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第13話 副会長×挨拶

「重い物は俺が持つからこっちにくれ」

「あ、はい。ありがとうございます」


スーパーから買い物袋を提げて帰ると雅人達の部屋の前に不審者がいた。

ドアの前をウロウロとしていてなにかブツブツとつぶやいている。


「いないのかな...この時間ならいると思ったのに...もしかしてサラリーマンで終電近いとか?うーん...それとも居留守?どっちなのよ...」

「おい。お前、なにしてんだ」

「え、あ、えっと。先日隣に越して来た。水谷です...あ」

「あ」

「あああー!あんた!赤嶺雅人!なんであんたがここに!」

「俺もここに住んでるからだ。荷物置きたいからそこどけ」

「水谷先輩?」


先日雅人の隣に越してきたのは生徒会副会長の水谷梓だった。


「葵ちゃんまで!?まさかあんた、葵ちゃんを奴隷にしてあんなことやこんなことを....変態!」

「うるせぇぞ思春期生徒会。古賀が奴隷なら俺は手ぶらで帰ってくるだろうが馬鹿」

「あー!先輩に向かって馬鹿って言った!アタシ先輩なのよ?もう少し敬ってもいいんじゃないかしら?」

「敬えるようなことしたらどうだ?」

「これだからゆとりは!」

「ゆとり時代はもう過ぎただろ」


梓と言い合いするなか雅人達は葵の家に荷物を運んでいた。


「やっぱ綺麗にしてんのな」

「はい。汚れてると落ち着かないので」

「ふーん」

「赤嶺くんの家はどうですか?」

「ごみ屋敷」

「....それは比喩ですか?」

「いんや、現実」


雅人はにこやかに答えた。

生ごみなど異臭を発するものは片付けているため最悪の事態ではないものの散らかっているのは確か。

服とか下着とかが散らかりまくった結果、結構な惨状になっている。


「大丈夫だ。そのうち片付けるから...」

「ゴールデンウイークの初日に片付けましょうね」

「面倒な...」

「そう思うなら最初っから片付けておいてください」


葵に説教されてしまった。だが葵がここまで言うのは初めてのことである。

いつも遠回しカーブで注意するのに今回ばかりは直球ストレートできた。

それはそうと。


「外の奴どうしようか。適当に帰すか」

「どうしましょうか....赤嶺くんに任せます」


玄関に向かいドアを開けると腕組をし不機嫌そうに待つ梓の姿があった。


「遅い!中でなにしてたのよ!」

「なにもしてねぇよ。時間が時間なんだから騒ぐな」

「夜中にバイク乗り回して騒音立ててる人達に言われたくない」

「アレとは派閥が違うから注意するならあっちにしてくれ」


不良だからと言って一括りに出来るものではない。

雅人のように喧嘩する不良もいれば、仁のように喧嘩はしないが問題児の不良もいれば、喧嘩はしないがバイクを乗り回し騒音をたてる不良もいれば、顔が怖いからと言って不良認定される毒島もいる。

不良も一枚岩ではないのだ。


「で、まだなにか?」

「挨拶したかっただけだからもう用はないわ。あーあ、独身サラリーマンと出会って恋をする予定が隣に住むのが礼儀を知らない不良だなんてショックを隠しきれないわ...」

「ホント隠しきれてねぇな。本人の前で言うなや」


ぐぅぅぅぅぅ。


「お腹減ってるならさっさとご飯にすれば?」


ぐきゅぅぅぅぅぅ。


「ほら、さっさと行きなさいって。私はコンビニのお弁当でも...食べるから...ぐす...」

「悲しくならないのか?」

「悲しいわよ!だから泣いてるでしょ!」


雅人は心底面倒そうな顔をした。


「あの...よろしかったら一緒に食べませんか?お姉ちゃんは今日帰ってこないそうなので」

「ああ、総会があるから今週一週間は帰ってこないって俺にも連絡があった」

「いいの?アタシお邪魔じゃない?」

「すっげぇ邪魔」

「ホントにあんたって子は...可愛くないわね...」


料理番の葵が言い出したことなので雅人は止めることが出来ない。

渋々だが入れることにした。茜と葵の部屋に。


「やっぱ女性の部屋って感じ。男感が感じられないいい部屋ね」

「ありがとうございます。お姉ちゃんがよく人から貰ってくるのでそれでこうなりました」

「アタシの部屋はまだ殺風景よ。ようやくベットと机が出し終わったとこ。料理が出来るようになるにはまだまだ先ね」

「え、料理出来んの?」

「は、舐めないことね。これでも選択授業で調理取ってるんだから」

「だからと言って上手いとは限らないだろ。ダークマター生み出すなよ」

「葵ちゃん?包丁貸してもらえる?」


笑顔で近づく梓に恐怖しながらも必死に首を振る葵。


「大丈夫よ。ただこいつをグサッと刺すだけだから。死体の処理も心配しないで。葵ちゃんには心配かけないから」

「人殺し、いくない」

「人を病院送りにした男に言われても説得力ないわ」

「殺してないからセーフだ」

「はん!その内やるから!絶対に!」


「したらお姉ちゃんにチクっちゃいますからね?」


それは雅人からすれば地獄に落とされるより辛いことだった。

茜による説教は言葉で追い詰めるなんてまだまだ手ぬるい。

正座させられ無言で威圧を受けるんだ。その威圧に重力が伴うのだから地獄と言って差し支えないだろう。


「はい。出来上がりましたよ」

「それじゃあ…いただきます!」

「いただきます」


3人でテーブルを囲み葵が作った夕飯を食べる。

状況だけ見れば兄妹にも見えなくもないが上の兄妹仲が悪すぎるという普通にありそうな状況で否定できない。


「葵ちゃんと雅人って身長いくつあんの?」

「俺は180だった」

「私は154でした」

「高いわね…顔が犯罪者じゃなきゃ狙ってたのに…あと一般教養」

「んだとブスが。冗談はその真っ平らな胸だけにしとけ」

「はープッチンいったわ。手遅れ不良の分際で」

「あ?」「は?」


「人の家で喧嘩しないでください」


この2人の仲裁に入るのはだいぶ躊躇われる。

方や不良、方や生徒副会長。

どっちの味方をしてもバットエンド。まさに地獄絵図というわけだ。

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