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第32話 共通の敵


 祝勝会も終わり俺達は次のターゲットを始末する為に行動を開始した。


 さっきから村のあちこちから嫌な臭いがするとイリーナが訴えているのはネクロマンサー職であるクロードという男がゾンビを使役しているからだ。


 既に白骨化している村人達の死体がそんなに臭うとは思えない。

 考えられるのは最近死んだばかりの人間。

 つまり、俺が鈍異病院で殺したアビゲルやディアネイラ達の死体をゾンビとして起き上がらせたという事になる。


 仲間達の死体をゾンビにするなど俺達の感性では考えられない事だが、イリーナの話ではクロードはそういう事を平気でする男らしい。


 俺達はイリーナの嗅覚を頼りに手当たり次第村を徘徊しているゾンビに接触し、ラミィの聖なる力で駆除を行った。


 そんな中、何体かのゾンビがプライズやフィロリーナが拠点としている鈍異学園や、【英雄の血脈】のギルドマスターであるシトリーネがいる南の図書館に到達していたのが分かった。


 ゾンビ達を経由して彼らのそれぞれの居場所の情報が共有されてしまった。


 合流される前に元凶であるクロードを始末しようという結論になり、俺達は鈍異病院へと足を運んだ。


 そこで俺達が見たのは筆舌に尽くし難い光景だった。


「ちょっとクロード、あんた人の身体に何やってんのよ!」


 霊体であるディアネイラが悲鳴を上げるが、その声はクロードには届かない。


「ねえねえ、あのおじさん何やってるのかな?」


 俺と愛とイリーナがドン引きしてる横で由美子ちゃんはよく分からないといった顔をしている。

 ラミィはまだ今いち感情が読めない時があるけどきっと俺達と同じ思いだっただろう。


「見ちゃいけません!」


 俺は由美子ちゃんを病院の外に出し再び部屋の中の様子を見る。


 クロードの変態的行動はますますエスカレートしていった。


 自分の身体を弄ばれているのを見ている事しかできないディアネイラは俺達に何とかするよう喚いているが、そもそも俺達にはディアネイラの頼みを聞かなければいけない理由は何処にもない。


 しばらく様子を見ようとしていたが、愛とイリーナが口を出してきた。


「誌郎君、敵とはいえひとりの女としてあの男の行動は見逃せないわ」


「私ディアネイラさんには特に恨みはありませんので、何とかしてあげましょうよ」


「それとも誌郎君はあの続きが見たいの?」


「いや、そんな事は……」


 このまま何もせずに静観していたらあらぬ誤解をされる。

 それに考えてみればどの道クロードを始末するつもりでここに来たんだった。


 俺は霊力を使いアビゲルの死体を操ってクロードを襲わせる事にした。

 どうやらネクロマンサー職のクロードよりも怨霊である俺の方が死者を操る能力は上のようだ。

 同じ死者同士、波長が合うんだろうな。


 アビゲルのゾンビはクロードの命令に従わず、俺の操るままにクロードに襲い掛かった。

 クロードは恐怖に駆られ錯乱するかと思ったが、腐ってもSランクの冒険者だ。

 すぐさまアビゲルの腕を斬り落とし危機を脱する。


 しかしこれで終わらせるはずもなく、続けて愛がディアネイラの死体を操り背後からクロードを襲わせる。


「くそっ、お前は死んでもまだ俺に楯突くのか」


 クロードは再びナイフを手にディアネイラの腕を斬ろうとするが、背後にいる相手を思うように斬る事ができない。


 クロードがまごまごしている間に先程斬り落とされたアビゲルの右腕がうねうねと動き出して飛び上がりアビゲルの口を抉じ開けてその中に侵入する。


「うげええええええ!!」


 クロードの口の中に侵入したアビゲルの右腕はそのまま気道を進み、肺に達したところで釣り針のように立てた爪を引っ掛けて自身を固定する。


「がはっ……」


 腕を吐き出せずに呼吸ができなくなったクロードはのた打ち回りながらやがて窒息死をした。


「ふう、危ないところだったわ」


 クロードの最期を見届けたディアネイラは心底安堵した表情で「グッジョブ」と言わんばかりに俺達に向けて親指を立てる。


 本当にどっちの味方なんだこの人は。


 そしてクロードが死亡した事で村中を徘徊していたゾンビ達は糸が切れたマリオネットのように動かなくなった。


 しかしそれによってクロードの死が生き残った他の冒険者達の知るところとなり、ついにギルドマスターである魔法少女シトリーネが積極的に行動を開始する事となった。



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