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第34話 大魔法少女の出陣



 図書館の中にあった書物は全て昭和二十一年以前の物である。

 昭和というのはこの場所で使われていた年号だ。

 つまりこの村は昭和二十一年以降に滅びたという事が分かる。


 書物に記されている文字やその内容は【英雄の血脈】のメンバーにとっては未知のものだ。

 彼らは最初はここが異世界ではないかと考えていたが、夜空を眺めれば見覚えのある星座がそこにあるのでこの場所が異世界ではなく自分たちの住んでいる星のどこかという結論に達した。


 ならば元の場所に帰る事ができるはずだ。


 彼らはそれを希望にこの閉ざされた廃村からの脱出方法を模索していた。


 そんな中、ひとりのゾンビがフラフラと図書館に向かってくるのを、周囲の警戒を担当していたハンター職のロンティアが発見した。


「うっ……これは一体どういう事?」


 そのゾンビの見覚えのある容姿にロンティアは顔を引きつらせた。

 ギルドメンバー所属のCランク冒険者、格闘家職のバストラル。

 愛嬌のある顔と真面目な性格から先輩冒険者達からも可愛がられていた男だ。


 ロンティアは急いでシトリーネを呼び判断を仰ぐ。


 シトリーネは変わり果てたバストラルの姿を見てすぐに状況を理解した。


「これはクロードの仕業ね」


「何ですって!? まさか仲間を手に掛けるなんて……」


「違う、バストラルをゾンビにしたのはクロードでしょうけど殺したのは別の者。私達をこの場所に閉じ込めた元凶が別にいるはず。いつまでも私達を迎えに来ない事を考えると、恐らくハムールも既に殺されている」


「そんな……一体誰がそんな酷い事を……」


「パーティー会場に現れたゴーストの仕業と考えるのが妥当なところだけど、一体何のためにこんな事をするのかが分からない。とにかくまずは他の仲間達と合流して戦力を立て直しましょう。……映写魔法レコードピクト!」


 シトリーネがバストラルの死体に手を当て魔力を集中させるとその頭上にこの数日間彼の瞳に映っていたものが映像となり浮かび上がってきた。

 シトリーネが編み出した、彼女しか使う事ができない特殊魔法の一つである。


 鈍異病院内での惨劇やクロードによって仲間の屍がゾンビとなった事、病院から図書館までの道中がはっきりと映し出された。


「そう……彼らは皆あのゴーストに殺されたのね。まさかアビゲルやディアネイラまでもがやられるなんて……」


 既にこの図書館で得られる知識は全て頭に叩き込んだ。

 シトリーネはギルドメンバーを集め鈍異病院への場所の移動を命ずる。


 しかし場所移動の準備をしている時に、道案内役として図書館の入り口に待機させていたバストラルのゾンビが突然動きを止め、ただの屍に戻って地面に崩れ落ちた。


 ゾンビが活動を停止するのは術者が能力を解除をするか、死んだ時だけだ。


 シトリーネは即座にクロードの死を直感した。


「皆さんクロード達との合流は中止します。恐らく彼と行動を共にしていた者は全て殺されています」


「そんな……それじゃあ私達はこれからどうすれば?」


「バストラルの記録の中にまだ倒壊が進んでいない不思議な建築物が見えました。次はそこを調査しましょう」


「不思議な建物ですか?」


「ええ、バストラルは元々その屋敷に向かっていたようですが、何かの力で侵入を阻まれ行き先をこちらに変更したようです。あそこには何か秘密があるはずです」


 シトリーネが次の目的地に選んだのは鈍異村の中央にある村長の屋敷だった。


「今までお疲れ様でした。ゆっくりとおやすみなさい。……プチファイア」


 シトリーネはただの屍に戻ったバストラルに炎魔法を放つとその高熱によりバストラルの身体は一瞬にして気化して霧散した。


「火葬するだけのつもりでしたが力の加減が難しいですね。それでは皆さん出発しましょう」



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