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第29話 黄泉へと続く穴

 その洞窟は明らかに人工的に作られたものだった。

 内部は木材で補強されているが、長い年月で所々落盤しているのが外からでも確認できる。


「おいイリーナ、ハムール達はどうして態々こんな穴の中に入っていったんだ?」


「入り口に貴重な鉱石が落ちていたんです。恐らくここは鉱脈だと皆さんが言っていました」


 そう言ってイリーナは懐から美しく輝く塊を取り出した。


 黄金だ。


 この異世界でも黄金には相当の価値がある。

 黄金には魔除けの力もあり武具の素材としても優秀だ。

 かつて黄金卿と呼ばれた英雄イグザクトは黄金で作られた鎧を全身に纏い、世界を恐怖に陥れていた悪魔の王バエールを打ち破ったという。


「なるほどここは金山か……しかし武器の素材集めもいいが、この非常時にやる事じゃないだろう」


「アルテマさん、そんな事より早くあの人達を助けに行って下さい」


「ああそうだったな。よし、お前達行くぞ!」


「おう!」


 聖騎士であるアルテマは敵の攻撃から味方を守るスキルを多く持っている、所謂タンク役だ。

 しかし今回はイリーナがいるので盾の代わりにもなる彼女を先行させ自らはその後に続く。


 イリーナは鼻をクンクンさせながらアルテマ達をダンジョンの奥へと誘導する。


「随分深い所まで潜ってきたな。ハムール達はまだ先なのか?」


「私達が悪魔に襲われたのはこの辺りです。幸い私はダンジョンの出口の方へ逃げられましたが、ハムールさん達は更に奥へと逃げたようです」


「お前は召喚獣の分際で主人を見捨てて自分一人で逃げたのか。自分が主人の身代わりになって死ぬぐらいの忠誠心を見せろよ。本当に使えねえな」


「……ごめんなさい」


 イリーナは理不尽な罵倒にも口答えをする事もなく素直に冒険者達を更に奥へと案内する。


 そして少し広い空間に辿り着いた時だった。

 洞窟の中では不自然としか思えない突風が吹き、アルテマ達の持っている松明の灯を消し去った。


 周囲が暗闇に包まれ、冒険者達のどよめきの声だけが響き渡る。


「くっ、何だってんだ!? 悪魔とやらの襲撃か? おい、誰か早く灯りをつけてくれ」


「おう、少し待てアルテマ……うわっ!?」


 ゴゴゴゴ……


 暗闇の中、地面が激しく揺れた。


「こんな時に地震か!? お前達、こっちに集まれ! ……シールドキューブ!」


 アルテマは生き埋めになっては敵わないと仲間達を一ヶ所に集めシールド魔法の呪文を詠唱すると彼らを包み込むように透明な四角い防御障壁が現れた。

 大地の揺れと共に天井から小石混じりの砂が舞い落ちたが、幸いダンジョン内が完全に崩落するには至らなかった。


「もう大丈夫そうだな」


 揺れが収まるとアルテマは防御障壁を解き、改めて松明に火を灯させ、仲間の無事を確認する為に点呼をとる。


「皆無事か? ……トライドス、レイナ、ガルシア、シルヴァン、マリア……よし全員いるな」


「待てアルテマ、イリーナがいないぞ」


「何だと? あのガキ、どさくさに紛れて逃げやがったか?」


「いや、逆だ。あのグズ、逃げ遅れて落盤に巻き込まれやがったんだ」


 トライドスが指を差す先は天井が崩れ落ちており、その土砂の中に埋もれるようにイリーナの服の切れ端が覗いているのが見えた。


「あいつの種族は鼻が良い癖に運動神経が鈍い奴らばかりだったからな。まっ、そのおかげで簡単に狩れたんだけどな」


 トライドスは以前仲間のハンター達と共にイリーナの世界に獣人狩りに出かけた時の事を思い出す。


「ライズバーン、ワルド、ロンティア……皆無事だろうか。元の場所に帰れたらまた皆で楽しく狩りに行きたいものだな」


「そうだな、その時は俺も誘ってくれ」


「ああ約束だ。絶対にこんな所から生きて帰ろうぜ。その為にもまずはハムールさんの救助だな」


 アルテマ達は決意を新たにダンジョンの奥へ足を進める。


 しかし彼らはこのダンジョン内に徐々に充満していく呪われた瘴気の存在に気付く事はなかった。





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