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第29話 定期テスト×煩悩

体育祭が終わるとすぐに定期テストが雅人に襲いかかった。


「テストなんて滅びればいいんだ」

「大半の生徒はそう思ってるでしょうね」


雅人の部屋にて、梓の部屋から机を持ってきて勉強会を開いている。

メンバーは雅人と葵、梓、仁、詩音の5人。

女子陣は勉強が出来、男子陣はボロクソという状態。


「…数学…嫌いになりそう」

「嫌いになりそうじゃなくてなってる」

「あんた達ね…折角先輩が勉強見てくれるって言うんだから真面目にやりなさいよね」

「大丈夫よ。最初から雅人と仁に真面目さは求めてないわ。葵 と詩音の邪魔しなければいいと思ってるわ」

「梓先輩、ここの公式って…」


勉強が出来ない者達にとって勉強なんてのはただの苦痛でしかない。

やろと思っても分からない、更にはなにが分からないのかが分からないという悪循環。

これでは教えて貰おうにも説明が出来ないため教えてもらうことすら出来ない。

そうして成長したのがこの2人だ。


「オレ、教師からも見放されてたしなー。もうオワコンなんだよなー」

「病みきれないなら病みキャラにならなくていいから静かにしてて」

「うっす」

「豹堂、ブラスマやろうぜ」

「ハンデありならいいぞ」


勉強会だというのにテレビをつけ、ゲームの電源を入れ始めた2人を止める人はいない。

キャラは雅人は赤い帽子の配管工、仁は青い音速のハリネズミだ。


ボッ!いやっふー!わっ!コインコインコイン!ガシッ!グルグルぽい!

キュイーン!はっ!ビヨーン!はぁあ!ドゴーン!


「うるさい!貴方達勉強をしなさい!」


2人は終始無言であったが戦闘系のゲームのSEの多さは勉強の妨げになる。


「勉強、つまらない」

「右に同じく」

「アタシだって勉強よりようつべ見たりゲームしてたいわよ?でも補習は嫌でしょ?」

「別に。去年と同じだろ?行ってないけど」

「へー赤嶺はあったのか。オレの中学は無かったぞ」

「それ、補習の邪魔になるから諦められてたんでしょ」

「しょうがない…この手は出れば使いたくなかったけど…葵もそれでいい?」

「…仕方ないですね…使いましょうか」


この状況になることは薄々わかっていた。だからゲームを起動してもなにも言わなかった。

だが補習となると皆で遊ぶ時間が減る、高校1年生の夏にスタートダッシュを決められないのは詩音からすれば痛手だった。

だから、適当な理由をつけ葵を計画に乗らせた。


「不良であるオレ達に勉強をさせることが出来るかな!」

「見ものだな」

「威張るな。そうだな…もし一教科も補習なしだったら海連れてったげる。勿論メンバーはこの5人。しっかり水着も見せます」


これが対仁用の兵器だった。

その効果は…


「先輩、ここの問題が分かりません」


絶大だった。

だが問題はもう片方の不良、赤嶺雅人だった。

特にこれといって注意を引けるものもなければ唯一のゲームも新作まで買い集めてあるためゲームどうこうは不可能となった。

食べ物も好き嫌いはあるがそれを対価として出すには弱かった。

そんな中、葵が出した答えがこれだ。


「あ、赤嶺くん…は補習なしだったら私で良ければ、なんでも1つ言うことを聞きます」


雅人のような無気力不良には自分で決められる報酬にした方が効果を発揮する。

葵は自分という対価を雅人に出した。


「…ここが分からない。教えろ」


効果は絶大だった。

だがこれに意を唱えたのは詩音だった。


「ちょ、葵本気なの!こいつに自分を差し出すなんて!腹減りのライオンに肉ぶら下げて行くのと同じだよ!」

「それでも…皆さんとの思い出を作りたいので…コラテラルダメージです」

「なにがいた仕方ない犠牲よ!葵は価値ある女の子なんだから!こんな雅人に自分を捧げなくても生きていけるのよ!わかってるの!?」

「これって俺キレていいやつ?」

「ダメなやつ。大人しく勉強しようぜ」


定期テストのテスト返却日。

この多摩川高校では、35点未満を赤点とし、夏休みの間補習を受けることになっている。


「ええっと、赤嶺くんどうでしたか?」


雅人は自分の答案用紙を見せた。

どの教科も赤いバツが目立ち、丸が少ない印象を受ける。


赤嶺雅人

現代文ー40点

数学ー35点

英語ー36点

現代社会ー48点

生物基礎ー59点


と数学英語はギリギリではあるが、なんとか補習は免れた。

仁はと言うと。


豹堂仁

現代文ー79点

数学ー67点

英語ー42点

現代社会ー89点

生物基礎ー73点


という高得点を叩き出した。


「冗談抜きで死ぬ気で頑張った。もしこれで赤点取ってたら死ぬところだったわ」

「どんだけ神崎の水着みたいんだよ」

「チッチッチ、分かってないなー赤嶺さんよー。神崎だけじゃない、海に行けば多くの女性がいる。その水着全てが見たいんだ!」

「お前、問題起こすんじゃねぇぞ」

「真っ先に起こしそうなお前に心配されたらオレも終わりだな!」


ガハハハと豪快に笑う仁に対し、女子達の目は冷たかった。


「赤嶺くん…やれ出来るじゃないですか!今までできないとか言ってたのに」

「俺もビックリだ。俺の答案で50点が見られる日が来るとは…小学校以来だ」

「それであの…約束の件ですけど…どうしますか?」

「…決めてないから後にする」

「そ、そうですか。分かりました」


葵の内心はドキドキだった。

数十年一緒にいる幼馴染なら兎も角、雅人とは1ヶ月ちょい前に会ったばかりなのである。

雅人がどんな命令をしてくるか正直葵も分かっていない。

勿論、雅人を信じての条件だったが雅人の過去を完全には知らない葵からすれば怖いことなのだ。


そんな葵の心中なんて知らない雅人はなにを頼もうか呑気に考えていた。


今回の定期テストで雅人達が学んだことは、


『煩悩を制する者、定期テストを制する』

ということだ。

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