ハンバーガーと金髪少女
はむはむ。ごくん。
「このハンバーガーという食べ物はとても美味しいですわ‼ こんなおいしい食べ物今まで食べた事なかったですわ‼」
「そ、そっか……」
僕たちはあれから小腹がすいたので、ゲームセンターの近くにあるマク〇ナルドに来ていた。星野さんは案の定ハンバーガーを知らず、どういった食べ物か教えてあげると目を輝かせながら注文し、今はとても美味しそうに食べている。
ただ彼女の注文した数が少々予想外であり、彼女は何とハンバーガーを十個注文していたのだ。男だってその量を食べるのは至難の業なのに、星野さんにとっては全く苦ではなかったのか、今は残り二つしかなかった。
「どうかなされたのですか?」
「あ、うん。星野さんってよく食べるなぁ……って思って……」
「そうですか? 私としてはこれぐらい普通ですわ」
「いやいや。その量は普通じゃないよ?」
「そう……なのですか? でもお父様は普通だって言ってくれますよ?」
きっと星野さんのお父さんは彼女の食べる量が異常だと知っていながらも、彼女を傷つけないようにその様な事を言ったのであろう。その対応は紳士そのもので、僕も見習いたいと思う。
それに一杯食べる女子というのはマイナスにもなる。僕としては、一杯食べて、美味しそうな表情を浮かべてくれる女子は大好きなので、気にしないが気にする人は気にするようで、僕はいまいちその感性を理解できそうにない。
「星野さんって何か運動とかしているの?
「いえ。運動は特にしていませんよ? 部活も入っていませんし、学校の通学も車です」
「あはは……」
星野さんの体形はとても痩せているし、これだけの量を普通に平らげる彼女だ。太っても何ら不思議ではない。にもかかわらず星野さんは全く太っていない。むしろ痩せており、モデル体型と言っても全く差し支えない。
咲夜や先輩だって体形の事を気にして食事の量を制限しているのに、彼女はなんらしていないときたもんだ。それは女子にとって嫉妬の対象になるだろう。
「あ……」
「どうかしたんですか……?」
「あ、えと……服にピクルスが……」
星野さんの溢したケチャップは彼女の胸のあたりについていた。星野さんの胸のサイズは咲夜ほどはないにしろ充分大きい。少なくとも先輩よりはある。そんな彼女の胸の上にピクルスは絶妙な加減で乗っており、妙にエロい。
それによく見ると顔にもケチャップをつけており、それだけで彼女が食事に本当に夢中になっていたことがよく分かる。
「はう……す、すみません。つい夢中になって……」
「いや。いいよそれと顔にケチャップついているよ」
「はうううう……すみません……」
「こういう時はありがとうございますと言って欲しいかな」
僕はハンカチで星野さんの顔についた汚れを拭ってやる。
「はい。取れた」
「あ、ありがとうございます……」
「はい。よく言えました。偉い、偉い」
「うう……金剛さん。その……私の事子供っぽいって思いましたよね……?」
「うん。そうだね。星野さんは少し子供っぽいと思ったよ」
「うう……やっぱり……」
「でも僕としてはそっちの方が嬉しいかな」
楽しいことを楽しい。嬉しいことは嬉しい。好きな物は好き。そう素直に表すことのできることはとても大事なことで、僕は心の内にそう言った感情を隠している人より素直に表してくれる人の方が好きだ。
「そ、そうですか……?」
「そうなの。それに僕としては今の子供っぽい星野さんの事とても魅力的に思うし、そんな星野さんの方が僕は好きだよ」
勿論好きというのは友達としてだが。
「す……!?」
「星野さん……?」
「あ、あうあうあうあうあうあうあうあうあううあうあ……」
「い、一旦落ち着いて。ほら。ジュース呑んで」
星野さんはストローを口に咥え、ズーっと音を立てながらジュースを一気に飲み干す。ただ星野さんの呑んでいたのはコーラであり、炭酸飲料だ。その様なものをいっきのみすれば当然……
「げほげほ……」
むせる。
「む、むせちゃいましたわ……」
「ほ、星野さん服‼ 服凄い事になってる‼」
「服……? はうあ……‼」
星野さんの制服のシャツは先程彼女がむせた際に吐き出したコーラによって、びしゃびしゃになっており、透けてしまっていた。その際うっすらと彼女の黒のブラが見え、その光景は僕の脳裏に深く焼き付いた。
「ひ、ひとまずこれで隠して……」
僕は星野さんに折り畳み式の上着を手渡す。
「す、すいません……」
「いいよ。それよりも早く行こうか。いつまでもコーラで濡れたままってのも嫌だろうし」
「はい……」