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呪文

呪文という言葉の甘美なる響き、人は呪文の詠唱一つ一つに想いを乗せ、まるで歌のように詠唱する。

選ばれし言葉はイメージを人にしっかりと植え付け、今から何が起こるのかを相手に刻み付けることが出来る。

その演出は人々を魅了し、これから起こる事象に大きな期待を抱く。

故に、物語のクライマックスで呪文を詠唱するのは素晴らしい行為なのだ。


実際に何かをする時にそんな悠長なことをしていたらそのうちに何かをされてしまうが、そこは物語だ、見栄えを気にするのが順当というものだろう。

例えば儀式的なものであるのであれば、詠唱をすればそれっぽく見えるがゆえに気分が上がることだろう。


なぜわざわざ呪文を詠唱するのかと聞かれれば、それはカッコいいからだと答えられるように、呪文はそう、どんな場面に使用してもカッコよく見えなければならない。

呪文なんて本質的には必要がないことが多いはずだ。

誰かの怪我を治すことに呪文は必要ないだろう。

誰かを気付付けることに呪文は必要ないだろう。

何かを作り出すのに呪文は必要ないだろう。

何かを動かくために呪文は必要ないだろう。

でも、誰かの心を動かすのに呪文は必要なのだ。


何かをするために呪文が必要なのではない。

呪文を唱えることによって自分の心を鼓舞しているだけに過ぎない。

なぜ呪文は心躍るような言葉をわざわざ選ぶのだろうか?

なぜ危害を加えるような行為をする際に呪文を唱えるのか?

それはひとえに自分の心に今から自分はこういった行為をするのだと認識させ、それを実行するための活力をわかせているのだ。


よく物語には禁呪なんてものが存在するが、それらの詠唱がなぜあんなにも禍々しいのか?

その答えは簡単だ。

自分が今からとてもひどいことをしようとしているからその覚悟を決まるためだ。

自分が何を成そうとしているのか、それを今一度自分に確認しているのである。


呪文なんて言葉は呪いという字が使われているが、呪いの本質なんて悪い願いでしかない。

つまりただの強い言霊。

人々を幸せにしたいという純粋な願いから生まれたものが祈りであるのならば、呪文なんてものは春水な願いから生まれたものなんて言えないだろう。

だって呪文は人々の心を魅了するためにある呪われた言葉であるからだ。

人々の心をつかみ離さないそんな呪い。


僕の心はそんな素敵な呪文の呪いにかかっている。


著:呪文に魅了されし者


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