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第22話 『ぼっち』×『ぼっち』

「んで、なに買うんだよ」

「あまり重いものは勘弁なーどうせオレ達が持つんだろうし」

「そうね…5月といえばなにかある?」

「うーん…あまりそういうの意識したことないからわかりません…」

「うちも同じようなもの。レパートリーも少ないから」


大人数分作れて手間がかからないものという条件なら自然と選択肢は限られる。

まず魚など個々で必要な食材は不可能、肉を買って大皿で出すという手もあるがこの人数分の量がわからないため今は避けた方がいい。

となると選択肢は必然と絞られる。


「しょうがないか…出前をとりましょうか」

「そんな金持ってないぞ」

「だから、ウチが出すっていいってんの!ただし!男どもにはしっかり働いて返して貰うからそのつもりで。葵と先輩は返さなくてもいいです」

「女尊男卑だろ」

「男だけに働けというのは不公平だと思いまーす!」


勿論これには雅人達は抗議した。


「じゃあ聞くけど、葵みたいに癒しを提供出来る?先輩みたいに勉強教えられる?」


「「無理」」


中性的な顔立ちならまだしも2人はゴリゴリの男面で癒しなど提供出来るはずもない。

そして2人の敗北を決定づけたのは2人の頭の悪さである。

不良として喧嘩三昧だった雅人と教師の話などまともに聞かない不良の仁が頭がいい訳がない。


「分かったら黙って仕事した方が身のためだと思うけど?」

「…ッチ…仕方ねぇな」

「マジか…労働か…」


むしろ高校生からのお願いで出前が食べられるだけマシなはずである。


雅人達のアパートとは反対側に5分ほど歩いた場所に詩音の豪邸はある。

高さ3階建ての庭付き。

玄関の前に雅人の身長より高い門があり、ブザーを鳴らすと開いた。


「マジでお嬢様なのな」

「ただパパが少しお金もちってだけ」

「それでも凄いと思います」

「アタシもこれくらいの家庭に生まれていれば…お母さんに楽させてあげられたのに」

「恥ずかしいから早く入って」


家主に急かされ玄関まで来た。


「ここまで来てなんだけど、ご両親は大丈夫なの?勝手に出前も取ってたし…」

「大丈夫です。2人とも帰ってくるのは遅いし出前取って食べられる用にお金は貰ってるので」


雅人達は別次元の話を聞いているようにしか思えなかった。


「出前届くまで大人しくしてて。特に男ども」

「人様の家を無断で探る真似はしない。な、赤嶺」

「ん?」

「なにしてんだよ」

お宝(エロ本)探し」

「あるわけないだろ」

「俺たち向けじゃなくて女子向けのあるだろ」


えらく手慣れた様子に人はため息しか出なかった。


「いいから。お前はじっとしてろ。古賀ーちょっと赤嶺を鎖に繋いどいて」

「え、ええ…どうやってですか…?」

「いつもやってるだろ。同じようにやればいい」

「いつものように…」


葵はしばらく静止した末雅人の背中にしがみついた。


「…なにしてんだよ」

「いつものようにと言われたので…」

「…自転車か」

「はい…」


葵は自分が恥ずかしいことをしていると気づいたのか顔を赤くして雅人の背中に頭をくっつけた。


「まさか自覚ないの?」

「まったく…」

「結構有名だけどな。『猛獣を飼い馴らした勇者』って言われてるくらいだし」

「そんな勇者だなんて…」

「満更でもなさそうね」

「おい。誰が猛獣だ。俺は人間だ」

「教師に牙向く時点で猛獣だろ。怖すぎて誰も話しかけないだろ」


入学してから1ヶ月が経ったが今でも話したことないクラスメイトがいる。

雅人の場合、話したのは葵、仁、詩音、慧輝、女子生徒2人の計6人。

1クラス30人いて雅人を除けば29分の6しか話していない。


「…」

「納得したか?」

「別に怖がる必要ないだろ」

「怖がるに決まってるでしょ。安田に噛み付いた挙句殴ろうとしたんだから」

「普通だろ」

「あんたの普通は普通っじゃないから」


玄関のインターホンが鳴り出前が届けられた。


「勇者さん?猛獣の隣で猛獣が全部食べちゃわないように見張っててくれる?」

「は、はい!分かりました!」

「お前も乗らなくていいから」


背中でコアラ状態だったら葵は雅人の隣に座った。


「いただきます」


いつもとは違うメンバーでいつもとは違う夕飯を食べる。

それが男女片方ずつだったらそれはそれで面白そうだが後々さみしくなる。

だが今回は男女人数差はあるもののしっかりいる。


光景としては男女で寿司を囲んでいる図だが。

そこには青春ならではの笑顔があった。

ワサビたっぷりの激辛寿司を雅人と仁が食べて雅人は悶えたのに仁は全く平気だったり。

差し出されたお茶が熱々だったりとやりたい放題。


「あー楽しいー」

「テメェ…覚えてろよクソが」

「差し出したのは葵なんだからウチに当たらないでよね」

「ご、ごめんなさい…」

「葵さんが謝ることないわ。いつもの罰でしょ」

「口の中が地獄絵図だ」

「そんな辛いか?普通じゃね?」

「お前の舌は死んでるぞ味音痴が」


こんな会話が出来るのも誰かがいるから出来る会話だ。

何の因果か、ここにいる5人はそれぞれ理由は違えど、1人だった過去がある人物だ。

やはり、『ボッチ』×『ボッチ』はプラスになるのかもしれない。

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