第11話 犬猿の仲×挨拶
生徒会室から解放された雅人のスマホに連絡が入った。
『今日一緒に帰れますか?』
葵からだ。
雅人は帰れると無機質な返答をし校門前で待ち合わせをして一緒に帰ることにした。
教室からバックを回収し校門に向かうと校門に黒髪と金髪があった。
「わ、私待ち合わせしてるので…」
「ならその友達と一緒に…」
「おい。古賀が嫌がってるだろ。どけ」
「誰かと思えば…こうして話すのははじめましてか?」
「どうでもいい。俺は早く帰りたい。帰らせろ」
「一緒のクラスになったのもなにかの縁だ。仲良く帰らないか?」
「断る。お前とは反りが合わなさそうだからな」
ほどほど辛辣な雅人の言葉に慧輝は眉1つ寄せずに笑った。
「よかった。おれと同じ認識だ」
場にピリピリした空気が流れた。
もし先の生徒会の件が無ければ1発殴っていたところだろう。
だが生徒会室から2人の姿を確認した雅人は葵の手を引きその場を後にした。
「それじゃあ、古賀さん。また明日」
自転車置き場に寄り自転車を回収した雅人は無言のまま葵に後ろに座るように目線で促した。
「あの…赤嶺くん?…怒ってますか?」
「古賀には怒ってない」
「安田くんは少し強引なところがありますが…いい人です…」
「俺はアイツが嫌いだ」
「反りが合わない…ですか?」
「そうだ。ああいうかっこつけて猫被ってる奴とは仲良くできない」
「猫…被ってる?」
特殊な人達と接してきた雅人だから分かること。
大抵雅人に近ずくのは茜に媚びを売るために近づいてきた奴ばかりだった。
それが分かっているからこそ相手にしなかったし媚びを売らせなかった。
雅人は慧輝はそういう奴の類だという。
「ここ最近一緒にいて気がつかないか」
「気がつきませんでした…」
「アイツ…相当ヤベェぞ。下手したら俺より面倒だ」
「なにがいけないんですか?」
「さあな。そこから先は心理学者の領域だ。俺には分からん。もしかしたらただのいい奴かもしれない」
話しているうちにアパート前までついた。
「あ、お隣さん入ったんですね」
「ほんとだ」
雅人達が住むアパートは全8部屋の普通のアパート。
ただ出来立てということでそこまでまだ有名じゃない。
今現在も8部屋中2部屋空いていたのだ。
そのうちの一部屋に住人が来たようだ。
「挨拶行かなきゃですね」
「…挨拶…」
葵の想像する挨拶とは、ただただ自己紹介をして手土産なんかを持っていくことである。
雅人の想像する挨拶とは、お互いが気を失うまでの殴り合いである。
「手土産はなにがいいですかね」
「ストレートでいいんじゃないか?」
「単純でいいと?」
「もしくはフック」
「収納はあまり手土産には向かないような…」
「あ?」
「え?」
話しが噛み合ってそうで噛み合ってない2人。
「来週からゴールデンウィークですね」
「暇になるな…ゲームでもして潰すか」
「でしたら、私と一緒にゲームしませんか?」
「マジで。対戦なら飽きないかもしれない」
「決まりですね。では、また明日朝」
「おう」
☆
「ねぇ…まだ狙ってるの?」
「あ?ああ、まあな」
「いいじゃんあんな地味子。ヤるだけ無駄だって」
「性格は地味でも体は派手なんだよ」
「変態…」
「そんな男が好きなんだろ」
「あん…んちゅ…もっと…」
☆
「監視ってそういうこと?」
「そうよ。アタシ直々にお昼を一緒に食べてあげるの」
「友達いないから逃げてきただけだろ」
「はぁ!そんなわけないし!仮にそうだとしても雅人のところはないわ!」
「うるさいな…静かに食えよ」
1年1組の教室の一角が賑わっていた。
「先輩、コイツに常識を説くだけ無駄です。猿なので」
「あ?もっぺん言ってみろ猫が」
「猫はいいじゃん。可愛いし優雅だし自由だし」
「飯食って寝て糞するだけのサイクルのなにが優雅なんだか」
「赤嶺…食事中だぞ」
「そうです。く、く…」
「葵は無理しなくていいから」
「生徒会の監視がつくってあんたなにしたのよ」
「先輩をぶん殴った」
「赤嶺くん...?殴ったの?」
ハイライトが消えた目で雅人を見る葵は少し怖い。
「勿論、喧嘩を売られたからだ。その辺歩いてる先輩をなぐっ殴ったりしない」
「でも殴ったんですね...」
「殴った」
「殴らずに解決はできませんか?」
「難しいだろうな。相手がその気で来てるわけだし」
「雅人、足速いんだから逃げればいいじゃない」
「足速くても陸上部には敵わない。それに逃げるより戦った方が早期解決が出来る」
高校でイキってる生徒も雅人みたいに元々不良だった生徒も共通して言えるのは、『強い奴には喧嘩は売らない』ということだ。それがイキっている生徒ならなおさら。
その場合、逃げるより戦った方が後々突っかからなくなるからよかったりする。
勿論、これは人によるし全ての生徒が当てはまるわけはない。雅人みたいに強くても逆らって徹底的に反抗しようとしする不良もいる。
「だからって殴らなくても...誰かに助けを求めるとか」
「求めたとしてなにが出来る。茜さんみたいに威圧出来ればいいが俺にはまだ覇王色は使えない」
「人の姉を怪物みたいに...」
「実際あの人は化け物。担任に聞けば分かるさ」
「なにが分かるってー?」
昼食を食べている雅人達に牧野雲雀はニッコリと笑顔を向けた。
雅人以外の全員が身を震わせた。
「蛇なら分かるだろ?茜さんの凄さ」
「まあ、お前が唯一敬語を使う相手だからな。それほど凄いってことだろ。わたしも友人だから知っている。あと蛇って呼ぶな」
「初日も言ってたが蛇ってなんだ?」
「豹堂?知らぬが仏って知ってるかー?」
「蛇ってのは異名みたいなもんで、知らぬ間に近づき知らぬ間に殺されるところから来てるらしい。俺も茜さんから教えて貰った程度だからその辺に知識しかない」
「ってことは先生は....人殺し...」
「殺人者が教師になれるわけないだろうが。殺すまで行かなくとも卒倒させることは出来る。なんなら豹堂、やってみるか?」
「遠慮しときまーす!」
中学時代騒いできた仁でも高校で死ぬのは騒ぎ足りないのだろう。雲雀の問いに全力で首を振った。
「で、監視はいつまで続くんですか?」
「そうね...雅人が大人しくアタシの犬になるまでかな」
「一生とか暇かよ」
「あら、そんなにアタシの犬が嫌?従順なペットにはちゃんとご褒美上げるわよ?」
「そもそもペット扱いが嫌だから嬉しくない」
残念なことに雅人は不良ポケ〇ンの悪タイプなためエスパータイプの攻撃は効果がない。
例え、悪タイプでなくとも梓のアブノーマルな性癖には付き合えないだろう。




