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美しきあの世界に憧れし者の生き様

僕の生きる世界には黒い感情が渦巻いている。


初めて見るこの世界は輝かしく僕の目に映った。

人々は和気藹々としており、人々の目は希望に満ち溢れているように見えた。

僕はそんなこの世界にあこがれたからこそこの世界に生まれることが出来たのかもしれない。

優しい友と出会い、優しい家族に包まれ、良い競争相手である強敵と出会い、人生を共にするパートナーと出会う。

誰かを傷つける人がいればそれを守るものがいて、誰かを傷つけた人は自分の罪を知りその罪をあがなうことが出来るそんな美しい世界。

誰かのために働き誰かに愛される。

僕はそんな世界にあこがれてこの世界に生を受けた。


人々の持つ頑丈は清く美しい物であり、誰の魂にも等しく価値があり、誰もがそれを尊重して生きていけるそんな美しい世界……

そんな世界は生まれる前に見ていた幻想であったようだ。


今僕が見えるこの世界は黒い欲望が渦巻き、誰かを傷つけることで快楽を得て、誰かを蹴落としてのし上がるそんな世界。

僕が見たかった世界はそんなものではない。

想像力湧き立つ欲望にあふれ、誰かに喜ばれることで快楽を得て、誰かと切磋琢磨することでのし上がるそんな世界。

僕の願ったそんな世界を返して欲しい。


なぜ人々は自分の意見を言う時に誰かをけなさなければならないのか?

なぜ人々は笑うために誰かを傷つけなければならないのか?

なぜ人々は自分の地位を守るために誰かを殺すのだろうか?

なぜ人々は……

なぜ……




なゼ僕ハ憧レた世界に生マれルことガ出来なカッたのダ!


ナゼダ!オレハアノウツクシキセカイニウマレタハズダ。


まさか俺は騙されたのか?いやそんなはずはない。

ならば俺はあの美しい世界に生まれることが出来なかったのか?

俺があの美しい世界に生まれることが出来なかったってことは、俺はあの美しい世界に生まれる資格がなかったということか?

何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!

何故だ!

何故憧れた世界に拒絶されなければならないのだ!


まさか世界は俺がこの世に生まれる前から俺にはあの美しい世界に生まれる資格がないと判断し、俺にはこの世界が合うと判断したということなのか?

つまり俺はこの世界に生まれるべき黒い感情を持った人間だというのか?


そうか……


そう思われていたのだな……


ならば俺はもう頑張る必要がないんだな。

俺は憧れた世界に見合う人間になるために頑張ってきた。

なるべく清廉潔白に、できる限り人に優しく、誰も傷つけないように、誰かを守るために、誰かを幸せにしようと、誰かと切磋琢磨しようと、誰かを無駄に蹴落とさないように、誰かを想って、誰かを愛し、自分には息を吸うようにできることは何一つ無かったけど、憧れた世界の為ならと死力をとして努力してきた。

でも、あの世界に生まれることが出来ていなかったのであればもういい。

俺は俺らしく、俺はこの世界の住人らしく、黒い欲望にまみれ、誰かを傷つけることで快楽を得て、すべての人間を蹴落とすことで自分を幸せにしよう……

だって俺はそういう世界に生まれたんだから……


俺を騙したこの世界に、俺を騙してこの世界に生まれさせた奴に、俺は全身全霊で喧嘩を売ってやろう!

俺はお前らが俺を生まれさせたこの世界をめちゃくちゃにしてやる。

お前らが大事に作ってきたこの世界たちを全部壊して台無しにしてやる。

どうせ俺はそんな世界に選ばれるような人間だ。


もし二度目の人生というものがあったとしてもどうせ俺はまたこの世界に舞い戻る羽目になるのだろう。

ならば俺を生まれさせるこの世界を壊してしまえば俺はもう二度とこの世界に生まれることはないだろう。

幾度となく何度も俺をこんなクソみてぇな世界に生まれ変わらせようものなら俺はいくらでもクソみてぇな世界を壊してやる。

そしていつかすべてのクソみてぇな世界を破壊し終わったとき、ようやく俺はあの美しい世界に生まれることが出来るだろう。


いつまでかかるは分からない。

でも俺はあの美しい世界にあこがれたんだ。

覚悟はできた、俺はあの世界へ生まれるためなら何でもする。




したはずだった……

俺にはその度胸がないわけじゃない。

だって今まで我慢してきたことをすべてやればいいだけなのだから。

俺は覚悟したはずだった。

でもただの一つも実行することが出来なかった。

だってあの憧れた世界の住人は誰一人そんなことをしようとしないのだから。


俺はあの世界を見た時の感動を忘れることが出来ない。

俺はあの世界に生まれたいと目がった想いを忘れることが出来ない。

俺はあの世界にふさわしい人間になると決めた覚悟を塗り替えることが出来ない。

僕はあの世界にふさわしい人間でありたいと願った日々を忘れない。

僕はあの世界に生まれたことに確かな喜びを感じていた。


僕は本当にあの美しい世界にうまれていないのか?

僕は本当に悪しき世界の住人であるのか?

僕は本当に騙されているのだろうか?


もう僕にはわからない。

誰が正しくて、誰が間違っていて、誰が導いてくれて、誰が騙しているのか、もう何もわからない。


どうせ何もわからないのであれば僕は憧れたあの美しい世界の住人としてふさわし人間になろう。

もう場所なんて関係ない。

僕は僕の憧れに忠実に生きよう。

だって僕の憧れはあの世界であるのだから。


著:生まれた世界すら分らぬ者


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