第六話 アルシーヴちゃんVS支配種
女神への罵倒もそこそこに、どうして突然現れたのか聞く。
「支配種、発見されました。観測所で」
オレたち3人は「さっさと言え」と再び罵倒して、出現予想ポイントに向かう。
ポイントの荒野についた。
地平線の先に支配種が現れた。
「……!」
ギリッ……!
アルシーヴちゃんの歯を食いしばる音が聞こえた。
オレですら拳を握る手に力が入る。
マッキーも不安そう。
何故かといえば現れた支配種が、アーカイブを殺したあの支配種だったから。
あの脚の速い支配種。
もちろん、あの時アーカイブはコードを破壊されながらも光線を放ち、確かに目の前の敵を消し去った。
だからこれは同じ種族的な区分の、別個体ということだろう。
つまりコイツに恨みを持つのはお門違いだ。
とは言え、恨みを持つ持たない以前に支配種。
人類の敵だ。
殺し合うことは決まってる。
だから同じ?
同じなのだろうか。
「マッキーさん、手を出さないでください。
この支配種だけは、わたしが倒したいです。
わたしだけの力で倒したいです」
違ったようだ。
そんな私情まみれの提案にマッキーは、
「……」
言葉を返せない。
走り出すアルシーブちゃん。
「コラッ! ツッコむな!」
返事のできなかったマッキーだったが、アルシーヴちゃんが突っ走ったことで怒号で返すことができた。
「手を出さないでっ!!」
「うっ……!」
へたりこむマッキー。
弱いなあロリに。
一方でアルシーヴちゃんは支配種とぶつかり合っていた。
ゴガン!! ガガン!!
「うっ、くぅう!!」
盾で攻撃を防ぐアルシーヴちゃん。
苦しみの声をあげる。
「う……! まだまだぁ!」
だけど苦しみは、以前ほどではなさそうだ。
体が比較的休まってるのもあるが、マッキーとの修業の成果もあるだろう。
ガードの技術は上がっている。
マッキー、もっと誇っていいよ。
そんな落ち込まないでさ。
そう声をかけようとしてマッキーを見たら、もう顔を上げてた。
「加勢、するの?」
「……しない。きっとあの子の尊厳を踏みにじる行為だから。
見守る。大丈夫、アタシが育てたんだから」
オレへの答えというより、それを利用して自分に言い聞かせてるみたいだ。
ガン!
盾ごと吹っ飛ばされたアルシーヴちゃん。
だけどそれは衝撃を逃がしたからで、オレとしては「うまい」と評価してもいいものだと思った。
でもねアルシーヴちゃん、さっきからオレは君が吹っ飛ばされてる姿しか描写できてないぞ。
何か反撃をするならそろそろ見せてくれ。
じゃないと耐えられない。
するとアルシーヴちゃんはもぞもぞと上着のポッケをまさぐった。
ヒュンッ!
取り出したのは尖った棒。
長めのアイスピック。
そういえば前に言ってたな、と思い出す。
あの盾には兄のコードである杖の砲台としての役割があった。
杖を差し込める程度の穴が開いている。
その穴を利用して長い刃物で相手の眼球ごと脳を突き刺すのだと。
それなら非力な自分でも支配種に勝てると。
それをやるつもりだ。
本来はもっと長い刃物でやるはずだが、今日はあのアイスピックしか持ち合わせてなかったようだ。
ただ幸い、相手は小型の支配種。
むしろちょうどいい長さかもしれない。
偶然?
いや、ずっと用意してたんだろう。この長さだけは。
同じ支配種が現れたらいつでも殺せるように。
アルシーヴちゃんは体勢を低くして、盾を構えながら支配種に突っ込んだ。
バン!
吹っ飛ばされる。
アルシーヴちゃんが。
だけどすぐに立ち上がる。
そして突っ込む。
また飛ばされる。
それを何度も繰り返す。
さすがに痛そうだ。
いくらマッキーとの修業でガードがうまくなったところで、これだけ吹っ飛ばされれば結局負担は大きい。
何より見ていて辛いのが、一向に勝てる気配が見えてこないこと。
どれだけ動きについて行ってガードを決めてみせようが、攻撃をするのはまた別次元の難しさ。
盾に開いてる穴からアイスピックを出して支配種の目を刺す。
これをやるには、まず盾を支配種に押し付けなきゃいけない。
しかも盾の穴の位置は支配種の眼球の位置にピンポイントでなければならない。
……無理だろ、冷静に考えて。
ガンッ!
吹っ飛ばされるアルシーブちゃん。
「うぅ……! ううっ……!」
立ち上がる姿が痛々しい。
「ああ……」
そんな落胆の声が聞こえてきたのはギャラリーのいる方向。
最初は応援ムードのたギャラリーだったけど、今はすっかりテンション下がってる。
気持ちはわかるけど、でも勝手な奴らだと思った。
無双するのが見たいのもわかるけど、こういう時もあるのは受け入れてそれでもちゃんと応援するのが守られてる側の義務だろう。
「頑張れアルシーヴちゃん!!」
意識的にオレは声を張り上げた。
「頑張れ頑張れ! アルシーヴちゃん!!」
アルシーヴちゃんは泣きながらも立ち上がって、再び盾とアイスピックを構えて支配種に突っ込む。
オレも応援をやめない。
アルシーヴちゃんはまた弾かれる。
でもまた立ち上がる。
少し泣いてる気がした。
オレは応援をやめない。
すると小さく
「がんばれー」
なんて声がギャラリーの方から上がってきた。
いや、少しなんてもんじゃない。
応援の気持ちは徐々に広まり再燃し、戦いの当初よりずっと大きい「頑張れ」の合唱になった。
なんだよ、やっぱりいい奴らじゃん。
なんて都合よく、オレはギャラリー共を見直した。
「えっ!?」
マッキーが驚いてる。
うんうん、オレも驚いたよ。
……? あれ? なんか、驚き方の種類が違う?
……マッキー? どうしたの?
どうしてマッキーは、絶望してるの……?
そんな意味不明な事態で不安だらけのオレの心境を他所にして、アルシーヴちゃんに奇跡が起きた。




