表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/50

第19話 病院探索


 セイガル達が死亡した後、残った冒険者達は亀のように結界の中に引き籠った。

 完全に籠城の構えだ。


 このまま砦の中に閉じ込めて兵糧攻めに移行しても良いが、村の中にはまだいくつかの冒険者のグループが存在している。


 こいつらだけに構ってはいられない。


 それにあの砦の中にいるアルルも救出しなければいけない。


 夜が明ける頃俺達は一旦鈍異学園を離れ、別の冒険者グループを襲撃する事にした。




◇◇◇◇




 鈍異村の南東にある病院跡を拠点にして行動しているのは僧侶ディアネイラが率いる冒険者グループだ。

 苦しい時の神頼みとはどの世界でも共通であり、ここにいる冒険者達は皆神に仕える者であるディアネイラを頼りにして彼女の言う事にはよく従っている。


 また、彼女の世界では教会は病院の役割も兼ねている。

 医学の知識にも長けているディアネイラにとって、この鈍異病院の内部は興味深い物で溢れかえっていた。


「この棚の中に並んでいるのは何の薬かしら? アビゲル、お願い」


「おうよ。……トランスレーション!」


 魔法使いアビゲルが翻訳魔法を唱えると、薬瓶に貼られたラベルの上に光り輝く文字が浮かび上がった。


「ええとなになに……これは黒死病という疫病のワクチンのようね。成分は……」


「これでよく分かるなディアネイラ。文字は読めても俺にはさっぱりだ」


「どうやらこの場所では魔法技術は発展しなかったようですが代わりに薬物による病気の治療技術が進んでいたようですね。病に侵される前に薬物によって予防を行う。私達の国にはなかった考えです。この知識を持ちかえれば治癒魔法が使えない者でも疫病の被害を食い止めることができるかもしれません。何としてもこの知識を持ち帰らなければ……」


 アビゲルは目を輝かせながら棚を漁っているディアネイラを冷めた目で見ながら溜息をついて言った。


「やれやれ、こんな時にいつもの悪い癖が出たか。ディアネイラ、勉強熱心なのはいい事だが、まずは俺達無事に帰れなければ意味がないぞ。本当にここはいったいどこなんだろう」


「アビゲル、神様は決して信じる者をお見捨てになる事はありません。今できる事をしましょう」


「しかしあれからもう二日も経つのに一向にハムール達が迎えに来ない。ひょっとして奴に何かあったのでは?」


「もう一日待ってまだ迎えが来なければ捜索隊を組織しましょう。私はこの施設の調査を続けます」


 ディアネイラはそう言うと病院内の部屋に戻り再び棚を漁り始める。


「この絵を見て下さい。まるで人間の身体を透過して内部の様子を描きだしたような……この黒い影の部分が病巣という事ですね。これだけ精巧な絵をどうやって描いたんでしょうか……」


「ああなったらディアネイラは梃子でも動かないからな。仕方ない、今の内に捜索隊の準備を進めるか」



 アビゲルは後輩の冒険者達を集め、明日の捜索について指示を出す。


「いいかお前達、ディアネイラは当てにできん。明日までにハムール達が迎えに来なければグループを二つに分けてこの施設の付近の調査を行う」


「はい、アビゲルさん」


「アビゲル、ちょっと来てくれない?」


「うぐ……またかディアネイラ。今は取り込み中だぞ」


「地下室への入り口を見つけました。調べてみましょう」


「地下室だって? ……そうか、ならば調べてみる必要がありそうだな」


 ディアネイラはアビゲルと数人の冒険者を連れて地下室に足を踏み入れた。


「うっ……酷い臭いですね……」


 奥に進むにつれて強烈な腐敗臭が漂う。

 思わずディアネイラも顔をしかめて鼻に布を当てた。


「はいはい、俺の出番だな。……ファブリンス!」


 冒険者達はアビゲルが消臭魔法の呪文を詠唱する事で何とか奥に進む事ができた。

 やがて彼らの目の前に重々しい鋼鉄の扉が現れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ