第33話 木刀×遭難
海へと来た雅人達は各々海を楽しんでいた。
浮き輪で水に浮いていたり、サンオイルを塗って日焼けしてたり、水着美女に見惚れて鼻ティッシュを詰めていたりと自由に楽しんでいた。
ゴーグルを首にかけ雅人と葵は海に入り葵に泳ぎを教えていた。
「あの...痛くないですか?」
「痛い。今すぐにでも叫びたいほど痛い」
「無理しなくても...」
「まさとー!葵に変なことしたら生き埋めだからなー!」
「この状況でやめられると思うか?」
「すいません...お姉ちゃんが寝たらあがって貰って大丈夫なので...」
「それまでに泳げるようになるといいな」
雅人は葵の手を引いて水に浮かせた。
人に泳ぎを教える基本的な体勢だが葵にするのは危険すぎた。
葵の持つ凶悪な凶器が雅人の首を取ろうと牙をむいた。
見えない牙を雅人は鼻血を出して新しいティッシュを鼻に詰める仁を見ることで躱していた。
「赤嶺くん?」
「葵。この体勢はやめよう。心臓に悪い」
葵は自分の胸を見て咄嗟に隠した。
「悪い。じっくりは見てねぇから...」
「あうう...」
お互いに赤くなり恥ずかしがっていると雅人は横からくる殺気に気がついた。
殺気に気がつくと葵を抱き寄せて殺気の正体を弾いた。
「木刀...」
飛んできたのは木刀で。この場にこんなものを持ってくる或いは持っている人物は1人しかいない。
「まさとー!あたしの妹になにしようとしてんだおい!しめるぞおい!コンクリで固めて海に沈めんぞ!」
「してませんから!木刀を本気で投げないでください!」
「お姉ちゃん!もう寝ててよ!」
妹にまで怒られた姉はむすっとした顔になるとパラソルに下でふて寝をかました。
「赤嶺くん!すぐに手当てを!」
「これくらい平気だって。ほら、弾いた手もなにもない」
「ですが骨に異常があったら...」
「触ったら骨がどうかなってるかは素人でもわかるぞ」
葵が雅人の手をふにふにと触るが痛がる素振りもみせず特に異常はない。
「真剣に探してるとこ悪いんだがそろそろいいか?」
「えあ!はい!大丈夫です!」
「木刀当たっただけじゃ俺の骨は砕けねぇよ。風が出て来たから浜に戻るぞ」
「はい」
雅人が飛んできた木刀を回収しようと葵のそばを離れた瞬間、大波が葵を包み込み連れ去った。
「葵!葵!」
雅人が呼びかけても反応はなく葵が浮かび上がってくることはなかった。
「赤嶺!なにがあった!」
「葵が波に攫われた!」
「一大事じゃない!」
「ウチらも探しに...」
「お前らは来んじゃねぇ!救助隊でもセーバーでも呼べ!葵のことは任せろ」
雅人は浜に残ったメンバーに指示を飛ばすと息を大きく吸い込んで水の中へと潜った。
泳げない葵は海底へと沈んでいった。
眼鏡を外しているせいで視界はぼやけ周りは真っ暗だった。
(私...このまま死んじゃうのかな...赤嶺くんも助けには来れないだろうし...)
雅人は知ってか知らずか飛び込んだが溺れた人を助けるときに1人で助けに行くのは危険とされている。
浜から助けに行こうとしたらライフセーバーに止められるだろう。
葵は雅人が止められてると思い死を覚悟していた。
(私が誰かと過ごすなんて...無理だったんだ...)
葵の目から涙がこぼれた。そして目を閉じた。
(不幸体質でどんくさくて...そんな私が誰かと仲良くなって海に着て思い出を作ろうなんてダメなことだったんだ。中学の時みたいに『どん子』と呼ばれてもいいから拒絶するべきだった。私が誰かと一緒に海で思い出を作ろうなんてダメなことだったんだ...)
葵は沈みついには背中にゴツゴツとした岩が触れた。
背中のゴツゴツを感じていると肩がなにかに強く掴まれた。
びっくりして目を開けると葵は安心した。
ぼやける視界の中でもハッキリと分かる赤髪。
雅人が目の前にいたのだ。
雅人は葵の唇に自分の唇を合わせるとそのまま空気を葵に送りこんだ。葵のわき腹に腕を回すと海上へと向かって思って泳いだ。
「がはぁ!キッツ!死ぬ!」
「ごほっ!けほっ!...赤嶺くん...」
「葵!大丈夫か!」
「はい。少し苦しいですけど大丈夫です....」
雅人は葵を抱きしめた。
葵は雅人に抱きしめられながら泣いた。
「すいません...色々な感情がごちゃごちゃになってしまいました」
「落ち着いたなら結構」
「ここどこなんでしょうか...」
「さっきいた場所とは海岸だと思いたいが...人の気配がしないってことは期待薄だな。あんな灯台なかっただろ」
「そうですよね...?」
ぽつりと降った雨は数分もしないうちに強くなった。
「葵。あそこの灯台で雨宿りするぞ」
「はい。わかりました」
灯台の鍵は壊れていて簡単に入ることが出来たが中はボロボロで暗く数年は誰も使ってない様子がうかがえた。
「くれー。ライトもなにもないのか」
「そうですね...怖いですよね...」
「葵?」
葵は雅人にピッタリとくっついた。
「わ、私。虫と同じくらいお化けが苦手で...暗い場所を1人では歩けないんです」
「お化けが怖いって...いるかどうかも分からないのに」
「赤嶺くんは分かってません!いないかどうかわからないから怖いんじゃないんですか!」
「見たことでもあるのか?」
「それは...ないですけど...」
「なら怖がる必要ないだろ。まあ、俺も実際に見たら怖い...いや、どうにかすれば勝てそうじゃね?バイオの世界とかホラゲの世界はそうだろ」
「赤嶺くんはVRでバイオしたことあるんですか?」
「んまあ、少しだけな」
「どうでした?」
「これくらいで怖いとか言ってるならやらない方がいい」
「ですよね...」
ゲームの話を挟むと葵は少しだけ不安が消えさったように見えた。
「さて、暇だし探索でもするか」




