6話
-水曜日-
みんなの視線を気にしながら、
学校から10分くらい離れたコンビニが、さなえとの待ち合わせ場所。
週刊誌から逃げながら密会する芸能人ってこんな気持ちなんかなと
思いながら、さなえを見つけた。
「さなえ!おつ!」
「こよみもお疲れ」
「ネタ作りは順調?」
「う~ん、ぼちぼちでんなぁ」
あたし達の会話の入り方はいつもこんな感じ。
学校では話さんし、毎週水曜日のこの時間だけ話すから
帰り道はあっという間。
「てか今更やけど、こよみボケでいいよな?」
「ボケ以外無理かもしらん。」
「そやな、私ツッコミ好きやし。
見た目的にもメガネがだいたいツッコミやしな」
「それは偏見かも知らんけど、言えてる」
本人は気付いてないかも知らんけど、さなえはなかなか美人やと思う。
メガネ取ったらかなり変わると思う。
「さなえの親はさー、さなえがお笑いしたいって知ってんの?」
「知らん知らん。言わなあかんな~思いながら、気がついたら高3なってたわ
やっぱお笑いしたいって伝えるのは勇気がいるしな」
「ほ~ん。卒業したらどうすんの?」
「まず反対するであろう親を説得して、卒業したら、お笑い養成所入る。
そこで相方探すつもり。本心はこよみになってもらいたいけどな」
芸人になるなんて嫌なはずやのに
包み隠さず話してくれたさなえの言葉に
思わずニヤけてしまう。
「ふっ、気持ちだけ受け取っとくわ~、ええなぁやりたいことあるって」
「こよみ進路決まってないん?」
「うん、やりたいことも、なりたいものもない」
「高3やのにやばいな」
それはあたしが一番よー分かってるねんけどな。
今が楽しくてやりたい事なんか思いつかん。
「こよみはそれでいいん?」
「えっ?」
「もし、こよみが本気でお笑いやりたいんやったらいつでも言うて」
「…それだけはないかも…」
「ないんかい」
こんなやりとり出来る子なかなかおらんもんな
友達とはちょっと違うけど、相方ってこういうことなんかな。
「…漫才するの楽しみなってきたな」
「え?今なんて?」
「は?あたしなんて言うた?」
「漫才するの楽しみ言うてたで」
「んなアホな」
「まじやから」
自分でもそんな言葉が出るなんてビックリした。
もしかしたら、さなえ以上に漫才を成功させたいと思ってるんかもしらん。