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第5話 校外学習×私服

バスに揺られること3時間。

栃木県のとある山の中に雅人達はいた。


今日は一年生必修の校外学習。

毎年一年生は必ずこの校外学習に来ていた。


「それでは、3日間の校外学習を楽しんでください」


校長先生の有難いお言葉が終わり各々部屋に戻って私服へと着替える。


「おい赤嶺。なんでお前の服白いはずなのに所々赤黒いんだ」

「ああ、血だから気にすんな」

「いや気にするだろ!初っ端から服に血がついてる奴なんていないから!」

「大丈夫。ケチャップって言って誤魔化すから」

「誤魔化しきれる箇所に付いてないんだよなー」


日常的に喧嘩していた雅人の私服のほとんどに血が付いている。

黒い服に血ならそこまで気がつかないだろうが白い服に血は一目瞭然。

しかも背中にも数滴付いているのだからケチャップと言って誤魔化すのは少し無理がある。


「とりあえずオレの服着とけ!絶対にその服着るなよ!」

「悪いな、あとは普通の服だから白い服がこれしかなかった」

「頼むぞ、いくらですら不良で浮いてるんだ」

「善処する」


私服に着替えたら広いグラウンドに集まり行動班毎に山を登る。

山と言っても標高は高くないし道も舗装されてるから登りやすい。


「あ、いたいた。赤い服着てくるかと思ったら意外とまとも」

「つってもこの服仁のやつだけどな」

「赤嶺くんの服はどうしたんですか?」

「こいつの服、血が付いてたから脱がしてオレの貸した」

「血くらいケチャップでよくない?」

「背中にケチャップ付くか?それも赤黒い」

「ああ、うん。それはアウトだわ」


そういう詩音の服は白の半袖シャツに黒のストレッチ素材のパンツでこれから山登りするのに最適な服装。

逆に葵の服は全体的にダボっとしていている印象を受ける。山登りには適さないであろう服装だった。


血付きの服がダメなんてこと、私服なんて意識して買ったことがない雅人には少し難しい問題だった。


山を登るのにも急な坂はなく生徒達の話し声が聞こえる。


「ウチの班って結構バラバラよね」

「そうだな…赤嶺、趣味はないか?」

「趣味…ゲームはする」

「ほう。どんな?」

「どんなって聞かれると難しいな。広く浅くな感じだ」

「葵は?」

「私もゲームを少しだけ」

「意外だな。古賀は本でも読んでそうなのに」

「最近はFGOにはまってます」

「あれ、ガチャ率渋いから高校生には辛い」

「でも当たった時の嬉しさは他のゲームより大きです。それに低レアでも育てれば強くなるのは魅力の一つです」


一見共通点がなさそうな不良と地味子だが意外にも趣味が同じで似たようなジャンルが好きということが判明した。

他にも漫画の話で盛り上がったりしていた。


「赤嶺くんはどういった本を?」

「異世界無双系とかが殆どたな」

「私はラブコメとか...ですね」


「いい感じ過ぎてカップル誕生しそうな勢いね」

「仲がいいのはいいことだろ。それで付き合えたなら相思相愛なこと間違いなしだ」

「あのね...相手はあの赤嶺よ?まだ完全に良い不良だって決まったわけじゃないし警戒は解けないでしょ」

「まだそんなこと言ってんのかよ...あれは誤解だったんだろ?」

「そうだけど!警戒しとくに越したことはないの!」

「頑張れよ」


昼食地点までは舗装された道を歩いてきた。

帰りは山道を歩くコースとなっている。


「古賀、コケるなよ」

「大丈夫です。足元をしっかり見ていれば転びませんよ」


そう言って葵は雅人の顔を見た。


「きゃっ!」

「葵って天然だよね」

「これが狙ってないんだから貴重だよな。天然物の天然だぜ」

「言わんこっちゃない…下は石だらけで坂道なんだ気をつけろ」


雅人は葵が転ばないように時々後ろに気をかけながら進んだ。


「山道とは言え人の手が入ってないとなにかでそうよね」

「なにかとは?殺人鬼とかか?」

「発想が極端だし物騒。出るとしたらクマだろ」

「熊さんですか?」

「多分葵が想像してるのは黄色でウチらは黒か茶色だよ」

「蜂蜜あげたら仲良くできますよ」

「アニメの中でならな」


現実で熊に遭遇しても決して蜂蜜などをあげてはいけない。

そのまま『人の生肉~森の蜂蜜ソースを添えて~』という料理名になりたくなければ。


しばらく下って来たが明らかさっきより距離が伸びているように思える。


「長くないか?早く宿舎に戻りたいんだが」

「宿舎に戻っても暇でしょ。なにもすることないし」

「え、俺がなにもなしに来たとでも?」


中学時代、宿舎にテレビがあるのを知っていた雅人は家庭用ゲーム機を持っていきブラスマをやるという暴挙に出ている。

生徒からは賞賛を貰い、教師からは雷をもらったのは懐かしいいい思い出。


「漫画とか小型ゲーム機なら持ってこれるしかさばらないよな」

「赤嶺くん…どんな漫画持って来ましたか?」

「食いつくんだ…」

「えっと…『水菓』とか『僕勉』とか『僕を好きなのは君だけかよ』とか…」

「どれだけ持って来たんだよ。漫画入るスペースあるならまともな服もってこい」

「まともじゃない服ってなんだよ」

「血がついてる服など人様には見せられない服のことだよ」


雅人は当然のことながらファッションなどには一切興味がない。

血が目立たなくてその季節の服を適当に選んで買っている。

高1になったばかりでバイトなどをしていない雅人だが安定するまでは両親に仕送りをして貰っている。

バイトを見つけて安定したら連絡しろと言われている。


考えようによってはずっと仕送りしてもらうことも可能なのだ。


「この先狭いから気をつけろー!」


前方から担任の声を聞いた雅人達は戦慄した。


「これ…人が通れる幅じゃないだろ。足一つ分しかねぇじゃねぇか」

「落ちれば断崖絶壁に真っ逆さま」

「ちょっと葵が怖がってるじゃない。やめなさい」

「だだだだだ大丈夫です!赤嶺くんがいますので!生きれます」


葵を先頭に足一つ分しかない道を進んでいく。

いくら葵の不幸体質があろうと雅人が近くにいれば問題ない。はずがない。


パラパラと足元の土が風によって削られて歩を止めてしまった葵は次に来た強風に体全員を煽られた。


「え…」


一瞬景色がスローモーションになり自分の足が地面から離れ空中に投げ出されていることにきがついた 。


「いや…」


次にくるであろう激痛に耐えるために目をぎゅっと瞑った。

しかし次の衝撃は下からの激痛ではなく横からの少し硬くそれでいて柔らかい感触だった。


「古賀!歯食いしばれ。絶対に口を開けるな!」


葵を抱えた雅人は衝撃を吸収するために木に背中を当てそのまま重力によって落ちた。


「痛ってぇ…木刀よかましか」

「赤嶺くん…」

「俺が側にいて古賀に怪我させるわけないだろ。だから泣くな」

「怖かったです」


雅人は身体中の痛みを抑えながら泣きそうな葵をなだめた。

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