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第42話 結界破り


「うわああああああ!?」


「一体何が起きたんだ!?」


 校庭に響き渡る冒険者達の阿鼻叫喚の声。

 気がつくと結界の中にいた冒険者達は全員外にはじき飛ばされていた。


「どうして俺達はここにいる!? はっ、結界はどうなった!?」


 プライズが後ろを振り向くと砦は結界に包まれていた。

 しかしついさっきまで自分達を囲い守ってくれていた結界とはどこか違う。


「おいフィロリーナ、これは一体どういう事だ?」


「プライズさん、あれは私が作った結界とは違います。何者かによってその上から更に強力な結界が張られ、私の結界は打ち砕かれました」


「何だって!? 誰がそんな事を……」


「プライズ、ゴーストがお前を狙っているぞ! 下がれ……うぎゃっ!」


 プライズの目の前で彼を庇おうとして飛び出したリーウンの首が刎ね飛ばされた。


「リーウン! お前俺なんかを庇って……畜生ゴーストめ!」


「プライズ、早く陣形を整えないと!」


「くそっ、皆一箇所に固まれ!」


 プライズの号令で冒険者達はお互いを背にして方円の陣を敷く。


「リーウンがやられた、他の者は無事か?」


「プライズさん、あそこ……」


 トリスが指を差す方向を見ると、首のない二つの死体が転がっていた。

 一人は漆黒のローブを身に付けた魔女、もう一人は古代ローマの剣闘士のような屈強な肉体を持つ戦士だ。


「ヒルダ……ブリリアン……お前達まで……そうだフィロリーナ、もう一度近くに結界を張れないか?」


「……」


 返事がない。


「フィロリーナ、聞いているのか?」


「う……がああああああっ!」


 フィロリーナは突然目を見開き人間とは思えない絶叫を上げたかと思うと、自らの喉を搔きむしり始めた。


 彼女の白いやわ肌は瞬く間に抉れ、その首から胸元にかけて赤く血に染まっていく。


「おいやめろフィロリーナ! 誰かフィロリーナの様子がおかしい、早く治癒魔法を……!」


 しかしプライズの叫び声も空しく、彼女の爪が動脈まで届いた瞬間その血が噴水のように噴き出しフィロリーナは苦悶の表情を浮かべながら事切れた。


 聖女フィロリーナの作りだす結界とシトリーネが使う結界魔法は似て非なる物だ。


 フィロリーナは一度結界を作り出せば放置していても結界はその場所に残り続けるが、シトリーネが作りだす結界は魔法で作りだされた障壁であり、それを維持する為には膨大な魔法力を放出し続ける必要がある。

 勿論その間シトリーネは休む事も眠る事もできない。


 こうしてこの鈍異学園の校庭で俺達を悩ませ続けてきた結界は完全攻略されたのである。




◇◇◇◇




 フィロリーネに憑依してその命を奪う事に成功した俺は悠々とその場を離れる。

 そしてそのまま愛や由美子ちゃん達と合流して自宅へ帰った。



「いやあ想像以上に上手くいったね」


「詩郎君、まさかあんな方法で結界を破るなんて……いつ思いついたのか教えてもらえる?」


 俺は得意満面で愛からの勝利のインタビューに答える。


「千徳村長の屋敷に張られた結界を見て思いついたんだ。あいつら結界の中に入れなかったじゃん。籠目の文様は魔除けになる。つまりその結界に阻まれていたあいつらは俺達にとっては悪魔と同等の存在ってことさ。俺達の手で鈍異学園の校庭を包むように魔除けの結界を張れば、あいつらの結界は破壊されて中の奴らは外に弾き出されるって寸法だな」


「ねえ、私達も役に立ちましたよね?」


「ああ、イリーナもアルルちゃんもラミィも、皆が力を合わせたから成功したんだ」


 俺達は暗闇に紛れて鈍異学園の校庭に侵入すると、学園の用具室が白線引きを取り出して砦を囲うように籠目の文様──六芒星──を描いた。


 かごめかごめの歌を歌ったのは奴らにその動きを悟らせないように撹乱する為だ。


 そして俺、愛、由美子ちゃん、イリーナ、アルル、ラミィの六人はそれぞれ六芒星の頂点に立ち魔を退ける祈りを捧げる。


 その瞬間結界が生成され、俺の思惑通りフィロリーナの作った結界は破壊され、中にいた冒険者達は外に弾き出された。


 後は奴らが混乱しているところを、霊力が続く限り手当たり次第始末していくだけの簡単な作業だ。


 冒険者達は今頃恐怖に怯えているだろう。

 朝になれば俺達の霊力も回復する。

 もう奴らには俺達に抵抗する力はあるまい。

 いくらシトリーネの魔力が膨大とはいえ、怨霊である俺達を害する力はないはずだ。


 このまま生き残った冒険者達を順番に殺していこう。


 俺は両手を上にあげ、「うーん」と身体を伸ばしながら呟いた。


「よし、勝ったな。風呂にでも入って疲れを癒したい気分だよ」



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