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第3話 班決め×ピンチ

「なにあれ…」「どういうこと?」「あの2人って同中なのか?」


翌日の休み時間。

雅人の隣に座った葵は居心地が悪そうにしていた。


「どうした」

「あの…さっきから噂されているようで…落ち着かないです」

「そうか」


葵に言われて噂話が聞こえる方を睨めばヒソヒソ声は聴こえなくなった。


「凄いですね…ひと睨みでそんなこと出来るなんて」

「評判が良くないのは知ってるし、別に評判が良くても悪くてもやる事は変わらないから。怖がらないのは古賀くらいだ」

「私はお姉ちゃんがそんな感じなので違和感ないですよ」

「そんなもんか。姉が不良でも怖いものは怖いだろ」

「そうですね。男の人はお父さんしか喋ったことないのでなにを話したらいいのか分かりませんね」

「その割にはスラスラ喋れてるじゃん」

「お姉ちゃんがいるので、殴られはしないかなと高を括ってますから」


(確かに殴ることは出来ないが他の事で乱暴されるとは思わないのか…こいつ)


葵の将来が少し心配になった雅人であった。


「んじゃあ入学して早々だが一年生は毎年生徒間の友好を深めるために校外授業がある。その手紙を配るから班決めをしてくれー」


手紙が配られ近くの席同士で班を作っていく。

学校1の不良として恐れられている雅人に声をかける人物なんていなかった。

勿論、雅人のモノという認識がついた葵にもだ。下手に葵に声をかけて雅人の怒りを買いたくないというのがクラスの総意だった。


(俺から動くしかないのか)


雅人は自分の席から立ち上がると迷う事なく葵の席に行った。


「あぶれたから組まないか?」

「はい。私でよければお願いします」


雅人のパーティーに葵が加わった▼


「赤嶺!オレも仲間に入れてくれよ!」

「じゃあ、ウチも。この班面白そうだし」

「お前らもあぶれた組か。俺が怖くないのか?」

「怖くないと言ったら嘘になる。けど、ただ中学の頃に悪さをしていたからといって今でも悪とは限らないでしょ。ヤンキーの中にも良いひとは居るから」

「そうだぞー。オレも昔は色々やってたから赤嶺の気持ちは分かるぞ」



豹堂仁(ひょうどうじん)はとにかく元気な男子生徒。青髪を持ち体は細身。特筆すべき特徴もなくただ元気という印象。

クラスの中心になりつつある人物で、彼もまた中学時代は不良をしていたという。

ただ彼の場合はハツラツ系の不良だったため、誰かを殴ったり木刀で身体中の骨を折ったりはしていない。

せいぜい、先生の話を聞かなくて問題児扱いされた程度である。


神崎詩音(かんざきしおん)は大地主の娘で生粋のお嬢様。黒髪を後ろで結んだ姿は凛としていてかっこいい印象。だが残念なことに胸部にはまな板が仕込まれているらしく膨らみは見られない。

全体的に細身で葵のような丸っこいと言うよりスラッと刀のような身体をしている。

お嬢様といっても特別英才教育を受けていたわけじゃなく、本人の希望通り自由に伸び伸びと過ごしたためお淑やかというよりは、ハキハキした性格になった。


生活班はまた異なるが行動班は一応決まった。


「本当に俺と同じ班でいいのか」

「いいって言ってるでしょ。この班の2人だけでも十分面白そうだもん」」

「そうか?」

「そうだろ。だってこの辺1番不良と昨日まで普通だった生徒が一緒の班になるっておかしいだろ。しかもお互いに昔から知ってるみたいな感じだし」

「あ、でも…」


葵はそこでようやく気がついた、自分が不幸体質だということに。


「私、不幸体質で皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれないませんけど…それでもいいんですか?」

「別にいいよ、不幸体質なんてあるか分からないし。葵の運が悪いだけかもしれないし」

「気にすることないって。もしなんかあったら赤嶺がなんとかしてくれるって」

「それはそうかもしれませんが…」

「そのためにもちゃんと守らなきゃね」

「分かってる」


班決めが終わったらやることは一つ。


「みんなで買い出しだよな!」


仁は元は不良だったというが不良を止めたのは本当に最近。

雅人とは違い、ハツラツ系の不良だったためコミュニケーション能力は高い。ただ勉強をしてこなかったために頭の良さは雅人と同じくらい。


「なんでもいいけどさ。男子は男子で買い物しなさいよ。ウチは葵とするから」

「男2人で買い物する図とか要らんだろ」

「そうだそうだ!女子がいてこその買い物風景だ!」

「変態ども…葵が汚れるから近寄らないで」


詩音が入ってきてから雅人は葵に近づけないでいた。


だが目の届く範囲にいれば何があっても大丈夫だろう。

そう考えていたが葵の不幸体質はそんな簡単には行かなかった。


「クッソ…どこ行きやがった」

「いねぇな」


見事に男女で逸れてしまったのだ。

仁でも葵の側に居てくれたら心強いが今葵のそばにいるのは詩音だけ。

それで詩音が怪我をしてしまえば葵はまた心を閉ざしてしまう。

雅人はそれを恐れた。


「手分けして探すぞ」

「ああ、それがいい」


全4階ある1、2は雅人が3、4は仁が探すことになった。


(何処だ。どこに行った)


葵の姿が見えなくなってからまだ数十分、高校生相手に焦る時間ではない。

だが雅人と仁はこの辺りの治安の悪さは知っていた。

だからこそ焦っているのだ。


「〜だから!嫌って言ってるでしょ!」

「ああ、分かった。彼女も一緒でいいからさ。少しおれらと遊ばね?」

「詩音ちゃん…無理しなくても…」

「無理なんてしてないし」


そう言い張るが実際足は震えている。

相手は見た目大学生にも見えなくもない男たち。

耳にピアス、首にはネックレス、人によってはタトゥーらしきものが入っている者もいる。


「君たち、多摩川高校の子だよねー?おれたちその高校にいる赤嶺っていう不良と仲良いわけよ。学校でイジメられたくないでしょ?」

「赤嶺…の仲間?」


詩音の中で一つ繋がったものが出来た。


なぜ不良が気弱そうな女子生徒と関わろうとするのか。


「アイツ…今度会ったら殺す!」

「詩音ちゃん?」

「アイツ。葵のこと玩具にする気なんだよ!だから葵に近づいたんだ!」

「ち、違うよ、赤嶺くんは優しいから」

「赤嶺が優しい?馬鹿言うなよ。アイツは何人も病院送りにしてる問題児だぞ?仲間も数人未だに意識が戻ってない。なんにせよそんな奴を怒らせたくはないだろ?」

「そうね。だからあんた達をまとめて警察に突き出してあげる」


葵を庇うように前に出ると精一杯睨んだ…つもりだった。

不良の世界にはひと睨みで殺せると言われる眼光の者もいるんだ。普通の暮らしをしてきた詩音の睨みなど所詮はチワワの睨み。相手からすればかわいいものである。


「なになにそんな睨んじゃって…おれ達は答えを待ってるんだけど?おれ達を拒んで赤嶺に殴られるか大人しくおれ達と遊ぶか。大丈夫。少し遊ぶだけだから」


男の手が詩音の胸に伸びる。


「あー!いたいた!」


大声と共に走って来たのは暴力とは無縁の不良、豹堂仁だった。

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