-希白-
この作品は自己満足の塊です。
一応「ヤンデレサイコスプラッタガールズラブです」
ちょっとだけアヤしい雰囲気なシーンもあります。
バットでその頭を打ち潰す。
叩くかのように何度も何度も。
母の叫ぶ声が奥から聴こえる、ノブを無理繰り動かそうと金属の悲鳴が響く。
尋常ではないこの部屋に、再び声が通る。
「やめて…痛い…ごめんなさい…ごめんなさい…!」
力無く泣く 可憐な少女に三度、ひしゃげたバットを打ち付けた。
髪が抜け 血が滲み出し、肉が擦り切れて…。
そして、2人が何度も過ごした記憶が蘇る。
ガンガンと殴られるかの様な痛みが頭を覆う、無理矢理肉を詰め込まれたような 脳に圧迫を感じる。
もう、既に事切れる寸前の少女が、喉から音を吐き出した。
「あ…が…」
首は床に凭れ 血に染まる白髪がヤケに美しくなる。
そうして僕はまた、彼女の前に現れるのだろう_。
-その後-
「おはよ、神無!」
新学期、新しい高校にも慣れ親しんで早1年、友達も既に数多くできた。
そんな私に対して裏腹、散髪もロクにしていないのであろう長く黒い前髪を当然のように受け入れ、教室で一人携帯を弄り倒している彼は織都神無。
彼は友達が居ないという事で学年全体でも有名だったが、私だけは例外だ。
「…おはよう、義須さん」
「もー…だ・か・ら・出 梅 二で良いって言ってるじゃん!」
私、義須出梅二は、彼にとって唯一の女友達であり、私の理解者であり…私は彼の友達要素を独り占め出来ているのだ。
「えー、でめにって言いにくくない?」
「なにそれぇー」
毎日他愛も無い会話をする、この時間が 友達たちとカラオケに行くとか、男友達と一夜を過ごすよりずっと大好きで笑いが絶えない。
「今年から別のクラスになっちゃったなぁ〜」
「義須さん 僕と別のクラスになるって聞いて電話で泣いてたもんね」
悪戯心擽られたのか 彼は含み笑いをした。
「なっ 泣いてなかったよあの時はっ」
「あの時は?」
「もー!恥ずかしいからやめてよー!汗」
チャイムが鳴り響いて私は、神無と離れ離れになる。
教室に駆けていく私を見送る神無。
いつからか彼に恋心を抱いてしまっていた、していた…。
夏祭り。
浴衣姿で神無を迎えに行く。
今夜は屋台も多く 例年よりも賑わう華やかな夏祭り。
紫陽花柄の浴衣を自分で着付けし、着こなした。
わいわいとした街の人々とは違う足並みで、神無の家へ向かう。
今夜は夜空が美しく、夏祭りに向かうカップルが多くチラつく。
(私にも恋人が居たら…)と無駄な考えを振り払って足を速めた。
インターホンが鳴ると、神無のお母さんが扉を開け 出迎えてくれた。
「出梅二ちゃん いらっしゃい…神無は上よ」
やや身だしなみのなっていない、いつもの神無のお母さんが出てきてほっとする。
軽い挨拶と会釈を済ませ2階に上がる。
階段に足をかけた時、神無も慌てて降りてきていたのか、危うくぶつかりそうになったが 間一髪で神無が後ろに身を引いた。
「おっと…ごめん 貯金箱壊しててさあ」
と言って見せると、見る限り30万はありそうな札の数が…。
「ちょっ…な なんかしたの…?汗」と戸惑ってしまったが。
「いやいや…夏の間にバイト頑張ったり 家事したりとちまちま金貯めてただけだよ この日のためにさ」
つい口の端が緩んでしまう様な神無の笑顔に、動悸が速まる。
「そっか!それじゃあ準備が終わったら行こ?」
それからしてすぐに夏祭りに向かった。
熱気のある人混みを抜けて 蚊の集るような涼し気な木々の合間の大岩に腰をかける。
「ふは〜 神無ってば射的で色々取りすぎ!」
「ごめんって つい可愛いのがあってさ」
「…それYou!ブランド製品か」
「そうそう これ高いんだよ 万単位するんだよ」
「マジで〜?」
私が笑っていると、突然神無がすぐ側に近寄ってくる。
「えっ」
願ったり叶ったりな展開に、微睡みかと疑ってしまうような感覚に陥ってしまった。
しかし神無がこちらの手に、手を重ねる感覚は本物で間違いなかった。
「浴衣姿綺麗だよね」
木々の影に隠れて、神無の表情は見えない。
「ゆっ、浴衣?この浴衣!お母さんのおさがりだから…そりゃこの浴衣 綺麗だよ?」
動揺が隠せていないのは 此方も分かっていた。
「んや…浴衣もかわいいんだけど、それを着た義須が綺麗って言いたかったんだ」
その後は手を繋いで 2人揃ってりんご飴を食べた。
いつもと違った空気が流れていたのはわかっていた、けれど それがまた幸せな事も分かっている。
やっと叶った、彼女との甘い時間。
ずっと続けばと願った、強く、強く…。
秋の変わり目、不安定な時期。
チャットツール「world」で神無と話していた。
ortho「ねえ義須さん」
梅二「なにー?」
ortho「ちょっと問題が出て しばらく学校に行けない」
梅二「え?」
ortho「それとworldもしばらく使えない」
梅二「ちょ」
ortho「またね」
orthoが退出しました_。
「…え?」
神無が学校に行けなくなる?worldも?
その晩はまだ何も考えないようにしていたが、眠りにつく頃には朝日が差し込んでいた。
朦朧とする脳、霞む通学路、夢と現に立つ心地の中、昨晩の出来事をふと思い返していた。
何があったのだろうか、突然の事に考えることが出来なかったが、よくよく考えれば学校に行けないほどの問題である。
「…まずいよねぇ」そう1つ呟く
スマートポンを両手に歩いていた。
神無の言った通りに、席は一つ空白となった。
授業内容は覚えていない、気がつけばお昼ご飯も食べずに夕日が下り始め、私は帰路を沿っていたはずだ。
帰路…だがこれは神無の帰路だ。
インターホンを鳴らしても、誰も反応しない。
物音一つ鳴らない。
不審に思って、何も植えられていない植木鉢が転がるベランダへ回り込む。
僅かに開いているカーテンの隙間、室内の証明は付いておらず無音。
しかし…、もし もしも神無自身に何かがあったとしたら、私に何も言わずこうも臭わせたまま失せるのだろうか?。
私は、彼にとっての唯一の友達として不服でもあり、不信感を抱いて、神無が何がしたいのかが知りたくて。
「もう…もう1回だけインターホン押してみよう」
もう1度玄関にもどりインターホンを押す。
「すみませーん!義須です 居ませんかー?」
声を張りあげて言う、しかし無音。
ふとノブに手をかけ、開けようと扉を押す。
開くはずのない扉が軽く開き、息という物を確かに飲み込む。
中には無造作に積まれたダンボール、夜逃げかと疑うぐらい中身は小綺麗に。
ただ、それならなんでまだ荷物があるのか、虫の鳴く音が耳に障って、神無の居る部屋へ足をそっと、そぉっと、フローリングの軋む感覚が静かな空間にずっとずっと。
足元に何があるか分からないのでスマートポンの光を灯して先を見て、先を急ぐ。
神無が居るはずの部屋の扉を、開ける。
「来たね、出梅二さん」
眉を顰め、優しい顔で、口角をこれでもかと釣り上げて、神無が片手にバットを握り締めて棒立ちしていた。
「神無!なんであんな連絡入れるの!バカンナ!」
だなんて、変に空気を戻そうとふざけた事を言ったけれど、神無は…神無は。
「なんで来たの、出梅二さん?」
「そんなの…神無!アンタが心配だからに決まってるじゃん!あんな連絡!ほんとに心配で心配で」
「ならなんですぐ来てくれなかったの」
え。
と、確かに空気が落ちる感覚、重い石が、床に落ちて、驚く感覚で。
直感的に「ヤバい」って気づく、衝撃。
「なんで来てくれなかったの」
「なんで気づいてくれなかったの?そんなに僕に依存してるくせに、都合が良くなかったらすぐに来てくれないの」
急激に変わってく態度と神無の豹変した顔つき、何が何だか分からないってなって、泣きそうになっちゃって、言葉を必死に出そうとしても、間に合わなくて次々と責め立てられる。
「友達なんでしょ?出梅二さんは僕のこと、ずっと見てくれてたんでしょ?なんで僕がこんなに、君を追い詰めるか分からないでしょ?僕も責めたくないよ、でもね」
「でも、こうするしか無いじゃん」
神無がその場で身体を少しばかり揺らして…その背にあった物が。
「お母さっ…」神無のお母さんが、殴られたみたいな痕だらけで、目が虚ろで。
声が出そうで出ない、意識も何も無くなる程の「死」の感覚。
神無の事なんか忘れてしまって、神無のことちゃんと考えれなくなって、床に後ろから倒れて扉の方へと身を逃がしてしまう。
「理由が分かったら、どうせ出梅二は逃げちゃうんだよね、そうだよね?今だって、嫌で逃げてるんでしょ?分かってるんだよ」
嫌なんかじゃなかった、だって私の動機は 汗の理由は。
「怖いよねぇ、助かりたいよね、母さんみたいになりたくないよね、出梅二さん 逃げたもんね」
カツン、とフローリングにバットの先が当たって私の眼前にその先が流れてくる。
寸前で止まる。
擦り切れた黒い血が先端を彩る、銀色で 凹んだ先端。
死ぬ、殺される。
震える手でドアノブをガタガタ ガチャガチャと必死で開けそのまま廊下へ無様になだれ込む。
その直後に足元に打ち付けられた金属の音、神無の静止の声。
理解するが前に本能が逃亡を図る。
リビング?玄関?玄関だ、玄関に。
覚束無いつま先では階段なんて冷静に降りれないだろう。
僕はこう言ったのだ
「階段は危ないよ」
バットで頭を殴ろうとした者とは思えない発言であるが、正気故だ。
言葉も聞かず怯えた彼女は、立てず四つん這いのまま階段を一段降りようとしたが。
「ひっ」
とひとつ、声を上げ鈍い音がドタドタ、バンッと。
身体の四肢や何かが一つ確実に折れる。
それと同時、痛みで涙や吐瀉物も吐き出される。
出梅二は、逃げられない。
その姿に赤子の暖かさ、愛らしささえ覚え歓喜が舞い込むのだ。
そう、きっと僕は、出梅二を。
「うぅ…痛い…痛いよ…」
確実にまずい頭の打ち方をした様で、身体に力が入らず、緊張のあまり嘔吐してしまう。
やばい、やばい、本当にやばい。
不思議な感覚に苛まれ、神無に助けて欲しいとさえ願う、何故だろうか?
苦しいのだろう。
虚ろにこちらを見上げ、文字通り「声も出ない」口を震わせ助けを懇願している。
「「愛おしい。」」
2人の影も重ならず、少女は何度と頭部を金属で殴打される。
手足は痺れ抵抗も虚しく 血が三度重なり場は乱れる。
ただの殺人、暴行、それなのに何故か身を許してしまったのだ。
愛おしい?
くだらない 下劣、卑しい、思考はぼやけて暗闇へと混ざる。
血液と髪が混ざり、幼気な少女は床に倒れ込む。
小休止、凄惨な悲劇の後、声を上げて泣き喚き静かな場がまた崩れた。
「ああああ!!ああ!」そうとしか嗚咽が出ない、いや もはやそれは叫びだ、完全に呼吸の途絶えた彼女の生前の姿に似ている。
神無しか、居なくなった。
バットが床に落ち、鼓膜を震わす金属音を打ち鳴らす。
所詮クズでしかない、と自己を責め立て、どうしようもないゲンジツから逃亡を図ろうとする。
何故こうなった?
何故こうした?
何故なんだ?
確かに好きで居たはずだ、そこに邪推な思想も悲嘆も 疑念も無かったはずだ。
何故こうやった?彼女に何か罪があったのか?出梅二は何故殺された!?
何故殺した?!
疑問ばかりが浮かび自己完結も出来ず、その場から逃げ出す。
逃げ出す時、疎かな足先は積まれたダンボールにぶつかり「出梅二だった」ソレに落ちていた。
確かそうだ、アレは確か。
と頭を擡げ、裸足に食い込む小石を感じながら走っていた。
最初はきっといじめだ。
彼女は僕をいじめていた、いつの頃だ?最初だ。
死ぬ前の死ぬ前の死ぬ前の話、いつの頃だ?1番初めだ。
-始まり-
彼女の自宅に誘われた、何故だったろう、理由は思い出せない。
でも彼女は僕の事を見て笑っていた、それに嫌気を覚える程眩しい。
きっと彼女は僕の事を一途に慕っていたのだろう、しかしそんな気持ちも知らずに僕は、僕は。
彼女のことが嫌いだったんだ。
2人っきりの部屋、嫌いな彼女の匂い広がる女の部屋、恥ずかしい話だが、少し緊張もしたのだ、何かが起こるって期待した。
その予想は外れなかったんだ。
「ねぇ、神無さん」
「な、なに 義須さ…ん?」
椅子は無く、小さなテーブルの傍にベッドがあったので2人でそこに座っていた。
やたらとふわふわしている、シーツの肌触りだって申し分無い、しかしその理由はまた別にある、そう思う程。
彼女の頬は紅潮している。
嫌いならばこの場をすぐ離れるべきだ、僕は自衛をしなければならないだろう?なのに何故、彼女から伸びた指に絡まるんだ?
抜け出せばいいだけだ、抵抗の意思はある、一言「嫌だ」だなんて言えばそれで済む。
「神無さん、逃げないで」
「神無さん 神無さん」
目を逸らしてしまう、それは「黙認」と同様の合図になってしまうのだ。
「神無さん…!」
想い早まるあまりに僕を押し倒した彼女は、僕の耳元に触れ うなじへと手を這わす。
なんとも言えぬ甘美たる感覚、それと同時に苛まれる罪悪 そして嫌悪の感情。
縺れあい絡みあい、何も考えられなくなる_そう、それで良かったんだ。
なのに僕は。
彼女を突き放した。
「やめてください…ッ!」と彼女の両肩を手のひらで押し込んだ。
「きゃっ」と声が上がり、その後すぐ、静かになる。
壁に彼女がもたれかかっている、何故か頭を支えているはずの首の力が抜けている。
あ
と思考が終わる、そこで完結したのだ。
彼女は死んだ。
殺した、些細な抵抗の元、死んだ。
ちょっと壁に頭が当たっただけで死んでしまった、先程まで残っていた香りも感じず 温もりも得られず、その先を迎える。
そうすればよかったんだ、何も後悔する必要は無かった、正当防衛の1つ故の命の誤差だ。
誤差で済めばよかったんだ。
なのに僕は何故か、ここに居る。
その後、また同じ時間を過ごし、彼女から離れられる方法を探した。
2回目は距離を置いた、赤の他人同様冷たくあしらったはずだ、その時に起こった出来事も悲惨だった。
彼女はまるで狂気に取り憑かれた様に僕に付き纏い、どんな罵声を浴びせようとも どんなに物理的に距離を置こうとも必ず近寄ってくる。
それは一種の「サイコ」だ、身震いする背中を彼女に抱き締められた時には、あまりの恐怖に漏らしてしまう程、異常な空気に襲われた。
そして、殺された。
僕側が、だ。
僕が殺されて、尚もやり直せる、彼女の記憶も戻らず出会った当初の朝からやり直せる。
これが運命だなんて呼ぶのなら、他人の運命なんてアリの巣よりも浅いものだろう。
こんな不幸な運命、僕は認めない。
何度と繰り返した、今回は無理に引っ越そうとしたが、母が何故か突如錯乱状態に陥り、僕に危害を加えようとしてきたので止む負えず殺した。
これで何体殺した?。
別人のような実の親を何回見た?嫌いだったはずの彼女を何回見た?
彼女を受け入れるしか、術が無いのか。
_そこまで考えたが。
裸足で走ったせいか、足の裏が痛み血が滲み、とうとう走ることも出来ずその場で蹲ってしまった。
真夜中 街灯も灯らない人気の無い住宅街。
いっそのこと、なんて思い寝そべる。
いつになったら次の朝になる?いつになったらこの日から抜け出せる?いつになれば彼女を「幸せ」に出来るんだ?
僕は、僕はこの先。
彼女に「好き」も言えないで苦しむんだ?
やがて急発進し今にも通報されそうな、危うい運転をしたトラックが目の前にやってくる。
やはりこのまま死んだって、前の朝に戻るだけだろうか、どちらにせよ、もう逃げられない。
勢いを緩めること無く突っ込んだトラックには跳ねられ、衝撃で死ぬ。
きっと即死だったのだろう、骨が折れ 脳が揺さぶられ機能が停止した。
痛みはほんの一瞬の出来事だ。
次の朝は、やってこない。
-まだ-
幼げ抜けぬ可憐な彼女、駅のホームの改札で、手と手が触れてしまう。
「…あ」と頬を赤らめ、恥じらう乙女。
白にくすんだ黒が混ざり、血の滲んだかに見える程鮮明な赤の瞳、アルビノを疑ってしまう程白く透き通る肌。
人目見て、嫌いになったはずだ。
だって彼女は…僕には不釣り合いだろう?
「すみません、先 どうぞ」
と譲る。
「ああ…えっと!はい!ありがとうございます!」
長い髪を翻し駆ける様に改札を抜けて行った。
ふふ、と口元が歪む。
僕はまた彼女と出会える。
何回も殺して 殺しあって 犯し合って それが僕の。
好きな気持ちだったんだ。
大好きだよ、出梅二、
ずっとこれからも一緒だ。
-end-
ちなみに、作中での神無は「彼」と称されてますが、実際にはちゃんとした女の子です。
でも何回か繰り返す内に、神無自身が自分の性別も分からなくなってしまった感じです(後付け)
2人とも両想いです、しあわせ!!!