表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/50

第38話 最後の仕事


 俺達はシトリーネの一行が呪いによって死んでいく様を少し離れたところから眺めていた。

 俺達の村を滅亡させた元凶が巡り巡って冒険者達に鉄槌を下す。

 それは元々は奴らが受けるはずだった呪いだ。

 思う存分苦しみを味わいながら死んでいけばいい。


 千徳村長があの黒い霧を壺に入れて封印していた事は本人の死後その霊から聞いていたので知っていた。


 村長はあの地獄のような状況を何とか打破する為に黒い霧を調べようと考えた。


 結界の外に出て黒い霧に直接触れると自分も狂気に駆られてしまうので、村長は安全な敷地の中から黒い霧を回収する方法を考えた結果、物干しざおの先に壺をくっつけ、柄杓で水を掬う要領で黒い霧を回収する事を思いついた。


 結界の中に黒い霧が漏れ出したら大変だ。

 壺の中に霧を入れるとすぐさま蓋をして封印を施す。


 後は壺の中から黒い霧を少量ずつ取り出してその成分を分析しようとしたが異世界の魔王の呪いについて突き止められるはずもなかった。

 微量とはいえ調査の為に少しずつ黒い霧に触れる必要があった村長は徐々におかしくなっていった。

 結局原因が分からないまま、大量の黒い霧を壺の中に残してその生涯を終えた。


 村長はその事についても日記に記していたのだが、徐々に正気を失っていくにつれ筆跡も乱れていきシトリーネの翻訳魔法をもってしてもその部分を読み取る事ができなかった。


 結果としてその事が奴らに魔王の呪いをお見舞いする為の決定打になったのは運命的な何かを感じられずにはいられない。



 仲間達の最期を見届けたシトリーネはその屍を炎魔法で火葬し、生き残っている仲間達を探してその場を離れた。




◇◇◇◇




 一方、村中にはまだまだクロードが作り出したゾンビ達の屍が沢山散らばっていた。


 鈍異学園の砦の中に軟禁されていたアルルは村中から漂う腐臭を嗅ぎ取りプライズ達に訴える。

 鈍異学園に陣取っている冒険者達を纏めているプライズは状況からクロードが既に殺された事を確信した。

 プライズはすぐさま仲間達を集め、緊急会議を行う。


「クロードが死んだ今、この砦に籠って仲間達の助けを期待する事は絶望的となった」


「プライズ、私達以外でまだ生き残っている仲間は誰がいると思う?」


「そうだな……さすがにシトリーネさんがゴーストどもに後れを取るとは思えないが、他の連中は絶望的だろうな。なにせSランクの冒険者でも歯が立たない奴らだ」


「そうですね。だったら……」


 フィロリーナは冷たい目でアルルを見ながら言った。


「もうこの娘は必要なさそうですね。もう殺処分しても良いんじゃないかしら?」


「ま、待って下さい、まだシトリーネさんがどこにいるか分からないんですよね? 私なら見つけられます!」


「ふむ……」


 プライズは少し考えてから言った。


「よし、お前にはこの結界から外に出てシトリーネさんを捜索する仕事を与える。逃げようだなんて考えるなよ。ワルド、ライズボーン、お前達はこいつが逃げないようにしっかりと紐を握っておけよ」


 プライズは首輪をアルルに付けリードをワルドに渡す。


「おら、さっさと行くぞアルル」


「痛いっ、そんなに強く引っ張らないで下さい!」


「うるせえ、いつあのゴーストどもが襲ってくるか分からないんだ。今は一分一秒が惜しい」


 ワルドはリードを思いっきり引っ張り無理やりアルルを歩かせる。


 どの道シトリーネと合流できればプライズ達はアルルの嗅覚に頼る必要はなくなる。

 奴らにとってはアルルは使い捨て商品のようなものだ。

 このままアルルを使い潰すつもりなんだろう。

 もし無事にシトリーネを見つけ出し合流できたとしても、もう用済みとして処分されるだろう。


 そんな事はさせない。


 俺達の次のミッションは奴らがシトリーネと合流する前にアルルを救出する事に決まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ