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笑殺~女芸人ってのは~  作者: 新口華
5/6

5話

あたし達は本番の文化祭までルールを作った。


①毎週水曜日は一緒に帰る

②ネタ作りしたら、その都度ネタ合わせ

③今日からお互い、下の名前で呼ぶ


「じゃ、また明日。こよみ」

「ばいばい、さなえ…って何か恥ずいな、これ。」

「いや、付き合いたてかよ」

「あはは!今の漫才ぽかった」

「こんなん序の口や」



* * *



寝る前に今日の事を思い返して、ふと思った。


(あたし完全に食わず嫌いやな。

あんな真面目ちゃんがお笑い芸人になりたいなんて、

さなえと話さな絶対分からんかったなぁ。)


あんな熱心に相方にしたいとお願いされたし、

少しでも期待に応えようと、自分でも不思議なくらい燃えてた。


「は?もう一回言うて」

「文化祭で漫才するから」

「誰と?」

「同じクラスの飯島さん」

「え?まじで言うてる?てか飯島って確かめちゃくちゃ頭ええよな?」

「そうなん?やっぱ見た目通りなのね」


予鈴前とお昼休み、廊下で立ち話するのが

最近あたし達のお決まり。

昨日の事をこっちゃんに報告すると

予想通り食いついてくる。


「まじでビックリやねんけど」

「うん、あたしが一番ビックリしてんねんけどな」

「頼むからスベってくれ。大笑いしたるから」

「なんでやねん。名前書いたうちわ持って応援せんかい」

「いや、アイドルちゃうねんから。冷めたほっそい目で見たんねん」

「元から細いのに周りから寝てるって勘違いされるやん」

「なにおぅ?!」


いつものノリでこっちゃんとしばき合ってたら

前からさなえが歩いてきた。


「お。相方登場」

「さなえ!おはよ!」


さなえはビックリした顔をして、

無言でお辞儀をして、そのまま教室に入って行った。


「なに今の?お前らほんまにコンビ組んだ?」

「う~ん、どうしたんやろ…」


(昨日楽しく話した子とは同じと思えんくらいの態度やった。

あたし何かしたっけ。)


とか、考えてるとあたしに手紙が回ってきた。

先生にバレないように静かに紙を開いた。


”さっきはごめん。

昨日言うの忘れてたけど

学校では出来るだけ話しかけんといて。

陰キャの私と、陽キャラの佐藤こよみが

文化祭で漫才するって言うギャップでびっくりさせて

笑いに持って行こうっていう作戦やから。

漫才することも当日まで内緒にして。

よろしく。

さなえ”


なるほど…あんたの本気がうかがえるわ。

あたしは静かにノートの端をちぎって、先生の眼を盗みながらペンを走らせた。


”無駄に達筆やな”


この7文字だけでかでかと書いて

さなえに渡してと隣の子に、お願いした。

少ししてさなえに視線を向けると

必死に笑いを堪えるために、肩が震わせているのが分かった。


(うわ、さなえわろてる!気持ちええ!)


やっぱりささいな事でも

人を笑わせるのって気持ちええな。

こういう気持ちを伝えたら、さなえは喜んでくれるやろか。

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