第63話 共闘×無理矢理
雅人と慧輝は飛んでくる飛翔物を落としていった。
「なにが飛んできてんだよ」
「ボウガンだ。さっきからその矢がおれ達めがけて飛んできてる」
「ボウガンだぁ?使われなくなった旧校舎に防衛機能がついてるとかなんの冗談だ」
「冗談なもんか。見れるなら足元見てみろよ」
「ちょっとでも目離したら腹に穴開くわ」
ボウガンは飛距離も飛ぶ速度も弓とは桁違いだが自動ならば装填までにそれなりの時間がかかる。
その隙に不良2人は体勢を整えていた。
「慧輝、そっちのボウガンまでどのくらいだ」
「20m程度だ」
「ならこっちの方が近い。頼めるか」
「しょうがないな」
雅人はボウガンに向けて走りだすとボウガンがある壁とは反対側の壁を蹴った。
だが雅人は忘れていた。このボウガンが自動で動いてることに。
動いた雅人を感知してボウガンが空中の雅人を捉えた。
「あぐっ!」
心臓目掛けて放たれたボウガンを体をひねることで躱したが左腕に深々と刺さっていた。
「赤嶺!動けるか!」
「この程度で動けなくなるなら茜さんにとっくに殺されてる」
痛む左腕を押さえ折れた木刀を投げるとボウガンが壁から離れ落ちた。
「あとは後ろのボウガンだけだが...赤嶺がこれじゃあな」
「悪い。これ以上は失血がやべぇ」
「赤嶺くん...」
「泣くなって。押さえて安静にしてれば直る」
「でもでも~」
雅人がいくら大丈夫と言おうとそれを否定するようにワイシャツとブレザーに血がにじむ。
「おれが動くが...赤嶺みたく運動神経よくないから心臓に刺さったら救急車頼むわ」
「安心しろ、きっちり俺がトドメさしてやるから」
「あんたはもう喋らない。安田も縁起でもないこと言わない」
「そうだな。おれは近づけるほどの速さはないから...カウンターと行くか」
慧輝は飛んでくるボウガンの速度と頻度を確認するとおもむろに立ち上がり飛んできたボウガんの矢を先ほど雅人が落としたボウガンで撃った。
「FPSで鍛えたエイム力をなめるなよ」
「自動でよかったな。そうじゃなきゃ死んでるぞ」
「左腕負傷したお前に言われたくない」
腕にタオルを巻き血を止めてはいるが少しでも動かすと痛みを伴い慧輝の胸倉を掴むことが出来なかった。
「まあ、これでこの先になにかあることが確定したわけだが...相手が不良グループだったらどうするよ」
「葵と神崎逃がして殴る」
「その腕で?」
「...適当に殴って逃げるか」
先にある部屋の扉を蹴破ると中から丸太が振り子の原理で飛んできた。
「なんだこれ」
「教室内でやるもんじゃないな。威力がまるでない」
「さて、問題児たちはどこに...いたー」
雅人はおもちゃを見つけた子供のように無邪気だった。
「なんで赤嶺が...」
「お前らか...懲りねーな」
「赤嶺知り合い?」
「梓と文化祭のチェックしてた時にな梓の悪口言ってた奴ら」
「なんで赤嶺がそのことを知ってるんだよ!」
「なんでって...実際に照明が落ちて来たから」
正確には雅人が落としたという方が適格ではあるが雅人からしてみればどちらでもよかった。
「そうか。水谷会長が壇上に立つのは後夜祭が終わったあとの閉会式。その時に爆破する算段だったわけか」
「それなのに赤嶺くんが落としちゃったんですね」
「悪かったな」
「怒ってませんよ?助けてくれましたから」
「そのせいでうちらの演劇はめちゃめちゃだったけどね」
「客には分かんねーからあれでいいんだ。それよりも...こいつらをどうするかだろ」
「ボウガンなら持ってきたぞ。矢も丁度3本」
「眉間撃つか」
「言いわけないでしょ」
慧輝が持ってきたボウガンが詩音によって没収され、残されたのは己が拳。
雅人と慧輝は3人を一発づつ殴った。
「本当は警察沙汰だが...犯行前だしなにより証拠不十分だから俺達が代わって裁きをくれてやる」
旧校舎の一室から男の悲鳴が発せられた。
「葵。そろそろ赤嶺止めて」
「赤嶺くん!それ以上はやりすぎです!」
葵が雅人の腰あたりに抱きつくと急停止した。
「葵が言うなら今回はこれくらいにしてやる。だがな、葵だけじゃねぇ。梓にも手出しすんじゃねぇぞ」
雅人が昔の声で囁けば男子生徒達はただ頷くことしか出来ない。
☆
「反乱分子の鎮圧ご苦労様」
「疲れた。もっと労え」
「殴らなければもっと労ってたわよ」
旧校舎から帰った雅人は生徒会室のソファーに寝そべっていた。
「雅人は殴る以外に解決方法を見つけなさい」
「殴るのが1番早いだろ。誰も逆らうことなく解決出来る」
「平和的解決をしなさいって言ってるの。副会長がそんなんだとアタシまで変な目で見られるから」
「そんな不適任な奴を副会長に任命したのは誰ですかねー」
「知らない」
「…辞めるわこんな生徒会」
「嘘だから!アタシが推薦しました!」
出て行こうとする雅人を梓は腕を引っ張って止めた。
雅人は背中越しに冷たい視線を送ると梓は少し顔を赤くした。
「そんな見つめられると…恥ずかしい…」
「こいつ頭大丈夫か」
「声に出てるから!そもそも、雅人が居ないとアタシの立場危ういんだから」
「俺が一体なにしたって言うんだよ」
「私に無理矢理…」
「おい『に』ってなんだ。なにもしてないだろ」
「キスしようとしてたくせに」
梓が指摘すると雅人は気不味そうに顔を逸らした。
「仕方ないだろ。仁は兎も角としても神崎にはバレてると思うぞ」
「そんなにキスしたいならする?」
「なに言って…」
「本気よ?」
梓の顔を見ても冗談だとは感じ取れなかった。
そこで雅人は少し脅すことにした。言葉ではなく行動で。
「後悔するなよ」
「するわけな…っ!」
雅人は梓の唇を強引に奪うと唇だけが重なるライトなものではなく、舌まで絡ませ合うディープなキスをした。
「ちょっとまっ…んっ」
梓の制止も聞かずに梓の唇を求めて貪る。しばらくキスをしていると梓が膝から崩れ落ちた。
雅人はそのままソファーの上に押し倒しキスを続けた。
生まれて初めて濃厚なキスをした梓は最初こそ自分より力が強い男子に襲われているという事実に恐怖したが相手が雅人と考えた途端安心に包まれ、梓の方から雅人を求めるようになった。
唇が離れ、2人の間の細い糸が切れるとお互いに目があった。
雅人から見た梓は、頬を上気させ少し呼吸を荒くして非常に色っぽく見えた。
梓から見た雅人は、自分に覆いかぶさり、いつもの目つきで見下ろされかっこよく見えた。
「分かっただろ。これが俺がするキスだ」
「ええ、分かったわ。だからもう少し」
梓は雅人の頭を引き寄せると再びキスをした。
キスをしたのと同時に生徒会室の扉が開き、葵が顔を覗かせた。
「赤嶺くんいます…か…」
葵が驚くのも無理はない生徒会室に入ったら男女がキスしていてその男女が両方見知った顔だったのだから。
「ごめんなさい!」
葵が生徒会室から飛び出した。
「葵!待ってくれ!悪い梓」
雅人は急いで葵を追いかけた。
生徒会室に残された梓は名残惜しそうに唇を撫でると1人で笑った。




