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第二話 一般兵VS支配種

 さて、チーターのいなくなったこの地域だが、当の支配種にとってそんなのは関係ない。

 当たり前のように、なんの慈悲もなく、今日も町の外れの観測所は支配種の反応を捉えた。


 現れたのは一般的な中型の支配種。


 迎え撃つは国が派遣した軍の騎士や兵士や魔法使いに、町や近くの基地に所属する戦闘部隊。

 他、町に住む貴族の私設部隊や傭兵など様々。


 この地域としてできる限りの兵力を結集させた、正に総力戦という感じだ。


 そんなごった煮大隊の指揮を執るのは我が国の第4皇子。

 平素より王都から派遣されてこの地区を自治している方なので、この人選も納得だ。

 戦争での評価も高く、次期皇帝最有力候補の一人と聞いたことがある。


 一方のオレとマッキーはというと、戦場となる草原には行かず、町の敷地を示す門前で足止めを食らっている。

 これでもチーターの関係者なんだが、肝心のチーターが死んだのでもう関係ないみたいだ。


 そもそもチーター不在のこの状況ではあまりに危険ということで、記者ですら門の外への立ち入りが禁止されている。

 かろうじて遠目には戦いの様子が見えるから、記者たちはそれで記事を書くつもりなんだろうか。


 オレもそんな感じで戦いの行く末を見守ることにする。

 この町の力を信じたい気持ちがあった。




「総員、構え」


 伝声管によって拡散された声がここまで届く。

 これだけの大隊を動かすにはそれなりの設備が必要だ。


「標的の能力、性能は予測不能と出た。

 機動性も不明。

 決して敵を狙わず、各自の正面に狙いを定めよ」


 始まる。


「放て!」


 閃光、地鳴り。

 そして戦士たちの叫びが聞こえる。

 戦いは始まったんだ。


「はぁっ!」「ふっ!「せいっ!」「てやぁっ!!」「いでよ! アークドラゴン!」「くらえっ」「グランブルスピリッツ!!」「チーターさんがいなくとも!」「人間は負けない!」「カラフルウォーク!」「死ねぇ!」「終わりだぁ!!」「アンサンブルストーム!!」「ウィニングパーティ!」「GО・GО」「負けるものか!」「スターライトユニバース!」「支配種ごときに!」「リンクステイル!」「人の歩みは止められない!」「うおおおおおおおおおおおお!!」



 おびただしい攻撃。

 魂そのものと言える技の数々は、勝利への意志となり支配種を襲う。


「攻撃、止め!」


 この星を滅ぼすつもりかと疑うような爆撃が、合図と共に次第に薄れていく。

 自分たちの勝利を確認するために。

 跡形もなくなった支配種の姿を期待して。

 だけど。


 支配種は……何一つ変わらない姿でそこにいた。


 ダメージゼロだった。


「無念……」


 そんな皇子の声が聞こえた。


「行ってくる」


「うん」


 マッキーは静止する兵士たちをペシペシと叩いて眠らせて、走ってった。


 一方の支配種はギラッと光り、地を揺らす大爆発を起こして大隊を殺した。


 直後、燃え盛る大火の上を飛び越える一つの黒点が見えた。

 当然のその正体はついさっき「行ってくる」と飛び出したマッキーだ。

 黒点は支配種に飛びつき、ドスンと一発でっかい穴をあける。

 支配種はその穴を中心にぐじゅぐじゅに崩れ落ちてそのまま死んだ。


 圧勝だった。

 大隊なんかに任せず、最初からこうしていればよかった。

 変な期待から任せて死なせてしまった。

 きっとマッキーも、そう後悔してるんだろう。


「アタシが町の平和を守るから、アンタは戦わなくていいよ」


 そう聞こえた気がした。


 今日は早く寝よう。



 リングが眠りについた夜。

 小高い丘から、町を見下ろす3つの人影があった。

 一つは人ならざる者、女神のもの。

 残りの二つは、まだリングより少し若いくらいの男女。


「いや~、捨てる神あれば拾う神ありってね。

 助かったよ女神。

 俺様の町にはチーターが5人もいたからな。

 すっかり称賛の快楽も忘れちまったところだった。

 でもここなら、いい称賛を浴びることができそうだな。

 そう思うだろ? アルシーヴ」


「うん、そうだね。アーカイブお兄ちゃん」


「私としても助かりましたよ。来ていただけて。

 チーター候補は完全なランダムですからね。

 それ故に地域の偏りもあって……」


「この町にはディーゴージのおっさんの後継になるようなチーターやチーター候補はいなかったのか?」


「ええと……、わからなくて……」


「わからない?」


「あ、候補はいるんですよ。

 でも洗礼をあまり受ける気にならないようなんですって話で」


「じゃあ何がわからないんだ」


「もう一人ね、なんかよくわかんない子がいるんですよ。

 まあこの辺りも後程ゆっくり話しますね」


「要領を得ないな……。お前らしくもねぇ」


「…………」


「ん? アルシーヴ、どうした?」


「うんとね、ディーゴージのおじさん、死んじゃったんだよね」


「ああ、そうだな」


「悲しいなって思って」


「そっか。お前は優しいな」


「それに……ちょっと怖いなって思って」


「怖い?」


「だって、あんなに強かったおじさんが死んじゃったんだよ。

 それってさ、ここにはそんなすごい支配種が出るってことなんですよね、女神さん?」


「え、ええ、まあ……そうと言えばそうですね」


「わたしたち、大丈夫かなぁ……」


「相変わらず自己評価が低いな、妹よ。

 確かに俺様もお前も、レベル50の中堅チーターだ。

 一人ずつならディーゴージのおっさんにまるで歯が立たない。

 だが二人合わせれば50+50で、ディーゴージのおっさんを超える100になるんだ。

 いや、双子のコンビネーションで200にも1万にもなる。

 10倍だぞ10倍。

 だから絶対大丈夫なんだ。安心しろ」


「10倍……、うん、10倍だね。

 ありがとう、お兄ちゃん」


 こうして未熟なチーター、アーカイブ・アルシーヴ兄妹がこの町にやってきた。


 悲惨な結末は目に見えているというのに。

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