第79話 クリスマス×料理上手で心優しい女の子
12月25日。冬休み真っ只中かつクリスマスだというのに雅人達は学校に集まっていた。
原因はあのクリスマスツリー。業者の見立てより多く飾り付けがされていたため、電気がつかないというのだ。
「あれじゃあ電極がつけられない。多少減らしてもらわないと」
「それは出来ない」
「雅人、敬語」
「無理。...中学生高校生の作品なら事情を話せば取ってもいいという意見が出るかもしれないが相手は保育園の園児だ。話が通じる相手じゃないし黙って数人のを外したら家族で見に来た園児が泣くぞ」
「それでも減らしてもらわないことには無理だよ。ほとんどが下の方に飾り付けられてるしもう少し上に飾り付けしてもらえらばつけられるけど」
「それもダメだ。園児は俺達と違って背が小さい、視力はいいかもしれないが自分の作品が親に見せられないというのはダメだ」
雅人とて適当に飾り付けしてたわけじゃない。園児の作品をツリーの下の方に飾り梓が用意した飾りは上の方に飾るという分けかたをしていた。
よって飾り付けの変更は出来ない。かと言って電極をつけないと暗闇のなか園児たちが作った作品を見ることなんて出来ないだろう。
タイムリミットは5時間しか残されていない。
「今のまま電極をつけたらどうなる」
「そうだねー。作品の重さで下の枝が折れるか作品が熱でなんらかの変化するのは確かだろうね。夜の間ずっとついてるわけだから」
「...しょうがないな。生徒会メンバーは今の聞いたな」
「生徒会メンバーじゃないけど話は聞かせてもらった!よはアレだろ?木の土台部分にも飾ればいいんだろ?」
「その通りだ。頼めるか」
「おうとも!...どうせクリぼっちだしな。なにかしてた方が気にならなくなる...あれ、目から汗が...」
「はいはい。行くよー」
詩音と葵が仁を引きずって連れて行くとその後に雅人と梓以外の生徒会メンバーもツリーへと向かった。
「木の下の方の作品が減ればつけられるんだよな?」
「まあそうだね」
「3時間で終わらせる」
雅人が応接室を飛び出すとツリーの元へと向かった。
「配置にあんな意図があったのね」
「なんだと思ったんだ」
「ただ上までは大変だからとサボってるもんだよばかり」
「俺を舐めすぎだ。茜さんから預かった作品を無下には出来ないだろ。なにより、アレは子供たちが楽しんで作ったものだ。俺達高校生が同じものを作るのでは価値が違う」
真剣な雅人に梓は目を嬉しそうに細めると雅人の腕を引っ張った。
「なんだよ」
ちゅ
雅人の横顔に梓の顔が近づいたと思ったらそんな音が聞こえて来た。
「そういう真面目で子供好きなところが大好き」
「はいはい。分かったからさっさと行くぞ。時間がない」
「照れちゃってー。顔真っ赤よ?」
「うるさい」
流石の不意打ちには雅人であっても動揺を隠しきれてなかった。
雅人がツリーの元へ行くと既に作業が始まっていた。
「赤嶺くんどうしました?顔が赤いようですけど?」
「寒いだけだ」
だが雅人の顔の赤さは寒さによるものではないことは葵の目から見ても明らかだった。だとしたら、残る可能性としては梓しかいない。
葵が梓の方を向くと梓はわざとらしく指を唇に当てた。
「~っ!」
キスをしたとジェスチャーで伝えられれば葵は負けじと雅人に顔を近づけるがここでも恒例行事。
「雅人!ヘルプ!脚立になっても届かない作品がある。これじゃあどの道園児には見えないんじゃないか?」
「それもそうだな。ならその高さにある作品を下の台座に飾る。装飾は葵。任せた」
キスしようとしていた所に顔を向けられ葵は止まってしまった。
このままキスしてしまおうかそれともやめようか葵が悩んでいる間に雅人は仁の元へと走って行った。
「残念だったわね」
「負けませんから!」
「うちの女子って仲いいよな」
「んあ?ああ、仲悪くてピリピリしてるよりいいだろ。それにそんな空気お前は耐えれないだろ」
「無理だな。即行で離れるな」
「だが女子が多いというのも考え物だな。肩身が狭い」
「へー。お前でも肩身とか気にすんだな」
「そんなような気がするだけだ。俺には肩身とか分からん」
「マジかー。俺は毎回感じてんだぞ。女3に男に2なんだからな。今に至っては男3におんな5だからな」
「別にお前が注目されてるわけじゃないんだ。狭くはないだろ」
「分かってないなー。発言権がないってことがどれほど辛いのか分かってない」
雅人は言いたいことは言うタイプの人間である。
例え目上の人が誰かに怒っていて気まずい雰囲気でも気にせずに自分のしたいこと、やらなければならないことをやるだろう。
不良の世界で肩身を気にしていたらすぐに数の暴力で流されるだけである。
「女が増えると嫌か。なら女子には中で台座に飾る装飾品を作って貰うか」
「いやー!女子がいると華やかでいいよな!な!」
仁の目力が伝わったのか雅人は溜息のあとに作業へと戻った。
ある程度の高さの作品を取り除くと葵がクリスマスではお馴染みの赤い靴下を持ってきた。
「この大きさなら入りますか?」
「おお、この大きさなら入るがよく見つけたなこんなデカさのやつ」
「見つけたんじゃなくて作りました。生地が百円ショップの生地ですけど...」
「それでも助かる。ありがとな」
雅人はいつものような口角をあげる笑い方ではなく目を完全に閉じて頬を完全に上げて笑った。
梓にも見せたことがない無邪気スマイル。これだけは葵だけの特権であり雅人にこんな顔させるのは葵しかいないのである。
葵が作った赤い靴下をツリーの台座部分へと打ち込み、そこに園児の作品を飾っていく。
時刻は15時過ぎ。
「間に合ったな」
「これで電球がつくのか」
「これで文句言われたらそれこそ工具が必要だ」
「本格的すぎ」
「赤嶺さんはそこまでしてでもも子供たちの作品を飾りたいんですよ」
「工具なら工芸室にあったはずだから先生に言えば解放出来る。すぐに動ける」
「お兄ちゃんまで」
「これはまた華やかになったね。さ、作業に移るから高校生はお疲れ様」
「つけられるんだな」
「ああ、この量ならつけられる。子供たちの作品を照らすには多少の隙間が必要だからね」
「最初っからそう言えばいいのに」
「そのつもりだったんだけどなー」
業者がはしご車のような車をツリーのそばにつけるとアームの先にある籠に乗り作業を始めた。
「アタシ達は帰りましょうか。それぞれの予定もあるでしょうし」
梓の宣言によりその場解散となり雅人達も家へと向かっていた。
「そういえば赤嶺達はクリスマスどうするの?」
「ゲーム」
「また皆でやろうぜ!」
「お前ら弱いから嫌だ。1人で黙々と恐竜と遊ぶ」
「ゲームの中でもボッチにならなくていいんだぞ雅人」
「はー。ボッチじゃねーし。見ろ、俺には葵がいるから。料理上手で心優しいな」
雅人に引き寄せられた葵の顔は熟れたリンゴのように真っ赤で梓が違う意味で真っ赤になっていた。




