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第59話 後悔×鈍感

梓が雅人にキスをした夜。

梓は自分の部屋で己の軽率さを呪っていた。


(なんで!なんであそこでキスなんて大胆なことしたの!?)


毛布に包まり恥ずかしさで悶えていた。


(大丈夫。雅人が幻滅するなんてことは...ありそう...もー!)


頭の中で次にあった時のシュミレーションを繰り返すが全て雅人に嫌われて終わるという最悪の結果で終わっている。

雅人を生徒会に入れ、一緒の時間を増やして雅人を自分のものにするというのは梓の計画だった。

雅人が生徒会に入ったまではよかった。だが梓は少し焦りすぎた。

文化祭が近くなっても踏み出せない自分への自己嫌悪と雅人の優しさに触れ暴走した。


暴走した結果、梓自身を呪うことになったのだが。


「よし、次会う時には平常を装えば平気。大丈夫。アタシは生徒会長なんだから」


意気込んだ直後にノックもなしに玄関のドアが開いた。


「きゃあ!雅人!ノックくらいしなさいよ!」

「ノックもしたし連絡もした。返事くらい寄越せよ」

「え、あ。ごめんなさい。少し疲れてしまって...」

「あんだけ寝てたのにまだ寝んのかよ」

「仕方ないでしょう!働きっぱなしなんだから!」

「愚痴は後で聞いてやるからとっとと来い。飯だ」


雅人は言いたいこと言い終わると葵の部屋へと入って行った。

キスをして完全な不意打ちをとったにも関わらず雅人は平気な顔していた。

梓の中で安心だとか悔しさだとかでぐちゃぐちゃになった。

そしてこう言った。


「あの鈍感不良~!」


梓を呼びに行った雅人は少し安心していた。

いきなりキスをされたが梓の方がいたたまれなくなり先に帰ってしまった。


「女子って嬉しくなるとキスする生き物なんだな。初めて知った」

「それは人に寄ると思いますけど...なんのアニメですか?」

「現実」


喧嘩三昧で恋愛を漫画やアニメでしか知らない不良に遠まわしに好意を伝えてもこの通り、通じないのである。

もし、あの場で梓が一言好きと言って逃げていれば雅人も勘違いのしようがないが梓は無言で逃げた。

それこそが梓の失策。赤嶺雅人という不良の鈍感さを考慮していなかったのだ。


「お邪魔します」

「遅かったな」

「色々あるのよ」


呆れ気味に雅人のそばに座ると雅人は自分の鼻腔をくすぐるものに気がついた。


「お前、香水してんの?」

「なっ!...そ、そうよ。今日体育があったから汗が気になったからつけてきたの。雅人は香水は嫌いだったりする?」

「今梓がつけてるみたいな柑橘系はいいけど匂いが強いのは無理。ババくせぇから無理」

「へーそう」


男性の中には香水の匂いが好きという人もいるが雅人はその逆。花の匂いのするはダメな人だ。

梓はどちらも持っていて梓自身は強めに香る花の香水が好きだが保健として清涼感のある香水をつけていたのが功を奏したようだ。


「ちょっと...あまり嗅がないでくれるかしら?くすぐったいんだけど...」

「昨日まで体育後だろうとしなかったのに」

「アタシだって現役の女子高校生なんだからおかしくはないでしょう?」

「それはそうだけど」

「嗅がないでって言ってるでしょ」

「もう少しだけ」


雅人が首筋に近づくと梓は抵抗を緩めた。

しまいには雅人を抱きしめ顔を赤くし甘い吐息をこぼしている。


「雅人~...」


梓が甘い声で雅人に甘え、雅人もそれに応え徐々に下に下がって胸の前まで来てそこで止まった。

離れて行く雅人を名残惜しく見る梓と恐怖で両手を下ろせない雅人。

2人の感情の落差は激しかった。


「お2人とも?ここが人のお部屋だということをお忘れじゃないですか?」

「俺が悪かった。調子に乗りすぎた。だからその包丁はどこかに置いてくれるともの凄く嬉しい」


包丁を手にハイライトが消えた目をしている葵に雅人は恐怖しか覚えなかった。


「人が折角夜ご飯を作ってる時に後ろでなにしてるんですか?」

「梓がつけてる香水の匂いが結構好きな匂いでな...ごめん」

「なんで謝るんですか?私は別に怒ってませんよ?赤嶺くんは私のだけじゃないのでどこでなにしようと私には関係ないですし気にしませんから」

「だったら涙拭けよ」


若干涙目の葵から包丁を取り上げ雅人は自分の胸へと抱き寄せた。

これが古事記にも載っている『女誑し』というやつである。


文化祭の準備も大詰めを迎え、生徒会役員たちも自分のクラスの準備を手伝うこととなった。


「もうちょいこの小道具どうにか出来ないのか」

「どうにかって?」

「もっと重くしてもっと威力のあるものを...」

「赤嶺くん...文化祭は喧嘩の場ではないんですよ?攻撃力を求めず安定性を重視してください」

「公認で慧輝をボコれるチャンスなのに」


雅人は不満そうな顔をするが一瞬だけなにかひらめいたかのように目を大きく広げた。

それを葵は見逃さなかった。


「本番、本物を持ってきたら没収しますからね?」

「わ、分かってるし、別に木刀持って来ようとか考えてねーし」

「考えてたんですね」

「うぐっ...」

「駄目ですよ?」

「フリ?」

「怒りますよ」

「冗談だ」


その後いつも通り演劇の練習をしたがこの時はなんともなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  平和だなぁ~。そして後ろでの梓お姉ちゃんと雅人君の絡みに嫉妬する葵。普通の女の子らしくて良き。  どっかの作品なんて、何人もの女の子に手を出すうえ、全員ハーレムやらなんやらを認めちゃいま…
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