第一話 マッキーの理想
女神は語った。
この世の仕組みとやらを。
人の承認欲求は世界を破滅させる。
そんな欲求の発散装置として支配種やチーターという「仕組み」があるのだと。
そしてチーターが支配種と戦い、称賛を受けたその果てに待つのが『クリア』。
クリアしたチーターは逆に支配種を産む存在となる。
この世の仕組みに組み込まれる。
それを女神は意図的に隠していた。
こんなことを知ったら、さすがにオレも洗礼しないだろうという至極真っ当な人間の価値観を理解したうえで。
うん、真っ当だ。
話の噛み合わないことが多い女神だが、この点に関しては珍しく分かり合えた気がする。
そして、女神はこのタイミングで話した。
その理由は……。
「さあリングさん、大変なことになってしまいましたよ。
前回のクリア者はたったの20年前です。
まだまだこの方の分の支配種は残っています。これからも出現します。
それなのに、もうアルシーヴさんがクリアしてしまいました。
それも、一般人にまで視えるほどの輝き、つまり爆発的で急激な称賛によるクリアです。
きっと協力な支配種を産むでしょうね。
前回の分とアルシーヴさんの分の支配種が同時にあちこちで出現する世界。
これは大変です。
超強力なチーターが必要です。
リングさん、どうしましょう。
洗礼、しますか?
だってそうですよね。
いくらチーターになることのリスクが山積みでも状況が状況です。
この二重に支配種出現する状態を、まずは生き延びなければなりません。
超強力なチーターが必要です。
チーターレベル999のリングさん、わかりますよね?」
ごもっともだと思った。
女神の理屈、そこまで変じゃない。
この状況、世界を救うならオレが洗礼を受けるしかない。
リスクだらけなのを承知で。
だから、オレは……。
「ダメっ! リングっ!! 絶対ダメっ!!」
気を取り戻したマッキーは開口一番でオレを止めた。
「……そうそうアナタ、やっぱり色々知ってんですよね。
あの子の体が光った瞬間にそれが何かを察して、山奥まで連れてくるなんて知ってなきゃありえません。
並大抵のチーターより、チーターに詳しいですよね。
でも、洗礼しようとしてもできなかった……。
最初はアナタには単に素質がないだけのかと思いましたが……。
でもよく考えれば別の可能性もありますよね。
例えば、私が洗礼しようとした時、アナタは既にチーターだったとか」
え?
マッキーがチーター?
いやまあ、常識ハズレに強いけど。
「……」
マッキーは沈黙する。
「その沈黙は肯定と受け取りますよ~。
そんで、マッキーさんが色んなこと知ってるっぽいってのは、チーターの設定に関することだけじゃないんですよね。
リングさんの運命……? にも詳しいというか……。
さらに、コードを発動していないのに異常な強さ。
つまり、純粋な身体能力が化け物じみてるって点。
これはきっとコードの能力それ自体は戦闘に特化していなくて、コードは「強くなるための装置」……ということなのでしょうね。
コードのおかげで基礎的な身体能力が向上した。
以上のことを踏まえると、マッキーさんの能力は……。
『死に戻り』、でしょうか。
それも強くてニューゲーム的な」
「……」
マッキーは沈黙した。
それこそが正に、が答えだった。




