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第18話 立ち直り×掃除

GW初日。

昨日、あんな騒ぎがあったのに葵の様子はいつもと変わらない様子だった。


「無理してないか?」

「してません。こう言ってはなんですが、もっと酷いことされると思ってたので安心してます。それに、私の不幸体質が引き起こした事ですから今更落ち込まないです」


過去の産物として得られた強メンタル。

普通の女子なら心に傷を負い学校どころか外にすら出られないというのに葵は平気な顔して目の前の悲惨な状況へと向き合っている。


「ここに引っ越してきて1ヶ月くらいですよね?」

「そうだな」

「なのに!なんでこんな悲惨な状況になるんですか!」


目の前の悲惨な状況とは雅人の部屋のことである。

生ゴミなど臭いの出るものはないものの脱ぎ散らかした服があちらこちらに散乱している。


「ほら、俺の部屋って洗濯機ないからコインランドリーまで行くの面倒なんだよ」

「徒歩1分のところにあるのに面倒なんですか?それはもはや一人暮らしは向いてないのでは?」

「俺も薄々気がついてた」

「引っ越す前に気付きましょうよ…」


葵はため息をつくと地獄へと足を踏み入れた。


「あ、その辺滑るから気をつけてな」

「え、きゃあ!…忠告遅くないですか」

「すまん」


幸か不幸か葵がダイブした先は服の山。なんとか地面との激突は控えられたようだった。


玄関を抜けその先へ行くと殺風景な部屋があった。

あるのはキッチンとソファだけ。人が寝ることが出来そうなベットもテーブルもなかった。


「あの…赤嶺くんはいつもどこで寝てるんですか?」

「床、もしくはソファ」

「体に優しくないですね」

「これからどうなるか分からないが毛布あれば夏は行けるしエアコンあれば余裕だろ」

「そうかもしれませんが…」


間取りは葵の部屋とほぼ一緒。柱などの関係で少しだけ雅人の部屋は狭いがそれにはしては殺風景すぎる。

ベットはもちろん、テーブルにソファ、テレビだってある。

そんな葵の部屋とは大違いだった。


「俺の家はテレビはリビングに1つだし、床っていうこの部屋と同じ広さのテーブルがあるんだからテーブルは必要ない」

「独身男性の家みたいですね」

「だろ」

「でも社会人はこんな悲惨な状態になるまで放っておかないですけど」

「…」

「さて、始めましょうか」


葵は床に広がる服を持ち上げると色物と白い服に仕分けしながらまとめていった。


「生ゴミがないのが幸いですね…」

「おお…地面が見えてきた」


雅人はいらなくなった雑誌やその他のゴミをまとめ端によせた。

数時間作業し一応地面が見える程度にはなった。


「服…結構ありますね…」

「ほとんど洗濯済みのやつだけどな」

「それなのになんで床に置くんですか?」

「収納がないから」


たしかに、雅人の部屋に収納は少なくその収納も漫画で埋まっていた。


「1ヶ月漫画を買うのを我慢して収納を買うしかないですね」

「ええ…漫画は俺の楽しみなのに」

「我慢してください」

「ああ…ま、ネットのがあるからいいけど」


お昼になる頃には見違えるほどに綺麗になっていた。


「入ってきたばかりみたいだ」

「ちゃんと片付けすれば毎日見られる光景ですけどね」

「それが出来たら苦労しないんだよな」


部屋が綺麗になって一息ついているとドアがノックされる音が聞こえた。


「はい」

「あ、いた。これ今日の食材買ってきたけど…重いから持って」

「悪いな。1人で行かせちまって」

「暇してる橘先輩使ったから1人じゃなかったわ」


後輩にパシられる先輩。

たしかに、梓1人で持てる量ではない。


「これ全部スーパーから歩いて持って来たのか?」

「車で帰ってきたわ」

「え、アイツ免許持ってんのかよ」

「3年生で誕生日を迎えていれば持っていても不思議じゃないですよ」

「片付けはどう?一息つかない?」

「そうします。一息ついたら片付け再開しますよ」

「ああ」


葵の部屋へと向かって一息いれる雅人達。


「片付けの進捗はどんな感じ?あまり進んでないようならアタシも手伝うけど」

「だいぶ進んだと思う」

「はい。あとは掃除機かけて山積みになった服をたたむだけですね」

「あんた、服とか畳めんの?」

「バカにすんな。それくらい出来る」

「でもあの量を2人ではきついと思いますよ?」

「ならアタシも手伝うわ。どうせこの後暇だし」

「勉強しろよ」

「貴方だけには絶対に言われたくない」


軽めの昼食を取って掃除再開。


「うわ、この服全部雅人のなの?」

「そうだな」

「どんだけ服持ってのよ」

「しかもそのほとんどに血らしきものがついてます」

「そういうのはすぐ捨てなさいいよ」

「まだ着れるしよくよく見たり触ったりしなければバレないだろ」

「今見ても結構わかりやすいわよ?ま、アタシは気にしないけど」


そう言って梓は雅人の服を畳んでいく。


「慣れてんな」

「家じゃ妹達がいたしそれで慣れたの」

「妹だけで慣れるか?」

「アタシが長女で下に妹と弟が5人いるのよ」

「大家族ですね」

「そ、だから家事全般は出来るわ」

「意外」

「なにがよ。アタシだって人並みにできるし。貴方と違ってね!」

「あ?俺今喧嘩売られてる?」


雅人と梓はどうも仲があまりよくないらしい。

しっかり者の副会長と自堕落な不良とでは仲良くなれないのも頷ける。


掃除再開から1時間とかからず終わった。


「終わった…」

「人の部屋の掃除なんて初めて…疲れたー!」

「お二人ともお疲れ様です」

「古賀もお疲れ様な。これで明日からゲームが出来る!」

「せっかくのGWなのにゲーム三昧なのね」

「当たり前だろ。それ以外にすることないし」


高校生なら勉強しろというのは雅人には通じない。

やりたいことのために勉強するのは進んでやるがそうで無ければ勉強など雅人はしないだろう。


「ね、アタシもゲームしてもいいわよね?」

「えー…」

「アタシも手伝ったんだからそれくらいの権利はあると思うの」

「ここ、俺の部屋。俺が家賃払ってるの、わかる?」

「アタシ、ここの部屋手伝った、わかる?」


確かに、梓が手伝ったおかげで1時間とかからずに終わることが出来たんだ。

もし葵と2人だけだったら今も片付けの最中だろう。


「赤嶺くん、先輩も手伝ったんですからいいじゃないですか」

「俺に負けてキレてコントローラ投げそう」

「そんなお猿さんみたいなことしないわよ!やるとしたら貴方でしょう!」

「俺、一回も負けないから」

「澄ました顔しちゃって…ゲーム廃人め…」


なんと言われようと雅人には自信があった。

喧嘩以外の時はゲームしていたと言っても過言ではなかった。

この3人の中でなら雅人が1番ゲームしている時間は長いだろう。


故に雅人は見誤っていた。

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