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第五話 アルシーヴちゃんとの休日。

 ブラブラするか。


 ある日、理由もなくそう思った。

 だからブラブラしていた。

 無職だって気まぐれに外に出たくなる日があるのだ。


 つっても金はないし、そもそも人混みは嫌いだ。

 おっと、金はないといっても全くの無銭というわけじゃないぞ。

 ちゃんと昼食分のおこづかいはもらってる。

 でもそんなんじゃ遊べない。

 ギャンブルで増やそうと思ったが、イキってる人たちの雰囲気に気おされて(ビビッて)何もせず店を出る。


 だんだん外出したことを後悔し始めてきた。

 マッキーでも呼べばよかったかな、と思ったところで声をかけられた。


「あのー……リングさん、ですよね?」


 振り返るとそこにいたのは


「あ! あ、え、えーと…確か、アルシーヴさん……?」


 別の地域からやってきたチーター兄妹の妹の方だ。

 名前覚えるの得意じゃないから、ギリギリでひねり出せたのはオレとしては上出来だ。

 自分で自分を褒めたい。


「覚えててくれたんですね! ありがとうございますっ!」


 褒められた。いい子だ。

 話したことないけど嫌いじゃないとは思える。

 それに比べてあのイキった兄の方は……。


「あの……先日は兄が大変失礼なことを……すみませんでした」


 そんなオレの気持ちを察するように目の前の少女は謝った。

 許すことにしよう。

 そんなに怒ってもないし。


「あれ? そういえば今日は一人なんだ」


「あはは、双子だからって毎日一緒にいるわけじゃないですよ。

 息がつまっちゃいますし、別々に行動することもあります。

 ただ、こっちの町にはお友達がいないので、別々の行動となると必然的に一人でブラブラする感じになっちゃうんですが」


 ふむ……。


「じゃあ一緒に遊ぶ?

 町の案内くらいならオレでもできると思うよ?

 この町全部、オレの庭みたいなもんだし(これは嘘)」


「本当ですかっ!?

 嬉しいです! ぜひお願いしますっ!」


「ほい」


 ということで二人で町をブラブラ。

 さてどこに連れてこうか。


「アルシーヴさんが前にいた町はここより大きいんだっけ?」


「えっと、その前にすみません。

 なんだかムズムズしちゃうので、『さん』なしでいいですよ。

 わたしの方が歳下なんですし……」


「そっか。

 でもさすがに呼び捨てもアレだしな。

 アルシーヴちゃん、でいい?」


「はいっ!

 えへへ、まあ『ちゃん』って歳でもないですけど。

 その方がいいです」


 そう言って笑った顔はとてもあどけなくて『ちゃん』が似合っていた。


「じゃあ気を取り直して、行こっか。

 アルシーヴちゃん。


 ……あれ、なんの話してたんだっけ……。

 ああ、元居た町の話か」


「あ、そうでしたね。

 ええと、そうですね……。

 人口は80万人くらいらしいですよ」


「大都市じゃん……。

 じゃあこんな小さい町にあるモノは

 全部ありそうだなぁ」


「要らないモノもいっぱいあるんですよ。

 ゴミとか犯罪とか……。

 あとチーターはわたしたち合わせて5人もいました」


「5人……。

 ん? それはそれで多いな。

 確かチーターは100万人に一人って言われてるから……」


「はい、なのでむしろ支配種の方が足りないくらいで。

 わたしたちの出番はほとんどありませんでした」


 ふーん。

 まあどうせなら活躍したいよな。

 そのおかげでこの町は助かってるわけだし。


 いやしかしそんな大都会の女の子か。

 半端に大きめの商店に連れてっても地元と比べられたら下位互換にしかならんな……。

 だったらちょっと裏の……あそこに行くか。




「わーー!! すごい! 可愛いですっ!

こんなお店、地元にはありませんでしたっ!」


 連れてきたのは雑貨屋。

 ちょっと特殊なのはここの職人が手作りしたものを自分で売ってるってところ。


 アクセサリーからぬいぐるみからなんでもある。

 ポエム集もある。(不人気)

 一点ものしかないし遠方への販路もないから本当にここでしか買えない。

 大都市でも売ってない。


 あとはセンスの問題だけど……。


「うわー! これいいなー! あ、これもエモー!」


 喜んでくれたようで何よりだ。


「どうしよっかなー。

 そうだ、リングさん選んでください!

 わたしにはどれが似合うと思います?」


 と言って差し出したのは数本のネックレスだ。

 どれも高い。

 この決断は重い。できる限りしたくない。

 ということで、


「試着してみたら?」


 自分で見て選べ。


「あ、していいんですね。試着」


「うん、着けてあげる」


 と言って背後に回り込んだ時だった。


「ん……?」


「あ」


 薬品のニオイが鼻を突いた。

 アルシーヴちゃんの体からだった。

 これはたぶん、ケガをした時に塗る薬のニオイだ。

 よく見ると首元にちらりとガーゼのようなものがハミ出ている。

 これは背中から首にかけて覆うタイプの巻き方だ。


「アルシーヴちゃん……、ケガしてる……の?」


「あ……、あー……、バレちゃい……ましたね。

 いやぁ……」


「えっと、どういうこと?

 支配種との戦いが原因……?」


「はい、まあ……」


「でも、あんなすごい盾があるのに?

 光線を受けても傷一つなかったよね……?

 すごい堅さだと思ったけど……」


「あ、はい……。

 堅いは堅いんです。

 絶対に壊れはしないんですが、でもそれだけと言うか」


「それだけ……?

 ……そっか、堅いだけだと衝撃を殺してくれるわけじゃないのか……。

 じゃ、じゃあもしかして当たってなくても衝撃は負担として全部伝わってるとか……?」


「はい、そんな感じで……」


 昔、樽に詰められて外から蹴られまくったことがある。

 直接殴られたわけじゃないけど、その衝撃と負担は相当だった。

 盾で攻撃を受けるということは、これに似ているのかもしれない。

 それを支配種の攻撃相手にやってるのか……?


 だったら、この子が今日まで生きてこられたのは奇跡じゃないのか。

 たまたま前の町にはチーターがたくさんいて、出番がなかったからじゃないのか。


 でもこの町には、この子たちしかチーターがいない。

 だとしたら、この子はもう戦うべきでは……。


「あの、このことはお兄ちゃんには黙っててくれますか?」


「……まさか、隠してるのか!? なんで!?」


「心配かけたくないんです。

 お兄ちゃん、知ったら絶対に一人で戦おうとします」


「でも……」


「お願いします。

 チーターとして支配種と戦うのは、お兄ちゃんがやっとの想いで見つけた生きがいなんです。

 わたしはそれを、邪魔したくないんです」


「…………」


 次の言葉をひねりだそうと思考を巡らせてる時だった。


「アルシーーーヴーーーー!!

 無事かああああ~~~~~!!」


 デカい声だして狭い店に入ってきたのは兄の方。アーカイブだ。


「町の奴らに、無職がアルシーヴを連れまわしてるって聞いてな!

 めっちゃ探したんだぞ!

 大丈夫か!? 何もされてないか!?

 クソっ! こんな狭い店に連れてきやがって! 何が目的だ!」


 人聞き悪いし、店にも悪い。

 色々むかついたので、


「落ち着いてください、お義兄さん……」


「なんだお義兄さんって!! どういうことだ!!

 どういうつもりだ!!

 お前にお義兄さんなんて言われる筋合いはない!!

 うわああああああああ!!!

 クソっ!! うおおおおっ!! クソクソクソ!!」


 まあ、愛情があるんだろうというのはわかる。


「コード発現! ヴァジュラの杖!」


 いや愛情が過剰すぎるだろ。

 ここであの光線はマズイって。


「もうやめてよ! お兄ちゃん!!」


「…………!

 ……すんっ……すん……」


 妹に怒られて、兄はすんすんと泣いた。

 町が消滅する危機は脱したようだ。


「ええと、では失礼しました。

 いいお店も紹介してもらえて、すごく楽しかったです。

 ではまた」


「うん、お元気で」


「それと、あのことはお願いしますね」


「……」


 返事はしなかった。


 店を出て行く二人を見送った。

 結局選び損なったネックレスをオレは一つ、選んで買っておいた。

 昼飯代でどうにかなる安物だった。

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