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第28話 閉じ込め×一気開け

体育祭午前の部が終わり、雅人のクラスは学年2位まで来ていた。

午後の部は、集団競技が多く点が取りにくい。

あと取れるとすれば、最後の学年対抗リレーだけだ。


お昼ご飯を食べた雅人達は校庭で遊んでいた。


「豹堂!死ね!」

「ちょちょ!本気で投げんなって!」

「男なら受け止めろ」

「グローブないんだから本気で投げんなって」


雅人が野球ボールで遊んでいると放送がかかり本部に呼び出された。


「来たわね

「なんの用だよ。折角遊んでたのに」

「遊んでたならちょっと手伝ってほしいことがあるのだけれど」

「自分で行けばいいいのに」

「拒否権はないわ。アタシ達生徒会は忙しいの、備品チェックから放送から人に指示したり…だから貴方に体育倉庫からここに書いてあるものを取ってきてほしいの」

「俺1人でか?…大分キツイけど…」

「あ、じゃあ私行きます」

「そう。なら頼んだわ」


いつの間にかついて来ていた葵と体育倉庫に向かった。


「なにを運ぶんですか?」

「このリストにある物全部だと」

「多いですね…ラインカーに予備の石灰とメジャー…他にも色々書いてありますね」

「豹堂も連れてくれば良かったな」


校庭の片隅、と言っても本部からは見えないほど寂れた場所に体育倉庫はある。


「固え扉だな!…やっと開いた」

「結構さびついてますね」

「だれか閉じ込められる前になんとかしといた方がいいのに生徒会の奴らはなにしてんだか…古賀はメジャーとか小さいもの持ってくれ、俺はラインカーと石灰を持っていく」

「分かりました…きゃ!」


暗闇の中、葵がなにかにつまづくとそれがスイッチとなり、扉が自動的に閉まった。


「…」

「ご、ごめんなさい!足元見てませんでした!」

「古賀1人で来なくて良かったな」

「そうですね…」


雅人が開けようとしてもなにかがひっかかっているのかガタガタするだけで開かなかった。

スマホのライトで確認しても中でなにか引っかかってるわけじゃなかった。


「どうしましょうか…」

「助け呼ぶ」


雅人が電話をかけて出たのは仁だった。


「豹堂、助けろ」

『助けろって…お前今どこいんだよ』

「体育倉庫の中、中からじゃ開けられなくてな」

『分かった、数人連れて行くから待ってろ』

「助かる…すぐ来るってさ」

「対処早いんですね…」

「まあ慣れてるし」


普通の人からみて非常事態でも雅人からすれば日常なことが多々ある。

閉じ込められるのも慣れっこだし、木刀で殴られるのも日常、睨み合って終わるなら仲良し。

それが雅人の日常だった。


暗闇の中、スマホのライトだけが唯一の光源だった。

その明かりの中、雅人達の前をなにかが横切り、葵の背中にくっついた。


「赤嶺くん…私の背中になにがいますか?」

「虫」

「いや!いやあああ!」

「古賀!落ち着け!」


極度の虫嫌いにより、葵は混乱して暴れた。

足元が見えずにしかも不安定で運動音痴の葵が転んで無事な保証はない。

暴れる葵を雅人は持ち上げると少し硬いマットに押し倒した。


「あ…」


暗闇でもわかるほど接近され葵は吐息をこぼした。


「落ち着いたか?」

「い、今は大丈夫ですけどまだ虫が近くにいると思うと怖いです」

「日本にいる虫なんて無害なやつが多いだろ」

「無害でも見た目が有害です!なにが付いてましたか?蛾ですか!カメムシですか!」

「古賀がすぐに暴れたから分からん」

「近くにいませんか?」


涙目になり震えながら雅人の腕にしがみついた。


(なんだこの可愛い生き物)


衝動的に抱きしめたくなったが外から足音が聞こえたため自重した。


「赤嶺!いるか!」

「いるぞ!外でなにか引っかかってないか!」

「…いや、なにも引っかかってないけどな…」

「扉の下か…力づくで開けるから外からも引っ張ってくれ」

「わかった!」


男子高校生の力ともなれば、大人と比べても遜色ないくらいには強いはずなのだが、それでも扉はガタガタと揺れるだけだった。


「重い!なんだこのボロい扉!ビクともしない!」

「だろ、いっそ壊すか」

「壊すってこの大きさのをか?」

「中にあるもの使えばそれなりに壊せると思うが…その間にやっておきたいことがある。壊すのはそのあとだ」

「やりたいことって?」

「安田呼べ、アイツなら俺とほぼ互角の力はあるはずだ」

「お前ら、やすだ呼んできてくれ」

「わかった!」


仁はこの場に残り、連れてきた友達に頼んだ。


「いいのか?貸しつくるようなことして」

「貸しとか言ってきたらぶん殴るから大丈夫」

「殴るのかよ」


体育倉庫の中と外で話していると慧輝が走ってきた。


「いるのか?」

「いる。息合わせて一気に行くぞ。さっきまでやってたせいで体力がもうない」

「不良なお前が体力ないとか情けない。おれに負けるなんてな」

「るっせ行くぞ!」


外と中で反対側の取っ手に足を置き、全身の力を使って扉を引っ張った。

4人がかりでも揺れるだけだった扉が徐々に開き始めた。


「オメェの顔なんざ見たくなかったぜ」

「それはおれのセリフだ。古賀さんは無事なんだろうな」

「無事だから踏ん張れ」

「そっちこそ力抜くなよ」

「誰に向かって言ってやがる。俺がそんなヘマするわけないだろ」

「さあ、どうだろうな。不良(笑)になりつつあるお前に力なんてあるのか?」

「上等だよクソ野郎が。その目にやきつけろ」


「すげーこの2人全力でちから使ってるくせに喧嘩してるぜ」


ミシミシと扉が悲鳴を上げ始めた。

2人の力が全力に達した時、扉が轟音を立てて横にスライドした。


「ハァハァ…やっと開いた」

「なんだ息切れしてんじゃんか。情けない」

「お前より長時間力入れてんだよ…丁度いいや、安田と豹堂は手伝え。生徒会からのおつかいだ」

「しょうがねーなー。友達のよしみだぜ!」

「容赦ないな…力を使ったあとだってのに」


「うるせぇ。あくしろよ」


その後、力を使ったこと理由に学年対抗リレーをサボろうとした雅人を慧輝が焚き付け、見事1組は優勝した。

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