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第57話 お似合い×無自覚

「赤嶺く…」

「雅人、少し文化祭の出し物について聴きたいことがあるんだけど」

「悪い葵、すぐ終わらせる」


雅人から生徒会に入ってから雅人と葵の時間は減っていた。

葵も葵でクラス委員として演劇に出ずっぱりで雅人のそばに居られない状況が続いていた。


「はぁ…」

「葵?体調悪いの?」

「いえ、大丈夫です」

「…赤嶺なら大丈夫でしょ。梓先輩もいるし赤嶺以外は2年生だしね」

「そ、そうですね…」

「というより葵は赤嶺と一緒に居られないから不安になってるんだ」

「そんなこと…」

「ならどこか移動するたびにキョロキョロするのやめな。赤嶺探してんのバレバレだから」


自分の行動を見透かされていた葵は顔を赤くして手で覆った。


「日に日に不幸体質が強くなってる気がして…」

「どういう風に?」

「頻度はそのままで起こることが悪くなってます」

「ウチといる時はそうでもないよね?」

「赤嶺くんがいない時は注意して歩いたりしてるので平気です。帰りは一緒に帰ってますので」

「なるほど、葵も気をつけないとアイツ倒れるかもしれないよ」


いかなる不良でも人間である限り体力には限界がある。

雅人は運動が好きで体力はある方だがそれでも限界はある。

このまま葵の不幸に付き合っていたら倒れてもおかしくはない。


「分かりました。私も気をつけます」

「ん。そうしな」


葵と詩音が話していると壇上に雅人が登った。


「それじゃあ、赤嶺と安田の殺陣のシーン行くぞ」


演出担当の生徒のフリで壇上で雅人と慧輝が演技を開始した。


「なぁ、俺とお前…なにが違うと思う?」

「…選んだ道の違い…としか言いようがないな」

「そっかそっか。なら俺はお前の道を行く。死ね」


雅人演じるピエロの横薙ぎが慧輝演じる勇者の首すれすれを通り過ぎていく。

慧輝も盾剣を構えるが起きた先に雅人はいなかった。


「お前は真っ直ぐだな。だから殺しやすい」


雅人が背後から一撃を攻撃すると慧輝はそれを読んでいたかのように防いだ。


「さすが数十年と殺し合ったライバルだ」

「相変わらず卑怯な手を…」

「俺はお前と違ってなんでも真正面に受け止めるなんてこと出来ねーんだよ。俺に出来るのはお前が手に入れたものを奪うだけだ!」


殺陣のシーンはここから。

小道具の剣を振り回しダンボールで作った盾に攻撃を与えていく。本番は攻撃が貫通しないように鉄板を盾型にして使用するつもりだが練習ではダンボールで代用。


雅人と慧輝の殺陣を葵はボーッと眺めていた。


葵の中である疑問が生まれていた。

夏祭りでのキス未遂のことだ。ただ雅人の真意を知っているのは梓だけで葵からすればただ顔を近づけられただけでキスしようとしていたのかそれとも別になにかあったのか分からないままだった。


「あの時、キスしようとしたんですか?」と聞ければ1番早いのだが違った時のリスクを考え中々言い出せないでいた。

その上、「キスは特別なことじゃない」発言でモヤモヤしていた。

キスが特別なことじゃないとすれば葵にキスしようとしたのも雅人からすれば挨拶のようなもの。

でも葵は同年代の男子とそんな関係になったこともないし頭の中で想像もしたこともない純粋な心の持ち主。

故に雅人の言葉を真に受けてこうして悩んでしまうのだ。


「古賀!赤嶺達を止めてくれ!正確には赤嶺を止めてくれ!」


ハッとなって葵が壇上を見れば慧輝がボロボロのダンボールを使い雅人の猛攻を防いでいた。


「赤嶺くん!止まってください!」


葵の号令で雅人はピタリと止まった。


「さすが猛獣を手懐ける勇者」「赤嶺が動く時は古賀もセットじゃなきゃダメだな」「さすが古賀だぜ。安定感抜群で止めてくれる」


クラスからの評価はこんな感じ。

雅人を止められるのは葵だけ。というのは半年過ごしてきたクラスの総意であり常識だった。

仁や詩音でも止められないこともないが成功率は低いだろう。


「赤嶺くん。だいぶやりすぎです。本番前に怪我しては意味がないですよ」

「そうは言っても殴れる時に殴っとかないと勿体ない」

「人を殴るのに勿体ないもなにもないです!赤嶺くんは大幅に力を抑えてください。本番は私も壇上に上がりますしあんな勢いで演技されたら怖いですし…」

「そうか。なら葵に迷惑にならない範囲で殺しに行く」

「なにも分かってませんね!」


2人の仲睦まじい説教を見守るクラスメイト達。

彼らの疑問は一致しているだろう。


『なんであの2人付き合わないんだろう』と。


文化祭準備は着々と進み、生徒会の方もなんとか落ち着いた。


「書類整理ってこんなに疲れるのか…」

「それを1人でやる霧咲元会長は化け物よね…」

「梓もナントカ先輩みたいになれば人気でるぞ」

「無理よ。アタシはあの人みたいにハイスペックじゃないもの」

「ならお得意の聞き込みでもすればいいんじゃないか」

「それも無理。霧咲先輩は今は普通に社会人で忙しいものそれに、大学卒業を期に同棲してるらしいし」

「んー」


雅人は興味なさそうに答えた。

恋愛のことなんて雅人からすれば次元が違うことのようで実感がなかった。

葵への気持ちも友達としての気持ちと思ってるため無理もない。


雅人が自分の恋に気づくとしたら、雅人の周りの人間がなにかしらのアクションを起こした時だろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  練習の段階を見せて焦らしてくるとは、やるなぁ~。これは一枚上手。  今回も葵の勇者っぷりは素晴らしいものでした。いっそテイマー職にジョブチェンジしてみては? いや、それだと慧輝がヒロイン…
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