に備わっていたパワーは、年齢の成長と共に大きくなる体に比例して、しっかり成長するようです。


 具体的な数字を出しましょう。

 0歳児の握力は、約0.5キロあると言われています。

 一方5歳児の握力は約10キロ前後だとか。


 つまり0歳から5歳の成長過程で、20倍の筋力になるんですね。


 その一般的な赤ん坊の成長法則が、

死に戻りをしたこのわたしにも、例外なく当てはまるようです。


 17歳の頃、わたしの握力は30キロありました。

 そのパワーが0歳の頃のわたしに宿り、0歳児にして握力が30キロある化け物赤ちゃんになりました。


 それが5歳まで成長しました。

 通常の子どもたちと同じように成長して。

 普通の子と同じように、20倍の筋力に成長をしたということです。


 つまり今のわたしの握力は、30×20で、600キロあるということです。

 5歳にして。


 人間の壁を超え、なんならゴリラの壁も超えていました。


 5歳から15歳までは さらに3倍近く筋力がアップすると言われているので、最終的にわたしの握力は1800前後になるのでしょうか。


 化け物じゃないですか。

 女の子としてそれはどうなのでしょうか。

 決まってます。

 どうでもいいです。


 大事なのはリングを守ること。

 そのための武器が増えたことを喜びました。

 力づくでリングを守ることができるかもしれない。

 それはとっても、うれしいことです。

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