第1話 初登校×初出会い
今回執筆力アップのため第三者視点で物語を展開していきます。
処女作でやろうとしたら書きにくくて止めてしまいましたが今作では全て第三者視点でやろうと思っています。
初の試みなので見苦しい場面が多々あると思いますがその時は心の中で応援して下さると幸いです。
次の日。
雅人は高校までは自転車登校だ。
歩きでは30分近くかかり電車を使う程遠くでもないため、自転車通学だ。
中学から使っている自転車。後ろの荷物置きは人の体重で曲がってボロボロな状態で現役で動いていた。
そんな矢先、立ち往生している女子生徒の姿が目にはいった。
制服からみて同じ高校。時刻は8時20分。
一人暮らし用のアパートから出てすぐのバス停で呆然と立ち尽くす女子生徒に雅人は声をかけた。
「おい。お前なにしてんの?」
初対面相手に『おい、お前』というのも雅人のくせだった。
赤嶺雅人。
名前に恥じない赤い髪を持ち、中学の頃はイジメてきた同級生だろうと先輩だろうと後輩だろうと殴って物理的に押さえつけていた過去がある。
それ故に『怪我したくなければ赤嶺雅人に手を出すな』と噂されるようになり中学時代は非行の限りを尽くしていた。
だがそんな彼にも転機が訪れた。
古賀茜。
彼の恩師にして彼が唯一負けた相手。
女だからと言って安心していたわけじゃない。本気も本気で雅人は木刀まで持っていた。
それなのにも関わらずボコボコにされた相手。
高校生になった今でも不良だった過去の癖で敬語は使えない状態だった。
「あ、実は。学校への道のりが分からなくて困ってるんです」
「スマホで調べろよ」
「その手がありましたね。ありがとうございます」
丁寧にお辞儀する女子生徒をおかしな奴を見る目で見る雅人。
腕時計を確認するが今から歩いたのでは到底間に合わない。
バスを使えばギリギリ間に合うだろうが本当にギリギリ。陸上部が全力疾走して間に合うかの時間。
雅人はため息をついた。
「乗れよ。送る」
「え、でも悪いですよ」
「いいから乗れ。こっちは教室だって確認しなきゃいけないんだ早くしろ」
「…ではお言葉に甘えますね」
一瞬迷ったようだが自分も教室を確認しなきゃいけないことを思い出したのか遠慮がちにその小さなお尻を荷物置き場に乗せた。
「んじゃしっかり掴まってろよ。少し飛ばすから」
「はい」
女子生徒のバックを前の籠に突っ込んだ雅人は思いっきりペダルを漕いだ。
「下り坂は最高だ!」
全身で風を切り、この長い長い下り坂を女子生徒を自転車の後ろに乗せて一切のノーブレーキで下る。
春のまだ少し寒い風が手に当たって冷たいがそれを溶かすように太陽の暖かな光が雅人達に降り注ぐ。
長い下り坂を下れば学校は目と鼻の先。
足に力を入れて漕げば遅刻ギリギリではあるものの校内に入ることが出来た。
掲示板に張り出されている教室の案内の紙を見て自分の名前を見つけた。
遅刻ギリギリのため周りには生徒はおらずウロウロすることが出来た。
「おい。見つけたか」
「はい。1組でした」
「お、同じだ。なら教室まで行くぞ」
雅人は女子生徒の小さな身体を抱えると走った
「ちょっと飛び込むから出来るだけ小さくなってろ」
「はい。分かりました」
一年生の教室は1階にあり更に1組は1番左の角部屋。
その左窓が空いているのをみた雅人は大博打に出た。
チャイムとほぼ同時、1番左の窓をハードルのように飛び越すとチャイムが鳴った。
「よっし。初日遅刻は免れた」
「ありがとうございます。お陰で私も遅刻せずに済みました」
「良かったな」
「ほら、席つけ不良共。入学初日から窓から登校とか前代未聞だぞ」
「あ、蛇」
教卓に近い窓から入った雅人は胸ぐらを掴まれ黒板に後頭部を強打させられた。
「痛い」
「それ、どこのだれから聞いた」
「あれ、覚えてないか。蛇」
「一々呼ぶな」
蛇というのはとある1人のことを指す名称だ。
勿論、ほかの人にはなんのことだか分からないだろうが雅人たちが生きてきた世界では共通の認識だった。
「だれから聞いたかの質問だが、茜さんから」
「あかねー!」
入学初日から教室でかつての旧友の名前を叫ぶ教師がここにいた。
「まあ、いい。茜にはキツく言っておこう。ほら、席つけ。自己紹介とか色々あんだから」
入ってきた窓のすぐそばにある席が雅人の席である。
「それじゃあ、気を取直して。私がこのクラスの担任となった牧野雲雀だ。よろしく頼む。趣味は…最近はアクション映画にハマっているな。んじゃ、生徒からも自己紹介をしてもらおう、赤嶺、お前からだ」
「お前呼ばわりか。えー赤嶺雅人。趣味は運動。よろしくおねがしまーす」
雅人が自己紹介して先生が拍手しているにも関わらず響く拍手はわずか。
それもそのはず、最初に言ったように雅人は嫌われ者の象徴である。ただ、物理では敵わないからいじめられないだけでもし雅人が非力だったらイジメの対象となるだろう。
自己紹介が進み、今朝雅人と一緒に登校してきた女子生徒の番となった。
「古賀葵です。趣味はのんびりすることです。よろしくお願いします」
そこで雅人は思い出した。
昨日急にかかってきた恩師からの電話。
『妹のお世話をしろ』
そう、彼女こそが雅人が『お世話』すべき女子生徒であり疫病神だ。