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第26話 死者達の村


 鈍異村の南西に位置する墓地にはネクロマンサー職のクロードが率いる冒険者のグループが集まっていた。


 七十五年間放置され荒れ果てた墓地はそれだけで不気味な景観を見せていた。


 いつ死者が起き上がってきてもおかしくない異様な雰囲気。

 本来ならばこんな場所を拠点にしようとする者はいない。


「クロードさん、ハムールさん達もまだ迎えに来ないしそろそろこんな所から離れましょうよ」


「こんな所にいつまでもいたら気が滅入って敵わないですよ」


 Aランクの冒険者である聖騎士アルテマとハンター職のトライドスの二人もこの陰惨な雰囲気に耐えられなくなって拠点の移動を進言する。

 全ては現在彼らのリーダーとなっているSランクの冒険者クロードひとりの意向だった。


「何を言ってるんだお前達。こんなに素敵な光景はないだろう。見ろ、そこら中が死体だらけ、よりどりみどりだ」


「クロードさん、ちょっと何言ってるのか分からないです」


「いいかお前ら。死体というものは良いものだ。文句ばかりのお前達と違って素直に俺の言う事を聞いてくれるからな」


 そう言ってクロードが髑髏の装飾が施された不気味な杖を振ると、地面から次々と骸骨が這い出てきてクロードの前に跪いた。


 その気味が悪い光景に冒険者達は一様に顔を顰める。

 クロードはそんな彼らの気持ちなど意に介さずに涼しい顔で言った。


「しかしそろそろ食料も残り少なくなった事だし俺達も動くとするか。ここが墓地である以上労働力の確保は容易だからな。よし、行けお前達」


 クロードの命令で骸骨達はカタカタと音を立てながら四方に散った。


「ふふふ、可愛い奴らよ。それじゃああいつらが戻ってくるのを待つとするか」


 クロードはそう言って大きく欠伸をすると墓地の真ん中にシートを敷き、その上で横になった。


「クロードさん、俺達は一刻も早くここから離れたいんですけど……」


「ダメだトライドス、クロードさんはもう寝てる。……仕方ない俺達は俺達で他の仲間を探そう」


 アルテマとトライドスは半数の冒険者を引き連れて周囲の探索に向かった。

 クロードを一人で置いて行く訳にもいかないので、残りの半数はクロードの護衛を兼ねて墓地で待機させる。


「じゃあ俺達は周囲を探索してくる。日が暮れるまでには戻ってくるからクロードさんが目を覚ましたらそう伝えてくれ」


「分かりましたアルテマさん、トライドスさん。早く帰ってきてくださいよ」


「ああ、戻ったら交代だ」


 アルテマ達が荒れ果てた道を進んでいくと所々に打ち捨てられたままの白骨死体が散乱していた。

 どの白骨も酷く欠損しており、ただの行き倒れの類ではない事が一目で分かる。


「本当に酷い有様だ。かつてこの場所で戦争でもあったのかな? これじゃあ墓地と何も変わらない」


「クロードさんが見たら喜びそうだな。あの人死体しか友達がいないから」


「そういえば知ってるか? クロードさんの屋敷で働いている執事やメイドは全員ゾンビなんだぜ」


「マジかよ。そのうちゾンビの嫁まで貰いそうだな」


「ははは、クロードさんならあり得る。この前異世界にひと狩り行ってきたんだけどよ、そこで捕まえた大魔導士をさっさと殺して俺に寄こせってゴネてハムールさんと喧嘩してた」


「いや、殺す必要ないだろそれ」


「結局生きてる人間を信じてないんだよあの人は。多分俺達の事もな」


「もう自分がゾンビになっちゃえばいいのにな」


「お、何か見えてきたぞ」


 墓地から東へ一時間程進んだ頃、アルテマ達の目の前に大きな建物が現れた。


「入り口に看板があるぞ。なんて書いてあるんだ?」


 アルテマは仲間の魔法使いに翻訳魔法を掛けさせたところ、そこには鈍異病院と書いてあるのが分かった。


「この建物は医療施設の跡か」


「おい、あれを見てみろ」


 トライドスが入り口の前に人のものらしき足跡を見つけた。


「最近人の出入りがあったようだ。仲間達かもしれない。中に入ってみよう」



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― 新着の感想 ―
[良い点] イリーナちゃん、ラミィちゃんと仲間が増えてまた新しいシチュエーションを見ることが出来そうでとても楽しみです。 [気になる点] 村の住民を使役するなんて、また3人の神経を逆なでするようなこと…
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