笑顔
僕は笑顔が好きだ。
笑顔を見ているとこっちまで楽しくなってくる。
僕はみんなが笑える世界にあこがれた。
僕は考えた。
僕の周りの人が笑っていられることを。
どうすれ笑顔があふれるのか。
答えはほどなくして出た。
僕が面白くあればいいのだ!
うっかり失礼なことを言うことすら笑いに変えてしまえばいいのだ!
それで僕の理想はきっと完成する。
ある日、僕が落ち葉で盛大に転ぶと周りの人が心配しつつも笑った。
とても芸術的なこけっぷりだった。
素晴らしい!
痛々しい光景を見せたというのにそれを凌駕する笑いを生み出せた。
これは僕の理想の世界への第一歩だ。
ある時、子供たちたちが喧嘩をしていた。
揚げ足の取り合いをしていた。
「揚げ足を取るなよ!」
「そっちこそ!」
そんな怒号が聞こえてきた。
これはいけない。
僕の理想に反する。
だから僕はその少年たちに尋ねた。
「揚げ足とはどんな揚げ物何だい?」
彼らは呆けたような顔をしていた。
しかし、一拍置いてはじけるように笑い始めた。
「兄ちゃん、揚げ足は食べ物じゃないよ!」
「そうだよ、食べられないよ!」
彼らは仲良く僕のことを笑った。
これでいい!
怒りよりも笑いのほうがいい。
僕が馬鹿な発言をするだけでこんなにも多くの笑顔が生まれた。
素晴らしい!
更に僕の理想の世界が広がる。
僕は人々を笑顔にし続けた。
より多くの人を笑顔にしようとインターネット配信も始めた。
テレビにも出た。
みんな僕を見て笑ってくれた。
僕がみんなを笑わせている!
僕は理想をかなえた!
ある日突然友人に、こんな質問を受けた。
「あんなに馬鹿にされて悔しくないのか?」と。
馬鹿にされている?
悔しい?
なんのことを言っているんだ?
みんな僕を見て笑ってくれているだけだぞ?
僕の願いをみんながかなえてくれているだけだぞ?
なんのことだかわからない
友にそう告げた。
友は質問をした。
「お前、最近その笑った顔以外をしたことがあるのか?」と。
僕は自信をもって答えた!
「もちろんいつも笑っているさ!」と。
友は質問をした。
「けがをした時も笑っていたのか?」
「もちろん!みんなが笑ってくれたから!」
笑い飛ばすようにそう答えた。
友は質問をした。
「お前は最近大きく心を動かされたことはあるか?」
「…ッ!」
また笑い飛ばそうとして僕は…
友の真剣なまなざしを見て、僕は突然こたえられなくなった。
友は返事を待たずに話しかけてきた。
「お前は今の自分の感情が分かるか?」
ナンノコトダカワカラナイ
僕は笑顔に囲まれて楽しい。ハズダ
「お前は本当に笑えているのか?」
やめてくれ。
僕は笑顔に囲まれて最高に楽しいんだ。
そうでなくてはならない。
僕は笑っていなければならないのだ。
僕の理想は…
僕の周りの全員が笑っていることなのだから。
僕が笑っていないなんてありえない。
だから友よ、君にも笑っていてほしい。
そして願わくば僕の笑顔の秘密を黙っていてほしい。
よろしければ評価と感想をお願いします。
作者が新たな考察をする活力になります。




