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勝手すぎる幼なじみにうってつけの一撃  作者: 山下くりぷうぴ
第三章~チーターのクリア条件~
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第二話 リングさんは奪わないで

 ほいで約束の修業開始。

 オレたちは誰もいない草原にきた。


「アルシーヴちゃんは攻撃手段がほしいのよね」


「はい、そうです!」


「何か具体的なイメージはあるの?

 どんな武器で戦いたいとか」


「ええと……細い刃物を使いたいと思います」


「ふんふん、その理由は?」


「わたし……力が特別あるわけじゃないので……。

 コード以外の一般魔法も得意とは言えませんし……。

 あ、一応弓矢は得意なんですけど、でも、支配種の体は硬いので矢が刺さるとも思えず……」


「なるほど、自分と敵の状況は理解してるのね。

 では改めて、どうして長い刃物を?」


「眼球を突き刺すためです!

 支配種はいくら外殻や皮が硬くても眼球は柔らかいと思うんです。

 さらに眼球の奥にはもっと柔らかい脳がありますよね。

 そして脳を破壊できれば生命活動を終わらせることができます。

 つまり眼球ごと脳を突き刺せる程度の刺突技を身に付ける!

 それが現実的にわたしのできる支配種を殺す方法です」


 いやな論法だな。

 でも理にはかなってる。


 後はその刺す力をどうやって身に付けるかだが……。

 そこはマッキー師匠の手腕の見せどころだな。


「ではアルシーヴちゃんの刺突力を鍛えるために……」


 さあ、どんな特訓を……。


「ゴクリ……」


「今からアタシと殴り合いしよ♪」


 マッキー師匠に向いてないのでは?


「ええ、マ、マッキーさんと殴り合うんですか……?」


「大丈夫、殺さないように手加減するから」


 仮にもチーター相手にすごいこと言ってんな。


「…………」


「まあ、納得言ってないまま修業しても伸びないからハッキリ言うね。

 今アルシーヴちゃんの言った理屈は、理屈それ自体は正しいと思うよ。

 でもまだまだ理想、机上の空論って感じ。

 なのにそれを『現実的に』とか言っちゃう時点で現実見えてないの。

 だから、現実、教えてあげる」


「!!」


 ズォン! と地面を蹴り飛ぶ。

 飛び掛かる。

 拳を突き出したマッキーが、アルシーヴちゃんに迫る!


「! ヘカトンケイルの黙示録!!」


 ガッッギャァァァ~~~~ン!!


 鐘で鐘を打ち付けたような音が響く。

 すごい種撃だ。

 本当にこれが盾と拳がぶつかる音なのか。

 あまりに現実味がない。


「お♪ いいね。やっぱり堅い。

 それによく反応できたね」


「ハァ……ハァ……」


「まあ今のは正面から突っ込んだだけだから、防げて当然だよね。

 じゃ、アゲてくよ」


 マッキーの姿が消えた。

 ……いや、違う。

 ビュンビュンビュン。

 風を切る音。

 これはマッキーの走り回る音だ。

 この間の脚の速い支配種より速い。

 支配種の立場、なし。


 そんな感じでマッキーSUGEEEE描写がダラダラ続くのでカット。

 嫉妬じゃない。


 で、特訓は一段落したから休憩。


「ひぃ……ひぃ……」


 大の字になって原っぱに寝転ぶアルシーヴちゃん。

 疲れてるけど、でもさすがだ。

 なんだかんだでマッキーの攻撃は直接は受けてない。


 でも衝撃による負担は……。

 あれ? 負担による痛みもない感じ?


「どこも痛く……ないですね……」


「そーゆー殴り方したし。ちょっと工夫してね」


 マッキーSUGEEEEE!

 ちくしょう、結局か。ちょっと工夫ってなんだよ。


「でも、最後の一撃は違うよ」


「え……?

 そうなんですか?

 でも、痛み、感じませんよ?」


「それはアルシーヴちゃんが攻撃をベストタイミングで弾いたから。

 言うなればパリィね」


「え、弾いた……?」


「ちゃんと戦いの中でアタシの動きについてこれるようになったの」


「わたし、成長してるんですか……?」


「もちろん。そのための特訓でしょ?」


「はい……! そうでした。

 もっと頑張ります……!」


 アルシーヴちゃんは胸いっぱいに息を吸いこんで言った。

 嬉しそうだった。


「でもごめんね。攻撃方法の特訓がしたいって言ってたのに。

 結局ガードの練習させちゃった。

 だけどね、やっぱりアナタが痛みに耐える姿……見てられなかったから」


「い、いえ、そんな、謝るなんて。

 むしろその、ガードの負担はなくならないものだって、ずっと諦めてたことだったので……。

 こうして修業で負担が減らせるなら、わたしも嬉しいです!」


「そう、ならよかった」



「ところでマッキー。なんで急にアルシーヴちゃんはガードが上達したの?

 まさかそうなるようにちょっと工夫して殴ったとか……?」


「こればっかりはアルシーヴちゃんの才能ね。

 今までそれが開花しなかったのは『恐怖の伴う実戦』しか経験がなかった」


「実戦じゃ成長はしないの?」


「実力の飛躍は『気づく』ことで起きるんだけど、恐怖で思考が狭まってると、この『気づく』が起こりにくいの。

 だから、アタシっていう死の恐怖とは無縁の敵と戦って、その中で色々考えて、たくさん気づけるようになった。

 それだけ」


「スゲーなぁ……マッキー。もう指導者じゃん」


「別に……そんなんじゃ……」


 いや、否定はしてるけど、オレはマジで尊敬してる。

 まるで一度や二度、誰かを一人前に育て上げた人の言葉だ。


 攻撃の練習はさせなかったのも、きっと正解なんだろう。

 後でやっぱりマッキーが正しかった、そう思わさせられるんだろう。

 オレがチーターになるかどうかの話も含めて……。


 なんてのは文脈で考えすぎか。

 マッキーは別に神じゃないんだ。


「さ、練習、再会するわよ」


「はいっ! マッキー師匠!」


 二人はまた修業を始めた。




 修業はひとまず終わって帰り道。

 ヘトヘトになったアルシーヴちゃんをオレは背負っている。


 背負った状態は顔が近いので、小さな声で話しかけた。


「……アルシーヴちゃんは、なんでそんなに頑張るの?」


「んー、チーターだから、ですかね」


「でも、内心ではマッキーにすら頼りたくないって思ってるでしょ?」


「え、あー……。

 気づくんですね。

 まあ、はい。そうです。

 特訓していただいてなんですが、いつかは一人で戦いたいなと……。

 正直、そこが見透かされてガード特訓に変わったんだとも思ってます」


「それで、なんでそんなにこだわるの?

 ……やっぱり、称賛……?」


「……実はわたし、お兄ちゃんも、昔奴隷だったんですよ。

 人間じゃなかったんです。

 でもある日、女神様がやってきて、わたしたちにチートをくれました。

 やっと人間として認められたんです」


 ああ……。

 聞くんじゃなかった……。


「あそこが、わたしの居場所なんです。

 誰にも奪われたくないんです」


 居場所。


「リングさんは奪わないでくださいね」

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