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第72話 自意識過剰×悪魔の巣窟

「てか、アイツらどこまで買いに行ったんだよ」

「どっか寄り道してるんじゃないだろうな...真央なら普通にするぞ」


雅人と回復した快斗は梓達の帰りの遅さを気にしていた。

と言ってもまだ2人が買いに向かってから10分と経っていない時間である。


「まだ10分と経ってないですよ。並んでたらもっとかかります」

「並んでるなら真央は戻ってくるさ。それでおれに代役を頼むまでがセット」

「兄貴も大変だな」

「ああ、可愛くて仕方ない」


この兄妹揃いも揃って終わってんのかと哀れみの目を向けるが快斗は照れるばかりで意味を全く理解してなかった。


「ちょっと見てくる」

「ついでに真央と代わって来い」

「そうですね。足が痛いと騒いでる頃ですから」


それはそれで近寄りたくないと思う雅人だった。

雅人が売店エリアまで行くとピンク色のファンシー少女が目に入った。

その周りを囲む男達にも。


正直近寄りたくない。

面倒ごとなのは確定し、あの色物を連れだと言い張る必要がある。

全身ピンクの目も頭も痛くなる少女の連れだとは不良の雅人であっても思われたくはなかった。


「あー!後輩!遅いぞ!」


遠くから見ているとファンシー少女に見つかってしまった。

全力で嫌な顔をした後、渋々向かうとやっかみが飛んできた。


「なんであーちゃんしか声かけられないの!こんなにも可愛い女の子がいるのに!」

「お、お前こいつの連れか。よかったな。そ、それじゃあおれ達は行くから」


梓達を囲んでいた男達は足早に去っていった。

雅人は心の中で謝った。馬鹿が世話かけたと。


「お前...昼間の遊園地で逆ナンとかどんな精神してやがる」

「こんな精神!可愛いんだから当たり前だよね!」

「駄目だこいつ。終わってら」

「助かったわ...アタシの静止も聞かずに突っ走るんだもの」

「ご苦労。兄貴呼んだからこいつを回収する」


快斗の姿を見た真央は一直線に走って行った。


「おにーちゃん!」

「おぶ!いきなり飛びつくな...内臓潰れるところだった...」

「やっぱり真央の可愛さを分かってくれるのはお兄ちゃんだけだった...」

「お、おう。そうだな」


目線でなにがあったのか尋ねる快斗だが雅人は首を振って無言を貫いた。

知りたくもないだろう。自分の妹が可愛さを認められたくて逆ナンを決行していたなんて。


「取り合えず戻るぞ」


雅人達が叶恵のもとに戻ると叶恵は男に声をかけられていた。


「叶ちゃんまで...真央のなにがダメなんだろ」

「顔、思考、服装、全部」

「お兄ちゃん。こいつのことボコして!」

「返り打ちが関の山だから」


雅人は叶恵に近づくと男も気がついた。


「なんだよ」

「お前...男ナンパして楽しいか?」

「え...馬鹿言ってんじゃねーよ...男なわけ」

「この声でもそう思う?」


叶恵から発せられる野太い声は雅人も初めて聞く声だった。

男はなんだよと悪態をついて戻って行った。


「誤魔化しのつもりだったんだけどな...」

「これくらい生徒会役員なら当然じゃありません?」

「梓...お前どんな基準で選んだんだよ」

「普通に個々の能力よ。こんなコメディ面で選んでないわよ」

「だよな。だが生徒会が色物集団ってことは確定したな」


遊園地に入って乗り物を一つしか乗っていないのに雅人は疲労に襲われていた。


「さあ次はお化け屋敷だ!」

「お化け屋敷...確か葵は幽霊とかが無理だったな」

「アタシはお化け屋敷なら平気よ。本物の心霊スポットだと無理だけど」

「ふふふ。ここのお化け屋敷って人を使っていないんだって。機械も置いてないし本物の心霊スポットを布で覆っただけなんだって」


真央はにこやかな笑顔を見せると快斗を連れて突撃していった。


「では私は1人で行ってきます」

「梓連れてけよ。おもりは嫌だぞ」

「頑張ってください。会長が歩けなくなった時に運べるのは貴方だけです」


それではと雅人達にお辞儀をすると叶恵は中に入って行った。


「仕方ない。行くか」

「絶対に離れないでくれるかしら。怖いわけではないのだけれど足が笑っちゃって...」

「がっつり怯えてるじゃねーか」

「び、ビビッてなんかないもん」

「分かったから早く行くぞ」


雅人達はお化け屋敷もとい心霊スポットへと足を踏み入れた。


その頃、先行した真央達は各所に潜んで悪だくみをしていた。

簡単に言えば暗闇で脅かすというものだが梓をビビらせるために前振りを入れておいた。

あの話、実は半分が本当で半分は噓である。

経費削減のために人がいないのは事実だがちゃんと機械はあるし心霊スポットのそばに遊園地なんて立てるはずもなく噓である。

日頃女の子扱いをされていない真央からのささやかな仕返しだった。

その仕返しに便乗したのが叶恵である。


生徒会メンバーは色物集団であると同時に詩音と同等かそれ以上の悪魔が巣くう場所であった。


「あーちゃんには悪いけど...あの若造に一泡吹かせちゃるわ」

「張り切りすぎて赤嶺怒らすなよ。病院送りになっても知らんぞ」

『叶恵です。今会長達が入ってきましたよ』

「了解。作戦を決行する」


ノリノリな真央とは逆に兄の快斗は心配でならなかった。


「本当に人いないんだな。気配が全くしない」

「そうなのね...アタシ的にはいてくれた方が助かるんだけどね...」

「走り抜けるか?」

「無理ね。足がすくんで歩くのもままならないのに」


既に足元がおぼつかない梓に真央の噓が襲い掛かった。


『アハハハハハハ!』


突如としてドクロの置物が光りながら声を上げた。


「きゃああ!無理無理無理無理!」

「落ち着けって、置物が鳴っただけだろ」

「なにもないって言ってたのに...」

「あのオワコンを信じるからこうなる...立てるのか?」

「無理~...」


完全に腰砕けになってしまった梓の前に背中を向けて跪いた。


「服従?」

「ぶっ殺すぞテメェ...これが嫌なら首元持って引きずるからな」

「しょうがないわね...」


梓は雅人の首に手を回すと自分の体重を雅人の背中に預けた。


「高校生をおぶることになるとは思わなかった」

「ごめんなさい...」

「謝ることはない。出たらオワコンを殴るだけだ」

「そう。ほどほどにね」


梓は雅人の背中に頬をつけると自らの頬を赤くした。

自分の背中より大きな背中。服の上からでも感じられる温もりに安心を覚えた。

毎日見ているこの背中も今だけは独り占め出来た。葵に向けられがちの意識を今だけは自分に向けることが出来た。

人間の独占欲とは怖いもので無意識のうちに言葉を発していたりする。


「好き...」

「あ?なんだって?」


だが無意識に発した声はあまりにも小さすぎた。


「なんでもないわよ...」

「ん。そうか。少し揺れるからしっかり肩掴んどけ」


雅人はそれだけ言うと張られた糸をかいくぐるようにして進んだ。

その先に見えたピンク色の布を追いかけて。

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[良い点] 「おいおいまた難聴系主人公だぜ」 「嫌われたなあいつ」   「ほう、唐突な難聴系主人公ですか。大したものですね。難聴系主人公はなろう男性読者の多くが好きらしく、今まで人の話をしっかりと…
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