第八話 よく喋る女神
マッキーを追いかけて道なき道を進む。
進むと言ってもオレは女神に背負われてるんだけど。
荒野を抜けて、まだ進んで、その先の森に入った。
森の中を女神と共に駆け抜ける。
視線の先には輝くアルシーヴちゃんを抱えて走るマッキー。
女神の脚力はマッキーと同等くらいか。
追いつけはしないが離されもしない。
背負ってるものがオレっていう分、もしかしたら女神の方が上?
え、こいつスペック高いの?
「クソっ! 消えないっ!
声から離れたのにっ! 光が消えないっ!
このままじゃっ!!」
そんな風に慌てるマッキーの声が聞こえた。
なんだ? 声?
称賛の声からアルシーヴちゃんを離したかった?
その時……。
バンッ!!
「きゃっ!?」
破裂音と共に、アルシーヴちゃんの体がより一層強い光を放った。
抱えていたマッキーが弾かれるほどの衝撃。
アルシーヴちゃんの体の光は大きく広がっていき、彼女の体ををすっぽりと覆う球体になった。
まるでオーラの様だった。
オーラをまとったアルシーヴちゃんが空中に浮遊している。
「ああっ……!」
マッキーは絶望の声をあげる。
さっきから絶望してばっかりだ。
そして移動を止めたことによって、女神とオレは二人に追いついた。
「!? リングっ!? なんでっ!? なんで来ちゃったの!?」
なんでって……。
答えかねてる間にアルシーヴちゃんが●になった。
●。
伏字じゃない。黒い丸。
光だったオーラっぽいものが、さらなる発光をした直後、今度は真逆の一切の光を発射も反射もしない、ただの黒い丸になった。
「穴……?」
そう、穴に見えた。少なくとも物質には見えなかった。
立体的な、球体とも思えなかった。
黒い丸、どこかにつながっているような、そんな穴。
どこかにつながっている……?
光を一切反射しないのは、それほどの重力が発生しているから?
少なくともそう思わせるほどの、凄まじいエネルギーを感じた。
「穴、という解釈は結構正しいですね~」
オレの素朴な疑問に答えてくれたのは女神だ。
「でもそだけでは言い表せてるとも言えません。
卵、とも言えますが……、う~ん、割れて何かが産まれるわけでもないんですよね。
強いて言うなら『宇宙』……いえ、『異世界』でしょうか」
「異世界……」
「はい! 異なる世界、宇宙そのものです」
「こんな小さなものが……?」
「小さく見えるだけですよ。
この三次元には存在しないものを無理に表示させているだけですからね。
そして、ここから支配種は来ます」
……はい?
「アルシーヴさん! クリア、おめでとうございます!
まさかレベル50のアナタさんが到達するとは夢にも想ってませんでした。
ただの噛ませのつもりだったんですが、すごい番狂わせです!
私、ちょっと感動してますよ!」
女神は喜々として●に話しかける。
クリア。さっきも言ってたな。
「おめでとうって……クリアって……なんだよ。
支配種が来るってなんなんだよ……!」
「では説明しましょうか。
ちなみに、コードが本体って件を説明しなかったのは、別にどうでもいいことだから単に言ってなかったというだけですが……。
これから話す内容は、知られることで私にとって非常に都合が悪いから意図的に隠していたモノです」
やっぱり色々隠してたのか。認めやがった。
話すことが都合悪い。
それはつまりオレが洗礼したくなくなるような話なんだろう。
クソったれ。
だとしてなんで話す気になったんだ。
疑問や怒りは尽きないが、止めることがオレにとって得とも思えない。
だから邪魔しない。
一方のマッキーは女神の口を封じようと飛び掛かる。
が、女神に腹を殴られ崩れ落ちる。
え、お前、強いの?
あとわかんないのは、なんでマッキーはなんで止めようとしたんだろう。
マッキーは恐らくその内容を知っていて、オレに聞かせたくないから?
でも、オレが洗礼を受けたくなくなるような話なんだろ?
それをオレが聞くのはマッキー的にもメリットあるでしょ。
オレに洗礼してほしくないスタンスだったじゃん。
やっぱり疑問が尽きない。
「……うぅ……」
だけど苦しんでるマッキーにその答えを聞くのは酷だ。
だからオレは女神の言葉に耳を傾けることにする。
「あ、いいですか? じゃあ話しますね。
まず……この世界を破滅させる感情エネルギーがあるのを知ってますか?
人々の中にある様々な感情、。それらは皆、大きなエネルギーを持つのですが、時として世界を破滅させます。
そして、世界の破滅の最も大きな原因となる感情エネルギー、それは『承認欲求』です。
他人から認められたい、自分で自分を価値があるものと信じたい。
そんな欲求ですね。
ちょっとカッコ悪い人間の側面ですが、何も悪いことだけじゃありません。
この承認欲求は人類の発展に大きく貢献したエネルギーでした。
ですが今となってはただの争いの火種にしかなりません。
そこで神様は……あ、私の上司に当たる人ですね、神様は考えました。
なんとかして人々の承認欲求をコントロールできないかと。
単に人々の承認欲求をただ消せば楽なのですが、それだと文明も終わります。
それはダメですよね。
だったら承認欲求を『発散』させる仕組みを考えればいいのでは?
ある日、神様はそう考えました。
そうすれば人々の承認欲求をコントロールできる! と。
そこで神様はまず一部の異常に承認欲求の高い人に目を付けました。
このエネルギーなら理想を具現化できると考えたのです。
それがご存知、コードであり一部の人とはチーターさんのことですね。
異常な承認欲求を、コードとして形にする仕組みを作ったのです。
だけどそれだけでは大問題です。
承認欲求の激しいバカが力を得れば人々を大虐殺してしまいます。
そこでわかり易いチーターの攻略対象、ゲームマスターを用意しました。
それが支配種ですね。
溢れた承認欲求を武器にした人に対し恰好の敵をおぜん立てして発散させる。
それがコードを使って支配種を倒して発散するチーターさんの正体です。
するとあら不思議。
チーターさんたちの欲求が発散されるのはもちろん、なぜか応援している立場にすぎない『一般の人たち』まで承認欲求を発散させました。
勝ち馬に乗ることで人は承認欲求を満たせるのですね。
これは当初の見込み以上の成果でした。
当初は一部の異常な承認欲求を持つ人だけでも発散させないと……と考えていたのに。大半の凡人まで発散できてしまったのはすごい成果ですよね。
これは神様も自画自賛で酒が入ると何回も話す鉄板自慢話ですね。
しかし問題が一つ。
それは支配種の制作コストです。コスト高いんですよアレ。
そんな毎度毎度、支配種なんて作ってられません。
そこで考えた結果、支配種はチーターさんに用意してもらおうとなりました。
その経緯としましては、コスト問題解決に向けて色々検証している時の発見に理由があります。
検証仮定で称賛によりチーターはエネルギーを得られること、そのエネルギーはやり方次第でビッグバンにも相当することなどが続々と判明していました。
これなら世界を作って、そこを支配種を作る仕組みにできるのでは?
そう考えたんですね。
それがこのクリアという『ルール』です。
称賛を極限まで得たチーターさんは『クリア』し、世界になって支配種を産みます。
そして生まれた支配種は、新たなチーターさんの発散と、称賛の糧となります。
素晴らしいサイクル、そう思いませんか?
ということで今、アルシーヴさんは支配種を作る異世界そのものになりました。
今後は数千体の支配種を生み出してくれるでしょう。
前回のクリア者は20年前でしたので、まだまだ支配種を産み続けています。
アルシーヴさんが産む分と合わせると、これは……世界は大変ですね~!」
そこまで聞いて思ったこと。
今まで女神がこれを隠していたのは正解だ。
洗礼、やっぱりしちゃダメじゃん。
三章はここまでです
四章に続きます
四章で一区切り終わらせます




